《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第32話 返り咲いた探索者!

「……ついに今日なんですね」

「長かったですね」

いつもの時間帯。ほとんどの探索者がまだ家で寢靜まっている頃にハヤトはに包んだ防の位置を合わせるようにをゆすった。

「私はハヤトさんを信じていますから」

「真正面からそう言われると恥ずかしいですね」

咲と見つめ合っていたハヤトは笑った。

「ふふっ。危なくなったらすぐに逃げてくださいね。SOS信號を見張ってますから」

「ええ、命が一番ですから」

ハヤトはそう言って笑った。ついに今日、彼は行く。

「いってらっしゃい。ハヤトさん。次に會うときは前線攻略者(フロントランナー)ですかね」

「そうありたいですね。じゃ、行ってきます」

今日、俺は23層を突破(クリア)する。

23階層にると、むっとした熱気に包まれた。この階層は「熱帯雨林」エリアと呼ばれている階層だ。階層全に熱帯雨林のような溫度と気が包んでおり、聳(そび)え立つ木々のせいで日當たりは悪く基本的にっている。

そんな中を、安全圏(セーフエリア)目指してハヤトは歩き始めた。その手には蒼い槍。ハヤトの懸念だった火力不足を解消してくれた一本である。

張してるか?》

「まさか」

《ようやく、と言ったところか?》

「そうだな。明日でちょうど一か月だしな」

《有言実行と言ったところか。私の目に狂いは無かったな》

「おいおい、俺はまだ突破してないぜ? その言葉は終わってからにしてくれよ」

《23階層の階層主(ボス)は「エルダートレント」。【火屬魔法】はお前が得意とする魔法だ。あぁ、まったくもって素晴らしい組み合わせに激するな》

「たまたまだよ。運が良かっただけだ」

ハヤトはそう言いながら地図化(マッピング)された順路を進んでいく。前線攻略者(フロントランナー)たちが整備してくれた道だ。ハヤトはそう思うからこそ、常に冷靜になれた。自分の力を過信してうぬぼれることは無かった。

《今日はやけに落ち著いているな》

「ヘキサが上機嫌なだけだろ」

《テンションも上がるさ。今日、ここに一人の英雄が生まれるんだから》

「フラグをバンバン立てるの止めてくんない?」

ハヤトはできるだけモンスターとの接を避けて階層主(ボス)部屋に向かう。途中、安全圏(セーフエリア)で休んだ時間も含めたら3時間ほどで階層主(ボス)部屋についた。

「…………流石に張してきた」

《準備は良いか?》

「……勿論」

ハヤトはそう言って階層主(ボス)部屋の扉をゆっくりと開いた。苔むした大地が削られ、木々のっこが千切れて舞う。ゴゴゴゴと重たい石がく音と共に、階層主(ボス)部屋の中に燈りが燈る。

そこにあるのは大樹であった。

「……デカいな」

《來るぞッ!》

その瞬間、大樹の枝が激しく揺れると地面を削った。見ると、幹に巨大な顔が浮かび上がりこちらをあざ笑うかのようにして震えている。

“【火屬魔法Lv3】【狂騒なる重撃】【神速の踏み込み】をインストールします”

“インストール完了”

「ハァッ!!!」

挨拶代わりにと、ハヤトの正面に生み出された四つの火球が放たれる。

「RuuuuuuuUUUUUUUUUUU!!!!」

エルダートレントは大きな枝と生い茂る葉を炎弾の盾にした。次いで聞こえる著弾音。ドドドン!!! と重なって聞こえる撃の音。そこに生まれる煙に紛れるようにしてハヤトは【神速の踏み込み】。

ドン、と先ほどの撃音に勝るとも劣らない音でハヤトの出される。槍を前に突き出すようにして踏み込むことによって目の前の空気が円錐狀に切り裂かれると、衝撃波を生みだす。

「吹き飛べッ!!」

音が響く間にエルダートレントに接近したハヤトは【狂騒なる重撃】を発

ズドドドドドドドドッツツツ!!!!!

