《聖が來るから君をすることはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?【書籍化&コミカライズ決定】》第25話 実は一回このセリフ言ってみたかったの
「その……確かに黒くて、丸くて、多分ったらべとっとするじのものだったわ……」
みんなが注目する中、私は冷や汗をかきながらなんとか言葉をひねり出した。
ハロルドが、目を細めながら言う。
「……それで? 肝心の素材とか、どういう製法のものなのかとかは?」
うっ、この人、痛い所をついてくるわね。
でも隠し立てできるようなことでもない。私はがっくりとうなだれた。
「……そういうのは、全然わからなかったわ。黒っていうか、ちょっと赤みの混じった黒に見えたくらいで……。むしろあれが甘いなんて、ちょっと想像がつかないというか」
言いながら、私はアイのほっぺをむにむにとつついた。
「アイ、“ボタモチ”って、甘いんでしょう? しかも、モチモチしてるんでしょう?」
「そうだよ! となりのおばあちゃんがね、よくつくってくれたの」
「……隣のおばあちゃん?」
ぽろりと出てきた単語に、私の手が止まる。
“ボタモチ”は、その隣のおばあちゃんという人が、アイに作ってくれたものなのね? だとしたら……!
私ははやる気持ちを抑えて、アイに聞いた。
「その、おばあちゃんが作ってるところ、覚えてたりしないかしら!?」
「えっと……たぶん、おぼえてるよ? アイ、ずっとみてたから」
パッと顔を上げると、ユーリさまと目が合った。彼も何か予をじたらしく、力強く私にうなずいてくる。私はアイを見た。
「アイ。なら今度は“ボタモチ”を作っているところを見せてくれないかしら。しでも何かわかったら、ハロルドのおじさんが作ってくれるかもしれないわ!」
「おまっ……おじさんはねえだろおじさんは。おれはまだ二十代だからお兄さんだ!」
「あら、二十代? てっきりもっと上かと……」
「おれは二十四でぇす! ユーリより一個年下でぇす! 立派なにーじゅーだーいー!」
「エデリーン、ハロルドのことよりボタモチを」
すかさずユーリさまが、後ろからハロルドを押しのけた。
そうだった、今は彼の年齢よりも、“ボタモチ”よ!
ユーリさまの聲に反応して、アイがやる気たっぷりにふんっと鼻を鳴らす。私たちはまた手をつないだ。
「アイ、がんばっておもいだす!」
――次に目をつぶって現れたのは、見知らぬ“おばあちゃん”だった。
にしてはずいぶん短く切られた髪のに、ここに來た當初のアイが著ていたような、ぴっちりとした不思議な服。年齢は、ちょうどサクラ太后と同じぐらいかしら……?
いかにもなよやかといった風のサクラ太后と違い、アイの記憶の中にいるおばあちゃんはしっかりとしたつきだわ。表も凜々しく、快活とした様子。足が悪いのか、歩く時だけし引きずっている。
『――、――』
が、アイに向かって手招きしている。何か言っているようだったけれど、私に音は聞こえず景が見えるだけ。言ってる容まではわからなかった。
その次に見えたのは、がアイに……鍋のようなものを見せている。
鍋の中には、たっぷりの水と黒いつぶつぶとした何かがたくさん。一瞬キャビアかと思ったけれど、粒はもっと大きくて……そして、赤みを帯びているわ! 形からして、豆かしら?
その中を見せながら、が何かアイに説明している。
それから不思議な形のに載せると……わっすごい! またたく間に火がついたわ!? こんな簡単に魔法を使えるなんて、アイのいた世界はすごいわね……!
それから一瞬視界がれて、場面が飛んだのかしら?
次に見えたのは、アイとおばあちゃんが、太くて丸い棒を使って一生懸命黒いそれを潰しているところだった。時折、白いサラサラした何かが混ぜられていく。
へええ……ボタモチはこういう風に作られるのね。それに、アイの記憶力もすごいわ。前からよく周りを見ている子だとは思っていたけれど、こんなにしっかり覚えているなんて、アイは本當に賢いわ……! さすが私のアイね!
アイの五歳とは思えない記憶力と観察力に心していると、おばあちゃんが立ち上がった。
それからやけに深いお皿? 鍋? のようなものを持ってくると、その中から白い粒が集まった何かをすくいとる。……これは、お米よね? リゾットで食べたことがあるわ。
しわのだいぶ深くなった手が、ぎゅっぎゅとお米を丸めている。かと思うと、先ほど潰した黒い豆の上に乗せてお米を包み始めた。
あれって、中にお米がっていたのね!? それがもちもちのかしら!?
私が驚きながら見ている前で、あっというまに“黒くて丸くて、べとっととした”お菓子が出來上がった。それを、おばあちゃんがいくつもいくつも量産していく。
私は目を開けた。
周りでは、ユーリさまやハロルド、大神に三侍に騎士たちが、じっと私のことを見つめている。
今度こそ、みなが探し求めている答えを、屆けられそうよ!
私はふっと笑った。
「――謎は全て解けましたわ」
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