張のあまり顔も上げられないふたりがにつける寶石を、王妃はソフィアと楽しそうに選んでくれた。

マリーエには、大振りの寶石があしらわれた豪華なものを。

アメリアには、繊細なしい細工のものに決めたようだ。

さらにたっぷりと時間をかけてドレスに似合う髪型を決め、しお話をしましょうと、そのままお茶會に招かれる。

サルジュとの出會いやアメリア自のこと。普段の様子や研究の進展など事細かに尋ねられ、言葉を選びながら必死に答えていく。

質問攻めにあったのはマリーエも同じで、満足した王妃が帰ったあとは、ふたりとも極度の張から解放されて、しばらくけずにいたほどだ。

「私も最初は張したわ。懐かしい」

ソフィアは過去を懐かしんで微笑んでいた。

「アメリアさん、あなたが一緒にいてくれてよかった」

マリーエは、心からそう思っているようで、何度もそう言ってくれた。

最初は無理をしないでと気遣ってくれていた彼も、最近は自分からアメリアも一緒に、と言い出すようになっている。

王妃もソフィアも、マリーエだってアメリアが、婚約披パーティの日だけだと知っているはずなのに、本の婚約者のように扱われて戸っている。

どうせ逃げられないのなら早めに捕まった方がいいのではと、マリーエが思っていたことなど、まったく知らずにいた。

マリーエがユリウスに挨拶をしてから退出すると言うので、アメリアもサルジュに會ってから帰ることにした。

今日は來なくてもよいと言われていたが、王城に來ているのに彼に挨拶をしないのは失禮だと思ったからだ。

それに思いがけない王妃との遭遇にし疲れていた。サルジュに會えば、しは気力も回復するだろう。

そう思って図書室に立ち寄ると、ふと可らしい聲がした。

「ええと、この場合は「長促進」だけで良いのでしょうか？」

聞き覚えのない聲に驚いて視線を向けると、サルジュの隣にひとりの令嬢がいた。彼は本を開き、熱心に勉強をしている。

年はアメリアよりもし下くらいか。苺のような赤い髪をした、とても可らしいだ。

サルジュは自分の研究の手を止め、彼に魔法の指導をしている。

彼の専門。土魔法だ。

あのは、土魔法の遣い手なのだろう。

自分が來なくても良いと言われた日に、彼の傍に別のがいた。

しかも、土魔法を持つ可憐なだ。

そのことに衝撃をけて、アメリアは立ち盡くす。

サルジュの隣に別のがいることを、嫌だと思ってしまった。

彼の研究を支えるのも、傍にいるのも、自分ひとりであってほしいなんて。

(どうしよう……。私にはそんな資格はないのに……)

「アメリア？」

そのまま立ち盡くしているアメリアに気が付いて、サルジュが聲を掛けてきた。

隣に座っていたも気が付いたのか、慌てて立ち上がる。

「向こうは終わったのか？　母が押し掛けただろう。すまなかった」

「い、いえ。とんでもございません……。とてもよくしていただいて」

隣のを気にしながら、何とかそう答えた。

サルジュの態度はいつもと変わらない。それどころか嬉しそうで、アメリアはどんな顔をしたらいいのかわからずに視線を落とした。

「來てくれてちょうどよかった。彼に會わせたいと思っていた」

それなのにサルジュはそう言って、隣に立つをアメリアに紹介する

「彼はミィーナ。カイドの妹だ」

「初めまして、アメリア様。兄がいつもお世話になっております」

ミィーナと紹介されたは、そう言って頭を下げる。

「え、カイド様の？」

言われてみれば彼の赤い髪は、サルジュの護衛騎士カイドとまったく同じだ。

カイドの妹ならば、むしろ世話になっているのは自分の方だと、アメリアも慌てて頭を下げる。

「私の方こそ、いつもカイド様にはご迷を……」

兄はそれが仕事ですから。そう言って笑うは、明るい笑顔がとても可らしい。

「ミィーナはエデッド伯爵家の次で、年はアメリアのひとつ下。來年になったら魔法學園に學する予定だ」

カイドがサルジュを護衛するのは學園だけで、王城で見かけることはない。それなのになぜ、彼の妹がサルジュと一緒にいたのだろう。

そんなアメリアの戸いに気付かず、彼はミィーナについて語る。

「エデッド伯爵家の領地は王都に近いが、ミィーナは自然のかな土地を好んでいて、將來はそんな場所で暮らしたいと思っている。さらに、土魔法の遣い手だ」

こんな理想的な人が、近くにいるとは思わなかったと、サルジュは言う。

(……理想の、なの？)

彼からそんな言葉を聞くなんて思わなかった。

聞きたくはなかった。

思わずを押さえて視線を逸らした。

だがサルジュの次の言葉は、思ってもみないものだった。

「君の従弟の婚約者に、どうだろうか？」

「……、……従弟？」

アメリアは、目を見開いた。

「殘念ながら水魔法の開発には、もうし時間が掛かりそうだからね。その間に君の婚約者を決められても困る。だから條件に合う令嬢を探していた」

たしかに同じ伯爵家だが、ミィーナの兄はサルジュの護衛騎士であり、中央貴族の一員だ。それなのに自然の多い地方で暮らしたいと願っていて、さらに土魔法の遣い手である。

従弟もアメリアよりもひとつ年下で、來年には魔法學園に學する。

真面目で優しい子だから、リースのようなことは絶対にしないだろう。好きな人がいるという話もなかった。

「たしかに理想的、ですね」

何とかそう答えると、ミィーナはぱっと表を明るくした。

「アメリア様にそう言っていただけて、栄です。サルジュ様にご指導いただいて、もっと土魔法が上達できるように頑張ります」

ユリウスとマリーエの婚約披パーティには、従弟も參加する予定である。サルジュは、そのときにふたりを引き合わせてみたいようだ。

相もあるだろうから、會ってみてからだと彼は言っていたが、ミィーナは乗り気のようだ。

彼はとても可らしいである。そうなったらいいなと、アメリアも考える。

顔を合わせてみて問題がなければ、今度は両家をえた話に発展していくかもしれない。

いずれ、新しい水魔法も完させる。

その魔法が広く使われるようになれば、たとえふたりの間に生まれた子どもが水魔法の遣い手でも、誰も失したりしない。

むしろ、そんなことは絶対にさせない。

「サルジュ様、々とありがとうございます」

彼は、アメリアの婚約者が決まったら困ると言ってくれた。

それだけで、充分に嬉しい。

これからも彼の役に立てるように、頑張ろうと思う。