到底、木と鉱石のぶつかった音とは思えぬほどの轟音が階層主(ボス)部屋に響く。【神速の踏み込み】も相まってハヤトの一撃は高速でトラックがぶつかったほどの衝撃をエルダートレントにもたらした。

しかし、

《はっ。この程度では倒れぬか》

當然、23階層の階層主(ボス)らしくエルダートレントも普通(まとも)ではない。

「そうでないと張り合いがねぇよっ!」

「RaaaaaaaaAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」

ぶと同時に地面が隆起(りゅうき)。剎那、遅れて飛び出すのは鋼鉄のさを持ったの棘。接近したものを問答無用で刺し殺す大樹のは、しかし狩人を仕留めるには至らない。

エルダートレントのびと共に【神速の踏み込み】で空へと浮かび上がっていたハヤトは空中でイメージ。そこにあるのは炎の海。

「出でよ」

そして、世界に顕現する。本來、生木は多くの水分を持っているために燃えにくい。だが、それを無視できる圧倒的な火力があるのなら。

「GYAAAAAAAAAAAAAAAA」

エルダートレントの悲痛なびが階層主(ボス)部屋に響く。攻撃のために突き出したの全てがハヤトの魔法によって焼き付いていた。

“【狂騒なる重撃】を排出(イジェクト)”

“【一點突破:弱點特効】をインストールします”

“インストール完了”

ハヤトは再びの【神速の踏み込み】。それを五連続。一歩一歩に莫大な負荷が足にかかるが、それと共に強力な推進力を得る。だが、それに対応してくるのは流石23階層の階層主(ボス)。

天を覆う無數の枝が細く尖ると、ハヤトめがけて襲い掛かってきた。無論、速さもハヤトと同様にッ!!

「燃えろッ!!!」

その瞬間、ハヤトの穂先に火が燈ると同時にそれは彼を守るようにして展開された。しかし、それは彼を守る盾にもなるが視界を奪うという諸刃の剣。

だが、それで構わない。そうでないと、突破できない。

「オォォォォオオオオオオオオオオオオオッッツ!!!!」

獣の如き咆哮が階層主(ボス)部屋に響き渡る。無數の枝がハヤトを貫かんと襲い掛かるなか、ほとんどの枝は炎に巻かれて燃えていく。だが、その中の一本が炎を抜けてハヤトの真正面に飛び出したッ!

《ハヤトッ!!》

「……ッ!!」

寸での所で首をひねったのはまさに神速の反神経。ハヤトの耳元を唸りを上げて枝が過(さっか)。ぱっ、とハヤトの頬が切れてが滲んだ。後ろからは無數の追撃の枝。

「終わりだァ!!!!」

だが、それよりも速くハヤトの槍がエルダートレントに突き刺さった。穂先に燈された炎がそのまま中を食い破るように燃え広がると、エルダートレントは一際大きく咆哮し、黒い霧になって霧散した。

「はぁ、はぁ……はぁ……」

槍を地面について肩で呼吸するハヤト。長い時間をかけるよりは短期決戦で行くと決意は果たされたのだ。

「はぁ……」

《やったじゃないか! ハヤト!!!》

「あぁ……。なんとかなったな……」

《テンション低いぞ! これでお前も前線攻略者(フロントランナー)だ!! 喜べ!!!》

「いや、普通に息切れで……」

そういって何度か呼吸すると、ようやく収まってきた。

「さてさて、ドロップアイテムは……何これ、実?」

《果(フルーツ)か。持っておいて損はないだろ》

「そうだね。帰って咲さんに鑑定してもらおう」

そういってハヤトはまんま林檎に見える赤い実を拾い上げると、ポーチに仕舞って24階層へと降りる階段に足を付けた。

《こけるなよ》

「なんつー忠告だよ」

《いや、ここでって頭を打ってお陀仏だなんてシャレにならんから》

「そんなヘマするわけねーだろ」

そう言って24階層へと降りていく。その先には攻略本にも記されていない未知の世界が広がっているのだ。人類とダンジョンの最前線。幾度とない命の応酬が繰り広げられる別世界。かつて、最も生をじることができたハヤトの居場所。

「戻ってきたぜ、最前線!!」

そう言って24階層への扉を開いた。

出迎えたのは耳に響き渡るような警告音だった。

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