《【最強の整備士】役立たずと言われたスキルメンテで俺は全てを、「魔改造」する!みんなの真の力を開放したら、世界最強パーティになっていた【書籍化決定!】》第48話 侵(1)——side待ちぼうけ組

フィーグとエリシスが夜會に參加している館の近くにある、とある高級宿屋。

その一室で、リリア、アヤメ、キラナはじっとフィーグの帰りを待っていた。

「ねえ、リリアぁ、パパはいつ帰ってくるの?」

キラナは目をらんらんとさせてリリアに聞く。

普段ならキラナは眠くなっているだろうに、今は元気だ。

晝は王都でいろんな買いものをしてはしゃいでいたのだが、そのテンションは維持されている。

まだまだ夜會は始まったばかりだろう。

窓の外に見える館かられるに変化はない。

そのを見てリリアは答える。

「あと一時間くらい?」

「えー。待てないよぅ。せっかく、せーっかく飛んで會いに來たのに」

フィーグとずっと一緒にいられると思っていたのだろう。

わがままを言い出すキラナ。

ここで、年長のリリアがびしっと言うべきなのだろう。

しかし、リリアもフィーグと會いたい気持ちがあった。

ふう、と溜息をついて答えるリリア。

「フィーグさんは待っていてと言っていたし……私も我慢してるんだからキラナちゃんも我慢してね」

「あそこにいるの?」

リリアの言葉を意に介さないような様子で、キラナは指を指した。

その小さな指の先にある建は、影だけを見ても豪華絢爛な作りだと容易に分かる。

「うん」

「じゃあ、飛んで行ったら會えるかな?」

「うーん、そうかも? キラナならあの塀も簡単に越えられそうだし」

その二人の頭に、らかい手のひらがれる。

「コラ。お兄ちゃんの言いつけを守らないといけないの!」

アヤメは腰に手を當てて言った。

「「ええー」」

キラナとリリアは口を尖らせて言う。

子供だ……アヤメは心思うけど口に出さない。

「リリアの方がすごーく歳上のハズなの……なのに、なぜあたしがお母さんみたいなことしてんの……」

といいつつも、アヤメもあの館に行って、兄であるフィーグの様子を見たくてたまらなかった。

適當な霊を召喚して塀を跳び越えるか、門番の兵士を気絶させるか、眠らせれば……。

騒な妄想にふけるアヤメ。

「アヤメさんはなんで、制服を著ているんですか?

今日、晝に服をたくさん買ったのに」

「えっとね、それは……制服の著用が義務付けられているからよ!」

「そうなんですね」

噓である。

アヤメが魔法學院の制服をにつけているのは、いつでも駆けつけることができるからだ。

この制服は魔法により防衛のエンチャントがかけられている。

「リリアさんは、どうして皮鎧(レザーアーマー)をに付けているの?」

「こ、これは……」

「まあ……いいの」

聞くまでもない。同じことを皆が考えている。

リリアは皮鎧(レザーアーマー)にかけられているエンチャント【探索者(サーチャー)】を何かあれば使うつもりでいた。

フィーグは、広い館であろうともすぐ見つかるだろう。

三人とも、戦っていた。

フィーグの言いつけを守るVSあの館に行って、フィーグに會いに行く。

とりあえず今のところは、三人とその部の戦いは均衡を見せている。

しかし何かあれば、その均衡はあっという間に崩れるのが容易に察することができる。

「「「何か起きないかなぁ」」」

皆が一斉に溜息をつく。

「あのね……キラナは散歩に行きたいの」

一番先にに負けたのはキラナだった。

いや、最初から負けていたと言うべきか。

日が暮れて外は真っ暗になっている。

散歩などしても、あまり楽しそうではない。

そもそもここは王都郊外なので、人通りが多いわけではなく、やや騒だ。

しかし……三人の戦いの均衡を崩すのに、キラナの提案は最適なものだった。

「そ、そうですね! 散歩私も好きです」

「うん、お兄ちゃんは待っていてと言っていたから、散歩しながら待っていればいいの。行こう、散歩に!!」

「わーい!!」

どう考えてもじっとして待っていろという意味なのだが、もはや彼を止める者は誰もいない。

☆☆☆☆☆☆

リリアとアヤメは、間にキラナ挾んで手を繋ぎ、館(やかた)に向かって歩いていた。

道は暗かったものの、大した距離ではない。

フィーグが心配した「愚か者」も登場せず、三人はあっというまに館の前に著いた。

「門番がいるの」

「うん……やっぱりれないよね」

館の周囲は高い壁で囲われており、中の様子も分からない。

ときおり、り口の門に馬車が出りしているが、チェックは厳重で、完全武裝した騎士たちがチェックしていた。

「ぐるっと一周してみましょうか?」

「「うん!」」

三人はそうやって歩いていると。

壁沿いに怪しげな人が見えた。

「リリアさん、あれ……何だと思う?」

「うーん何でしょう?」

近づくと、二人いることが分かる。一人は人間、もう一人は、半明の霊のようだ。

見ると、その人間は霊を四つん這いにさせ、踏み臺にして、壁を越えようとしている。

とはいえ、全然壁の上に屆いていない。

人間は、アヤメと同じくらいの年齢ので、霊の方は周囲に風を纏っている。

「召喚主殿。さ、さすがに無理では?」

「いいから、そのまま、じっとしていなさい」

「はぁ……」

霊は溜息をついている。の姿をしているそれは、召喚主殿の努力が無駄であることに気付いていた。

なにやらコソコソと話をしていて、アヤメたちに気付いていない。

どうやら、その者たちも、壁を越え館を目指しているようだ。

その姿を近くで見て、はっとアヤメは息を飲んだ。

「あの霊……あれはもしかして?」

「アヤメさん、知り合いですか?」

「たぶん。風屬の大霊を連れているの子なんて、そうそういないの」

次話は6/7に投稿します。

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