《【最強の整備士】役立たずと言われたスキルメンテで俺は全てを、「魔改造」する!みんなの真の力を開放したら、世界最強パーティになっていた【書籍化決定!】》第51話 贄
「そして、本日、結婚するとの意思を王宮に伝えまして、即日認められたため、私たちは晴れて夫婦となりました」
フェルトマン伯爵は、聖デリラとの結婚を聲も高らかに宣言した。
しかし、聖デリラは聞いてないよ、とでも言うかのように疑問の聲をらす。
「えっ?」
「「「「えっ?」」」」
ざわつく會場。
しかしフェルトマン伯爵は、そんな周囲を無視して続ける。
「妻となった聖殿には今後、診療所にって貰う」
「えっ? だからさっきから何なの? そんなこと、私がいつ承知したって言うのよ?」
「お前も口答えするというのか? 従わねば後悔することになるぞ?」
先ほどから、フェルトマン伯爵の様子がおかしい。
いや、これが平常運転なのかもしれないが、高圧な格にさらに磨きがかかっている。
何か、嫌な予がする。
「私はね、聖なの。勇者パーティの仕事だってあるというのに」
「フン。お前も仕置きが必要なのか?」
「はぁ? 何言っているの? 結婚なんて取消し! 婚約破棄よ!」
「ハッ……お前も私から離れるというのか? もう我慢ならん。が、まあ先に……あのから始末するか」
フェルトマン伯爵は、懐から黒くい球を取りだした。
黒い球、あれは水晶珠か? 似たようなものは前見たことがある。リリアが、アクファ同盟に奪われ、返してしいと言われた水晶珠に形が似ている。
もっとも、リリアが持っていたものは白く仄かにっていた。それに比べると隨分禍々しい。
フェルトマン伯爵が持っている水晶珠は真っ黒だ。
「スキル【規範召喚(パラゴン)】起! 贄は、生意気な元婚約相手の神、エリシス!」
フェルトマン伯爵の口元がゆがみ、笑みがこぼれる。
ただならぬ狀況に、周囲にいた貴族は後ずさり、気の早い者は部屋の外に向かって逃げていく。
れ替わるように、館を警備していた騎士が數名ってきた。
「フェルトマン伯爵! 何をしている?」
「ふん……目障りな騎士だ。お前らもまとめて、始末してやるわ。さあ、生贄を取込み、我に従う使徒を呼び寄せろ!」
黒い水晶珠から黒い霧のようなもやがあらわれ、エリシスを包む。
「何っ? エリシス!」
俺はその黒いモヤを振り払おうとするが、あっという間にエリシスのが霧散してしまった。
たまらず、大聲でぶ。
「フェルトマン伯爵! エリシスに何をした!?」
「はっ。私に楯突く生意気なを活用してやっただけだ。すぐに我が使徒がやってくる。たかだか神だ。せいぜい、小型竜(レッサードラゴン)ぐらいしか召喚できないだろうが……」
何かを召喚するためにエリシスを生贄にしただと?
もうエリシスは……?
フェルトマン伯爵は、黒い水晶珠を地面に叩きつけた。
バリンと大きなガラスが割れるような音と共に、地面で砕け散る。そして、そこから生えるように、大きな影がびていく。
「なんだあれは?」
「まさか、伯爵が召喚したのか……?」
「逃げろっ、巻き込まれるぞ! 館が崩れる!」
そんな聲が貴族の間から聞こえる。
「ハハハハ! お前たちは、そこで見ているがいいさ。さて、あまりガッカリさせてくれるなよ? 降臨する使徒は贄(にえ)の能力に応じて強いものが現れると聞いている。ハハハハハ!」
フェルトマン伯爵は、高笑いをしている。
やがて、影が収まり、そこに現れたのは……。
「グオオオオオオオオオォォォォォン!!」
けたましい咆哮。
「なっ……なんだこりゃあああああ!」
その姿を見て、フェルトマン伯爵の顔が蒼白になった。
それはまさに、神話の時代の生。
翼を持ち、蛇のように長い首と尾を持つ巨大な生き。
「む……無理だ……こんな怪……制できるわけが……」
フェルトマン伯爵は腰を抜かしその場に倒れた。
巨はこの広い館に収まらない。
髭を蓄え、壯観な姿はしくもある。太古の昔から生きていると言われる……伝説の古竜(エンシャントドラゴン)。
「グオォォォン」
再びの雄びと共に、巨がき出し屋を突き破る。
瓦礫が降り注ぎ、天井に大が空いている。そこからは夜空が見えた。
その場にいたあらゆる者が逃げい悲鳴を上げている。
しかし……。
そいつが何者であろうと……俺は……言葉を失っていた。
エリシス。せっかく新しいパーティメンバーになってくれたというのに。
生贄ということは……その命と引き換えにした……だと?
頭の中を絶が支配しようとしたとき。
「フィーグ様! ここはどこでしょう?」
「えっ?」
エリシスとのパーティは、まだ解消されていなかった。
のんきなエリシスの聲が、俺の頭に響く。
「わぁ、フィーグ様がとても小さく見えます!」
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