《【最強の整備士】役立たずと言われたスキルメンテで俺は全てを、「魔改造」する!みんなの真の力を開放したら、世界最強パーティになっていた【書籍化決定!】》第01話 追放と勇者・王都ギルマスの悪だくみ

本作品の書籍化が決定しました!

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「フィーグ、お前の正式採用は無しにしたいと思うのだ。いいな?」

勇者パーティ試用期間の最終日。俺は突然、勇者アクファに呼び出された。

そして、彼はニヤニヤしながら俺に告げた。

「えっ!? どうしてですか!」

俺は勇者パーティのメンバーに、正式に採用されると思っていた。頑張っていれば、悪いようにはしないとも言っていた。

いきなり試用期間が終わり採用無しと言われても、準備ができていない。

萬が一に不採用となった時のために準備しようとしたのだけど、勇者アクファは必ず採用するからと、俺の手を止めたのだ。

「悪いな、俺がさっき決めた。理由は分かるな?」

「分かりません。

今までずっと、必死にパーティメンバーのスキル整備(メンテ)をしてきたじゃないですか!?

今までの言葉は、ウソだったのですか?」

正式に勇者パーティの一員となれば、王國からの支援もけられ、より多くの報酬が貰えるようになる。

そうなれば魔法學院に通う、妹の學費の支払いにも余裕ができる。

俺たち兄妹には親がいない。

だけど妹には霊召喚士の才能があるので、魔法學院に通って勉強してしい。

そのために、一生懸命頑張ってきたのに。

「お前のスキルメンテとかいう外れ(ハズレ)スキルがゴミだと分かったからだ。この、役立たずが!」

「そんなことはありません! 俺のスキルは多くの人に認められています。

勇者アクファ、あなたのスキルもいずれ暴走するでしょう。その前に整備(メンテ)を——」

「俺の勇者スキルは暴走などしないのだ」

「違います。実際、俺が來る前に一度暴走したことがあると聞いています」

ダンッ!

勇者アクファは強く機を叩いた。大きな音がして機の上のものが揺れる。

「暴走はその一回限りだ。もう暴走などしないのだ!」

スキルの暴走は適度な休息を取っていれば防げる。

しかし勇者パーティには多くの依頼があり、そのどれもが難易度が高い。

本來なら多くの休息が必要になる。

その休息期間を短するのが俺の「スキル整備士(メンテナー)」だったはずだ。

「ですから、スキルは酷使することでいずれ暴走します。

メンバーのスキルを瞬時に回復、覚醒させてきたのは俺です。

今まで役に立っていたじゃないですか!?」

「なあ、フィーグ。俺はお前の一々口答えする態度が気にくわなかったのだ!

しょせん凡人以下なのだから、勇者の俺に言われたことだけをやっておけば良かったのだ!」

「俺は……ずっとあなたの言うとおりにしていました」

勇者アクファは俺に「戦闘中は余計なことをするな、見ているだけにしろ」と俺に命じていた。

戦い方を提案をすると、勇者アクファは「お前に何が分かる?」と聞く耳も持たなかった。

チャンスすら與えて貰えなかった。

「俺の完璧な指示があったのに、お前は何一つ役立たなかったのだ!

役立たずだったから辭めさせたという理由も通る。

ハハ、本採用の前に殘念だったな!」

「ですから、俺はパーティーみんなのスキルの整備を——」

「違うだろう! お前は何もしておらず、パーティにいる聖セイラによって力も含め回復できていたのだ。

休息は元々要らなかった!」

「その認識が……間違っているのですが?」

「はは、そんなわけあるまいて。

実際俺サマの勇者スキルは、お前のスキルの世話にならなくても、暴走などしていないでは無いか!」

「いいえ……今の依頼のペースだといつかきっと暴走します」

「デタラメ言いおって。この能なしめ。どうだ、うまかったか?

俺の活躍で得た報酬で食う飯は!?」

「……あなたは、間違っている」

「俺は勇者だ。間違うわけがないのだ!

