私がトラヴィスを見る目が相當に怪しかったのだろう。一度目の人生の相棒・バージルが苦々しく毒づく。

「アナタ、トラヴィス様がしいから見とれているのね？」

違いますそうではないです。

子を見る目がとても厳しいバージル。隣國への留學期間を除き、彼とは一度目の人生で一緒に行した仲である。

初対面の日、スコールズ子爵家を追い出され著の著のまま神殿に現れた私の髪を無言で梳いてくれた。継母による『ひどい姉』の評判を知っていたはずなのに。

けれど、數日で私におしゃれをする気がないと悟ると『寶の持ち腐れだわ』と嘆き距離を置かれるようになった。評判に関する誤解は割と早く解けた方だったけれど、容に関しては相容れない仲だと判斷されたらしい。

巫として神殿を訪れた異母妹・クリスティーナを見ながら『子と組むならもっとキラキラしたご令嬢がよかったわ』と、つぶやいていた気がする。

……悲しくなってきたので話を戻したい。

「いいえ！　あの、トラヴィス……様は、普段からこちらにいらっしゃるのですか。なんだか、神様ぽくないので」

「今日は手伝いです。諸事により、神としての任務にはつけませんので」

本人から非常に胡散臭い笑顔と答えが返ってきた。

けれど、きれいな人が言うとなんでもそうなのか、という気分になる。現に、さっきまで私に鋭い視線を送っていた4人の神たちは彼の笑顔に見惚れている様子だ。

彼が神だったなんて知らなかった。私が知っている限り、そんな素振りは全くなかったのだ。

大神様への振る舞いを見ても『何者なの』と聞きたいけれど、それが許される空気でもない。

「トラヴィスは神の中でも特に神力が強い。そこに関しては私よりも上なのじゃ。神力を相手のの中に通して、聖なる力の種類を探ることができるんじゃよ」

「では、トラヴィス様に判定していただいた後、私がどの神と組んでどんなお仕事につくのかを決めるということですね」

「如何にも」

5回目の人生を送る私としては、意外と吞み込みが早いな、という顔をした後ろの4人に申し訳ない気持ちになる。

しは『悪なひどい姉』のイメージを忘れてくれたらいいな。まぁ無理だろうけれど。

パートナーへの特別な想いを馳せていた私に、トラヴィスが手を差し出した。

「早速、やってみましょう。手をお借りしてもよろしいですか」

「……はい」

私が右手を差し出すと、トラヴィスは私の手のひらを優しく両手で包んだ。指先が白くったかと思えば、手のひら・腕と伝って神力がり込んでいく。

がぽかぽかと溫かい。神力、ってこういうものなんだ、とする。神力は聖が使う聖屬の魔力ともまた違う。守りしものを育む神の力。

聖の場合は聖屬の魔力が空っぽになればけなくなるけれど、神の場合は違う。

聖と神を守るために、命(・)が(・)盡(・)き(・)る(・)ま(・)で(・)神力は続く。

だから使い方や加減を知らないととても怖いものになる。

「調に変化はありませんか」

「はい、何も」

予想外なことに、不快さや不思議な覚はない。大人しくされるがままになっていると、トラヴィスの表が険しくなった。なにか異常が見つかったのだろうか。

彼の額には汗が浮かんでいて、しだけ呼吸も上がっている。私が聖屬の魔力を使うときはかなり疲弊しないとここまではならない。能力鑑定をするのには相當な神力が必要なのだろう。

けれど、それだけではない気もする。何というか……そんな目で見ているつもりはないのに、すごく煽的に見えてしまって。背後に並ぶバージルもそれを察知したらしくを乗り出している。本當にやめてほしい。

もし仮に『聖』だけれど4つの能力のどれも持たないと証明されると、困ったことになってしまう。

私がスコールズ子爵家を出るためには、神殿の配下にある機関に配屬して聖としての仕事を得る必要があるからだ。実際には聖としての力を使えるのにそれができないなら、いろいろな弊害も生まれる。

そんなことを考えているうちにトラヴィスは私の手をゆっくりと放した。

「彼は、先見・戦い・癒し・穣……すべてへの適を持っているようですね」

予想……というか事実通り、聖4種類、無事コンプリートだった。