《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第34話 信じられているがため
ハヤトは地図を見ながら全速力で走っていた。
何ができる。俺に何ができる。
敵は最強集団(ヴィクトリア)の攻略組を壊滅。『WER』78位の阿久津大輔にすら手だしさせずに倒しきった。そんな敵に対して俺は何ができるんだ? 2年間も3層で燻(くすぶ)り続けていた俺が……。
8つの人影は【広域索敵】に引っかかった一つの巨大なモンスターの周りを縦橫無盡に駆け回っている。アイドルとは言え、流石は攻略クラン。不意打ちでなければ対応できるということだろうか。
《……ハヤト、転移の寶珠を用意しておけ》
「どうして」
《最悪の事態を想定するんだ》
ハヤトの隣を浮遊するヘキサの顔は極めて険しい。この先に広がる地獄をまるで見通しているかのように。
そのとき、地図に映っていた探索者のきが止まった。
「……ッ!」
それと同時にハヤトは角を曲がって、戦場に參戦した。そこにいたのはまみれになりながら戦っている3人の男と、地面に倒れている5人の。
そして、そこにいるのは間違いなく。
「ユイッ!!」
彼は地面に倒れている他のと似たような防にを包んでいるが、所々が違う。
……アイドルって『戦乙‘s(ヴァルキリーズ)』かよ!
《ハヤト、急げッ!!!》
そして、元兇(モンスター)がユイめがけて4mはある巨大な鉈を振り降ろすのが見えた。ユイはそれを呆然と見ているだけ。MP切れか、出か。の自由が利かないのだ。
敵は巨大なミノタウロスだった。顔には獰猛な笑顔が張り付いて、この殺を楽しんでいるかのように笑いながら鉈を振り下ろす。
……間に合うか。
否。
間に合わせるのだッ!!
“【気配察知】を排出(イジェクト)”
“【韋駄天】をインストールします”
“【広域索敵】を排出(イジェクト)”
“【神速の疾走】をインストールします”
“【地図化】を排出(イジェクト)”
“【ダメージ軽減Lv3】をインストールします”
“インストール完了”
「間に合ぇえええええええええええええっ!!!」
全てのスキルを使って全力疾走。ハヤトは右手を突き出すともに“盾”を生。スキルを隠すことなど、考えている場合じゃない!
新たな者にミノタウロスはわずかにハヤトを見た。結果的に、それが明暗を分けた。ハヤトの音速にも至る疾駆によってユイに向かって振り下ろされた鉈の間にハヤトのを割り込ませることに功したからだ。
瞬間、ハヤトの両腕はへし折れた。
と、思うだけの衝撃が加わった。けた衝撃が盾を伝わるとハヤトの骨に響く。ミノタウロスはその場で左足を軸にしてぐるりと回転すると、そのままハヤトを蹴り飛ばした。
剎那、10tトラックが激突したのではないかと錯覚するほどの衝撃。重力の魔の手を振り切って、ハヤトのが地面と平行にぶっ飛んだ。
「……ぐはっ!!!!」
そして、背中に重打。丁寧に飾ってあった品を叩き壊して、ハヤトのが壁に埋まった。
「……くそがッ!!」
追撃の勢に移ったミノタウロスを止めたのは、スキル【集敵】だった。ガンガンと盾を叩いているのは、間違いなく。
「久我さん!」
「……ここは私たちが引き継ぎます」
「オオオオォォォォォオオオオオオオオッッツ!!」
ミノタウロスはそう言って久我に向かって突撃。それを盾で軽くいなすと、彼は部下の二人とともにすぐに見えなくなった。
「ユイ! 無事か!!」
「…………見ての通りよ」
「立てるか?」
ハヤトはそう言って彼の腳を見て絶句。足があらぬ方向に曲がっている。すぐにLv3の治癒ポーションを取り出して渡した。
「はやく飲むんだ」
「……私は、いい。それよりも、カオリに」
ユイが指した先にいたのは『戦乙‘s(ヴァルキリーズ)』の中でも最年と思われる軀の小さなの子だった。壁に激突したのか、頭から流しており意識は當然ない。
「……分かった」
ユイの呂律が回っていない。脳震盪(のうしんとう)か、MP切れを起こしている。だが、『戦乙‘s(ヴァルキリーズ)』の中では最も軽(・)傷(・)だ。
《ハヤト、まずいことになった》
(どうした)
カオリと呼ばれたに治癒ポーションを飲ませながらハヤトは聞き返した。
《あれは『招かねざる來訪者《イレギュラー・エンカウンター》』。本來なら、もっと高(・)階層に湧くべきモンスターが、低階層に現れた奴だ》
(……そんなことが)
《稀にだが、な。エリナもそのうちの一種だ。奉仕種族(メイディアン)は本來、75階層よりも上に湧くモンスターなんだ》
(どうして、ここに……)
《分からない。『招かねざる來訪者《イレギュラー・エンカウンター》』は天災のようなものだ。理由など考えても出てくるものではない。そして……よく聞け、ハヤト。今の敵は『忌の牛頭鬼《フォビドゥン・タウロス》』。本來ならば53階層の階層主(ボス)モンスターだ》
(……ッ!!)