それに比べ無能のお前は……何もせずとも報酬が貰えるなど、羨ましいわ、本當に!」

勇者アクファはさらに口元を歪めて続けた。

「だいたい、スキル整備(メンテ)と言ってにベタベタりおって。

スケベ心でりたいだけだろう? お前が考えていることなんてお見通しなのだ!」

「直接れた方が短時間で済むと、何度も説明したでしょう?」

「フィーグ、お前はまだ口答えするか。ギルドの依頼でお前をれていたが、とんだ食わせモノだったのだ。これ以上話すことはない!」

結局、最後まで俺の話を聞いてもらうことはできなかった。

くそっ。これまでさんざん勇者パーティに貢獻してきたつもりなのに、その仕打ちがこれか。

「お前が勇者パーティに所屬していたという事実だけでも許しがたい!

フィーグに命じる。今すぐ、俺サマの前から消え失せろ! 追放だ!」

こうして、俺は一方的に勇者パーティを追い出されてしまったのだった。

*****

勇者アクファがフィーグを追放し、パーティを追い出してから數時間後。

軽い足取りで、王都冒険者ギルドへ向かう勇者アクファの姿があった。

「なあ、デーモ。やっとアイツを追い出したのだ」

勇者アクファに話しかけられた新任ギルドマスター、デーモは報告書の束をパラパラとめくった。

「フィーグと言ったか? 分かった、手続きは任せておけ。自主退職だと上には伝えておく」

「助かる。だが俺様の一存で追い出したことは隠しておきたい」

「ふむ。口封じでもするか?」

「そうだ、そういえば、俺が名前を貸しているパーティがいただろう?

あいつらは俺の言うことなら何でも聞くし、腐ってもSランクパーティだが……」

「そのパーティに依頼するのか?」

「うむ。フィーグを追わせ、痛めつけさせろ。何か聞かれても知らないと言わせるんだ。どうせ、アイツは前線で戦えないボンクラだ。楽勝なのだ」

「ハッハッハ、お前が言うならそうなのだろうよ」

「俺サマが追い出したときのアイツの顔、見せてやりたかったのだ」

勇者アクファは、足を組み、ドカッとギルドマスター室のソファに座る。

「だいたい、周りの者どもはフィーグのスキルが素晴らしいとか言っていたが、

そんなはずがないのだ! 俺サマの勇者スキルのがよっぽど凄いのだ!」

「ああ、あの暴走以來、相當強くなったという勇者スキルか」

「そうだ。それなのに々文句を付けやがって……。

だが、追放だと言ったときの顔を思い出すとぐふっ。笑えてくるわ」

二人はガハハハと笑い酒を酌みわした。

そして別の悪だくみを始める。

——これから先、王都冒険者ギルドをどのようにっていくか。

集まる多くの報酬を、どうやって橫領するのか。

冒険者からどうやって金を巻き上げるのか。

「そういえば、俺サマが見つけたミスリル鋼の鎧はどうなった?」

「勇者印(じるし)を付けたおかげでよく売れるわ。それに安い武は全て買い占めて、品薄になっている。

おかげで、レベルの低い冒険者は嫌でも勇者印(じるし)の鎧を買うしか無い。笑いが止まらないほど売れている」

「さすが俺様の印だなぁ。ワハハハハ。さらに転売もしようと思うのだ」

「勇者アクファ、あなたは最近人が変わったように悪知恵が働くようになったなぁ。頼もしい限りだ。ぜひ転売もやろう。じゃあ、どうやって転売を——」

の買い占め、そして転売を目論む勇者に、王都冒険者ギルドマスターという立場を利用して、甘いを吸おうとする男。

二人はまだ気付いていない。

割と早い時期に、そのもくろみが崩れ去ることを。

今ある地位を、失っていくことを。

いや、地位どころか——。

新連載です。

お読みいただき、本當にありがとうございます。

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