イアーグの街にある武防屋の一つ。レベッカの裝備屋。

俺はここに、かわいい服を著たリリアと一緒にやってきた。

「ここですか？」

「うん。よいしょっと——」

「ごめんなさい……剣と鎧を持って貰って」

俺はリリアがに付けていた剣と鎧を袋にれて擔いでいた。

リリアは自分が持つと言ったのだけど、今著ている可らしい服に合わないので俺が持つことにしたのだ。

っていうか重いなこれ。

リリアは軽々とに付けていたし、剣を振り回していたのに。

さすが人間の上位種エルフってじ？

裝備屋に著いてり口からろうとしたとき、店から出てきた人と肩がぶつかる。

俺は袋を抱えたまま倒れそうになった。

「あっ……申し訳ありません。私のせいで——大丈夫ですか？」

「あ、はい」

「では、失禮します」

ちょこんと挨拶をして去って行く。

俺と違い、まったくじない——の変化に乏しいに見えた。

一瞬れたことで、俺のスキルが反応し勝手に診斷を始めている。

《名前：エリシス・ブラント

職種スキル：

神：傷回復(キュア) LV89

神：防衛聖域(ドーム) LV81

神：不死者退転(ターンアンデッド)　LV34

神：毆打 LV 51

神：祝福(ブレス) LV 71》

神は聖の下級職と言われている。

勇者パーティには聖職がいた。

世界で數人という大変珍しい存在だ。

でも、レベルはこのエリシスって子の方が高い。

聖は誰でもなれるわけではなく一定の資質が必要。

神職もそうだが、神に祈りを捧げる関係上、信仰心が重要らしい。

立ち去っていくを俺とリリアが見つめる。

の所作はとても綺麗で、元は貴族なのかもしれない。

清楚で可憐。

神著をまとう姿はそんな言葉がぴったりだ。

——ただ、一箇所を除いて。

「フィーグさん、先ほどの、変わった武を持っていましたね？」

「うん……あれは木製の棒に釘を打ち付け、攻撃力を増した『釘バット』だ」

正式には、釘棒(スパイクメイス)と言った方が通じる場合もあるが、どちらかというと、あれは釘バットと言った方がしっくりくる。

「釘バット？」

「うん。釘バット」

アレで毆られたら痛そうだな。

神はが出るという理由で刃を武に使わないと聞いている。

この前戦ったスキンヘッド神も戦(メイス)という金屬製の棒を使っていた。

そこにきて、釘バットである。

木製の棒にたくさんの釘が打ち付けてある武だ。棒と言えば棒なんだけど、あんなもの振り回したらヒャッハーッ！！！　と自然にんでしまいそうだ。

あんな武で毆られたら、大量にが出るんじゃないか？

それって神職や聖が使う武なのだろうか？

「フレッドさんが言っていた件ですが……さっきの人どうですか？」

リリアが、さらっと言う。

確かにフレッドさんは冒険者パーティなら、回復役が必要だと言っていた。

勇者パーティにも聖がいたわけで、回復役がいれば心強い。

心強いけどさあ……。

「う……そうだな……。追いかけるにしてももう姿が見えないから、また會ったら聲をかけてみようか」

「はい！」

あんな武を使っている理由が知りたい。

だから木製武を好むとしても、あれほど殺意に溢れ、威嚇するような武じゃなくていいはずだ。

戦闘になるといきなりヒャッハーとか言ったりしないよな？

きっと、あの人は、おしとやかで、可憐な神だ。それはないだろう。

彼とはまたすぐにでも出會うような気がした。

☆☆☆☆☆☆

「こんにちは。久しぶり、レベッカ」

「わあ……フィーグっ。ほんと久しぶりね！」

訪れた武屋で店番をしていたの子が俺に抱きついてくる。

彼は馴染みのレベッカだ。

會うたびに、こうやって抱きついてくるのは昔と変わらない。

「お、おう、依頼をけたんだけど、どうかしたのか？」

レベッカは武・防職人のおじいさんのこととで悩んでいるという。

また、武防の転売——勇者印の武や防についても知っているという。

リリアが裝備していたものがどんなものなのか、ハッキリさせよう。

それに、強力な裝備も揃えたいところだ。