《逃げろ! 今すぐに!!》
ハヤトのステータスの平均値はせいぜいが20階層付近の値。とてもじゃないが、53階層の階層主(ボス)モンスターだなんて……。
ハヤトはポーションを飲ませたの呼吸が安定してきたのを確認すると、安堵のため息。その瞬間に、ドサリとユイが倒れた。
「おい! しっかりしろ! ユイ!!」
「……ちょっと、眩暈が……しただけよ……。大丈夫……まだ、踴れるから……」
記憶の混濁。恐らく、脳震盪。
上を起こそうとユイの頭を抱きかかえた瞬間に、
「嫌だ。痛いのは嫌! 叩かないで、ママ。止(や)めて!!!」
その言葉で、ハヤトは彼がどのように育てられたかを理解した。
「しっかりしろ。ここはダンジョンだ! おい、目を覚ませ!!」
水があるならそれがベストなのだが、こんな場所ではむべくもない。
「ハヤト……。ねえ、ハヤト……」
「どうした!」
唐突に名前を呼ばれてユイを抱きかかえる。
まだ、目の焦點が結ばれてない。脳震盪だけではなく、MP切れの両方だ。
「……助けて」
ひゅっ、とハヤトのから空気が抜けた。
《駄目だ、ハヤト! 逃げろ!!》
「アンタなら……みんなを救える……」
《逃げろ! 死ぬぞ! 殺されるんだぞ!!》
「お願い……みんなを……救って……」
「……どうして、俺なんだ」
「……信じてる、から。アンタなら、やってくれるって、信じてるから……」
「……どうして……ッ!」
「だって…………私の相棒(バディ)でしょ」
「……ッ!!」
その瞬間、ユイは気を失った。彼のが傷つかないようにゆっくりと地面に寢かせる。
《どうして逃げない!! ハヤト!!!》
ハヤトは先ほど生み出したばかりの盾を手に取って、立ち上がった。
「…………信じられてるんだ」
《何を……ッ!》
「俺は、信じられてるんだ。こんな幸福なことがあるか? ヘキサ」
《……私だって、お前を信じているさ。お前が、このダンジョンを攻略して「地球」を救うと信じてる。だが、今じゃないと言ってるんだ!! 今は戻って、力をつけて戻ってくれば良い! だけど、今じゃないんだ!!!》
「……なぁ、ヘキサ」
《駄目だ! 行かせないぞ!!》
ヘキサはそう言ってハヤトとミノタウロスへの道の間に立ちふさがった。ヘキサは思念だ。そんなことをしたって何一つ意味はない。だが、
「ヘキサ」
《お前を死なせるわけにはいかないんだ!》
「…………」
《エリナも、咲も、お前が逃げたことに何も言わない! むしろ生きて帰ったことを喜ぶんだ! お前には生きて帰ることをんでいる人がいるんだぞ!!》
知っている。それが願っても手にらない幸せであると、彼は當然知っている。
「ヘキサ。俺は……今まで疎まれてきた」
《それは……》
「だけどさ、こんな俺を信じてくれる奴が二人もいたんだ」
《…………だが》
「ありえるか? この、中卒で、親から絶縁されて、才能もなくて、2年間も3階層で這(は)いずり回ってた底辺の探索者を信じてくれてるんだ」
《……ハヤト》
「信頼に応えるのが、道理だろ」
《エリナも! 咲も! 勿論、私だってお前が生きて帰ることをんでいるんだ! どうして分かってくれない!! 誰もお前に、死んでほしくないんだ!!!》
「分かってる、ヘキサ」
その瞬間、ぞっとするほどの殺気が部屋に充満した。ハヤトはその殺気の先を見た。
目の前には全に返りを浴びた「忌の牛頭鬼《フォビドゥン・ミノタウロス》」が居る。鋭部隊の副隊長といえども、時間稼ぎにしかならない……。ならば、
「俺は、お前に救われたんだ。それだけじゃない。俺はエリナに、咲さんに、ダイスケさんに、ユイに、シオリに救われてるんだ。俺一人だったら、絶対にここまで生きていなかったから」
彼らがいたから、ここまで死なないで來られた。
彼らがいたから、ここまで生きることができた。
「だから、次は俺が救う番だろ?」
《……うぅ》
ハヤトの決意は堅いと知るやヘキサは黙り込んだ。
「安心しろ。俺は死なねえ。倒れねえ」
ハヤトは盾を構え、獨特の型を取った。
“全スキルを排出(イジェクト)”
“結合技巧(ワンセットスキル)【暴帝:覇王】をインストールします”
“インストール完了まで 殘り:78秒”
「ここにいる全員を生きて返す」
右下にインストールの狀況を知らせるプログレスバーが表示。ジリジリと埋まっていく。
「ヘキサ。俺がどうして5層まで前線攻略者(フロントランナー)だったのか。武もなく戦えたのか。教えてやるよ」
ミノタウロスが牙を剝きだしにして吠えた。
ハヤトの冷たい視線がそれを貫く。
「天原の絶技、その目に叩き込め」
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