《【最強の整備士】役立たずと言われたスキルメンテで俺は全てを、「魔改造」する!みんなの真の力を開放したら、世界最強パーティになっていた【書籍化決定!】》第50話 侵(3)——side待ちぼうけ組

「ああん? 何だぁ?」

チンピラの男は、アヤメたちのやり取りにイラついたようで聲が大きくなる。

大きな息を吸ったキラナは、大きな聲でぶ。

「ばかあああああああああ!」

同時に、その口元から真っ赤な燃えさかる炎が吐き出された。

「げっ!」

チンピラが驚くがもう遅い。吐き出された炎は巖のような大きな塊となり、まっすぐ二人に向かっていく。

「うわあああああああ!!!!!」

しかし炎は二人のチンピラをかすめ、館の壁の上端にれたあと上に、空に向かって方向を変えた。

ぼーっとしていた風の大霊が、ティアの指示をけてスキルを起する。

「【風の壁(ウインドウォール)】!!」

それとほぼ同時に、アヤメがとっさに後ろからキラナを抱き締め、空に向けて炎の方向を変えたのだ。

二人が機転を利かせて竜の息(ドラゴンブレス)を曲げなければ、瞬時にチンピラ二人が蒸発。

その上、壁を直撃し破壊。館の方にも屆き被害を拡大させたかもしれない。

アヤメに抱えられたキラナが吐いた炎は天に向かってびて巨大な火柱となった。

ゴオオオオオオオ!

凄まじい音と熱風が全員を襲う。

炎の柱はどんどん長くなり、その勢いは雲を突き抜けて天を焦がした。

「や、やっぱり炎の息(ファイヤブレス)LV90は凄いの……さすが竜の息(ドラゴンブレス)……」

ようやく炎を吐き終わったキラナが、振り向く。

「ああ……ママ……ごめんなさい……やっちゃった」

我に戻るキラナ。涙は引いたものの、口元はわなわなと震えている。

「い、いや、あの二人は生きてるし、ちょうどいいお仕置きだったわ。でも、今度からは手加減してね」

「うん、ママ!」

ティアは口をあんぐりと開けている。

「きゅ……きゅうじゅ? 炎の息(ファイヤブレス)? アヤメ、どういうこと? その子っていったい……ん? ママって?」

「何でもないの」

説明が面倒なので、素っ気なく答えるアヤメ。

アヤメは倒れたチンピラのほうを振り返る。

「で、これでも私たちに用があるっていうの?」

アヤメは、ふう、と溜息をはいた。

二人の男は服は焼け焦げ、は真っ黒なススに覆われ、髪のはチリチリになっている。

「大きな〜炎が〜向かってきて〜」

死にかけたのがショックだったのか、何か歌のようなものがチンピラの口かられていた。

息はしているようで、一応命は無事だ。しかし、心共に深いダメージを負ったようで、當分けないだろう。

次にアヤメは館の壁に目を向ける。

キラナの炎は壁の上部をかすり、れた部分を飴のように溶かしていた。

じゅうっと煙が上っている。

「さっきの火柱で、衛兵が集まってくるかもしれませんね」

リリアが心配そうに言う。

々この景を見られると面倒だ。特に、キラナの竜の息をどう誤魔化すか、苦労しそう。アヤメはそう考えた。

「キラナのせい?」

「ううん。キラナ、大丈夫。あなたのおかげで助かったの」

そうキラナに笑いかけるアヤメ。

でも、ここには長居はしていられない。

そうアヤメは思うのだが……しかし、衛兵たちがやって來る気配はなかった。

なぜなら——。

「ギャアアアアアアアアアッ! グオオオオオオ!」

のよだつような、とてつもないび聲が、館の方から聞こえてきた。

その場にいた全員が、耳をつんざく聲に振り向く。

しかし、高い壁に阻まれ、何が起きているのか分からなかった。

ゴゴゴゴゴと地鳴りのような音もする。

それに混じり、「キャー!!」という悲鳴も聞こえてきた。

「魔のような聲がする?」

「ええ。でも……中を見ることができないので……」

ふとアヤメはキラナを見た。

どう考えても急事態だ。もし、フィーグが巻き込まれていたら?

「突するの。キラナ、竜化(ドラゴンモード)、できる?」

「うん! っとそのまえに」

キラナは素早く服をぎ、スキルを起した。

「どらごんもーど!!」

キラナのを帯び、変化していく。

からドラゴンへ……。

「ちょっ……あの子……ドラゴンなの? ううん、竜人族(ドラゴニュート)?」

アヤメは、ティアの問いに答えず、キラナの変を待つ。

キラナの手足は、先ほどまでよりもさらに大きくなっていた。

「キラナは準備OKね、じゃあ、みんな、乗って!」

「うん!」

「え、ええ……!?」

竜化したキラナの背中に、アヤメ、リリア、そしてティアと風の大霊が乗り込む。

キラナは羽ばたくと、一気に上昇した。

大きな翼をはためかせ、その巨は宙に舞い上がる。

あっというまに壁より高く跳ね上がった。アヤメは、館に視線を移した。

「な、何あれ?」

アヤメたちの目に飛び込んできてきたのは、恐ろしい景だった。

崩れた館から、著飾った者たちが逃げ出している。

その原因となるものは、まだ館の中にいる。屋を突き破り、何か黒いものが蠢いている。

とても大きく、角があり、羽と尾が生えている。

「あれは……黒竜(ブラックドラゴン)?」

フィーグに教えて貰った知識をもとに、アヤメはつぶやいた。

人が大勢いるこんなところで、もし竜の息(ドラゴンブレス)——酸の毒をまき散らしたらどんな被害が出るのか?

アヤメはゾッとした。

黒竜は髭をたくわえ、その姿はとても壯麗に見える。

「あれは……ただの黒竜じゃない。何千年も生きた黒竜よ。大きい……伝説級の古竜(エンシャントドラゴン)!」

「古竜!? そんなものがどうして王都近くにいるの?」

黒竜の大きさは小山のようなものだった。

しかもそのには、無數の傷跡が見える。

恐らく歴戦の戦士であったであろうその古竜は今、怒り狂っていた。

そしてそのからだが収まる館の周囲には、逃げう人々がいる。

そしてその人々の中に、見覚えのある姿があった。

「あの姿は……!」

思わずぶアヤメ。

そこには……フィーグの姿がある。しかし、一緒にいるはずのエリシスの姿が見えない。

「お兄ちゃん!!」

「フィーグパパだ……いじめられてるの!?」

キラナが反応し、フィーグの元に突如急降下を始めた。

次話よりフィーグ視點に戻ります。

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