《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-2話 デートにう探索者!

が屆くまでの三日。ダンジョンにるわけにもいかないので暇である。

普通なら、せっかくの休暇ということでも休まると安堵するところだが、ハヤトは先日までの院ではすっかり完治。調も完璧なのだ。

「なぁ、エリナ」

「どうしたんです? ご主人様」

ハヤトはエリナが買ってきていたファッション雑誌を眺めながらポツリと呟いた。

「どっか行きたい所ないの?」

「行きたい、所ですか?」

そんなことをハヤトから聞かれるなぞ思いもしなかったのだろう。エリナは鳩が豆鉄砲をくらった顔を浮かべて、頭には綺麗な“?”マークが浮かんでいる。ハヤトは見飽きた雑誌を床においてエリナを見る。

「そ、行きたい所。せっかくの機會だし、行こうよ」

「ご主人様の行きたい所に行きたいです♪」

……それが無いから困ってるの!

「いやぁ、俺はいいよ。映畫とか、遊園地とか、無いの?」

《私は本屋に行きたいな》

「なんで」

《お前に教養書をいくつか選んでやろうと思って》

「……勉強はいいって」

《高認試験とればいいのに》

「あー。それは考えても良いなぁ」

ダイスケや咲から、高校に行かなくても高卒の資格がもらえる高認試験というものを聞いたことがある。だが、當時は勉強をする時間の余裕も金銭的な余裕も無かった。

「ってそうじゃなくて、今はエリナの行きたい所聞いてんの。お禮したいんだよ。いっつも家事やってくれてるから」

「そう言われましても……奉仕種族(メイディアン)が家事の手伝いをするのは呼吸するのと同じですので……」

歯切れの悪い様子を見せるエリナ。

うーん、仕方ない。ここはとっておきの切り札を切るか。

「水族館」

「にゃ!?」

ハヤトの言葉に皿を洗っていたエリナの姿が震えた。

「水族館に行きたいって言ってたじゃん」

「……えぇぇえ!? なんで知ってるんですか?」

「いや、寢言で言ってたから」

「……本當ですか?」

「マジ。なあ、ヘキサ」

《あぁ。結構大きい聲で言っていたぞ》

「うぅ……。恥ずかしい……」

「行きたいなら行こうぜ。明日」

「……本當にいいんですか?」

「もちろん」

エリナは夢の中でペンギンにもふもふされる夢を見ていたという。水族館だからペンギンともふもふはできないと思うが、それでもエリナは日々同じことの繰り返しで気も滅っていることだろうし、ここで一つ気分転換にでもなれば良いと思うのだ。

「じゃ、じゃあこのイルカのショーもいけるんですか!?」

そう言ってエリナはキッチンの下にあった収納臺から水族館のチラシを出して見せてきた。

……なんでそんなのそこにれてんの。

「時間が合えばだけど、明日はやってるの?」

「はい! 日曜日なのでやってます!!」

「じゃあ、行こうか。って、今日土曜日か……」

探索者あるある。

曜日覚が無くなる。

「こ、このペンギンの餌やり験もできるんですか!!?」

「聲が大きいって……。大丈夫、できるから」

「やった! やった!!」

エリナは上機嫌になってその場でぴょんぴょん跳ね始めた。

こうまで喜んでもらえるとった甲斐もあるというものである。

ちなみにペンギンはけっこう臭いので彼の夢が壊されないことを祈るばかりだ。

翌日、お出かけ日和というべきか、雲一つない快晴である。

二人は水族館のある隣町まで電車で移して、二人仲良く並んで歩いていた。

「よし、行こうか」

「はい!」

エリナは嬉しさのあまり、いつもより30分早く起きてずっとソワソワしていた。ハヤトを起こさないように気を使ったみたいだが、ハヤトはそれを寢たふりをして気が付かない振りをしていた。

だって、ずっとペンギンの絵を眺めてるんだよ?

いじゃん。

「こっちです! お兄様!!」

いち早く水族館に行きたいのか、ハヤトの手を引っ張るエリナ。

「水族館は逃げねえよ」

とかなんとか言いながらもまんざらでもないのがハヤトだ。

《……ほんとに大丈夫かぁ?》

そういうヘキサが心配しているのは人が多いこの街でハヤトの素がバレないかということである。ハヤトは別に自分が目立つ顔だとは思っていないが、それでも何があるのか分からないのが集団の恐怖にある。

(大丈夫、大丈夫! なんとかなるなる!!)

《うーん、楽観論は大切だと思うが、そこまで妄信するものでもないし……》

(見ろよ。案外、人は他人を見てないもんだって)

《……そうみたいだな》

「お兄様! イルカのショーが終わっちゃいますよ!!」

「終わるの第一回目だろ? 二回目もみるの?」

「當然です! 早く早く!!」

あ、當然なんだ。

と思いながらもハヤトとエリナは館料を支払って館。エリナは子供料金だが、ハヤトは學生ではないので大人料金である。學生料金は學生証を見せないと、使うことができないのだ。

《忘れたって言えば通ると思うけどなぁ……》

(ズルは駄目! 絶対!!)

《変なところで真面目なんだから……》

「お兄様、こっちです! こっち!!」

「初めて來たのに道が分かんの?」

「広告で見ましたから!」

そう言ってハヤトの手を取って先々行くエリナ。

……らかい手だなぁ。って、そうじゃなくて。

「広告で見たって……。地図なんてあったっけ」

「載ってましたよ? 結構小さかったですけど」

どっちにしろ、それを覚え込むほどに読み込んできているというわけか。

來たいなら來たいって素直に言えばいいのに……。

でも、そんなところが可いのである。思わずにやけちゃうね。

《何笑ってんだ。気持ち悪い》

「………………」

「あ、ここです!」

エリナとともにハヤトは屋外へ出た。そこにはすり鉢狀に席が配置してあり、既に前列は埋まっていた。

「……うぅ。もっと前で見たかったです……」

「前は濡れるから、案外こっちで良かったかもよ」

「そういうものですか?」

「ああ。そりゃもう、びしゃびしゃだよ」

「お兄様って水族館には來たことあるんですね」

「…………まあな」

「やけに煮え切らない返事ですね」

「シオリ関連だ。忘れてくれ」

「あっ、はい」

一年半くらい近く前。まだシオリがそこまでヤバいやつだと思っていなかった頃の話である。ハヤトからしたら忘れたい黒歴史の一つだ。

ハヤトの聲で全てを察した有能なエリナはそれ以降なにも聞かずに、見やすい席に座った。

「わぁ! 始まりますよ!! タイミングばっちりですね!!」

を乗り出しすぎだぞ。落ちる落ちる」

低い背を一生懸命にばしてイルカのショーを見ようとするエリナ。うーん、可い。

癖にドストライクか? ハヤトさんよ》

今まさに始まったイルカショーに釘付けのエリナを置いて、そっとヘキサが語り掛けてきた。

(……何が言いたい)

《いやぁ。別になんでもないよ。ただ》

(ただ?)

を知らない人間の癖がどうなのか、気になってね》

(……あん?)

《奉仕種族(メイディアン)は契約した主人に合わせて己を変える。見た目は勿論、格も、聲もだ》

(……それが?)

《エリナがお前におせっかいなのは何も奉仕種族(メイディアン)だからじゃない。お前は世話を焼いてほしがってたのさ》

(…………それは、否定しないが)

本來は、母親から貰えるはずだったものを彼はけ取っていない。深層心理の奧底で、そういったものを求めていたのだろう。

《見ろ、この純粋無垢な姿を》

エリナはイルカが跳ねるたびに歓聲を上げており、こちらには一つとして注目していない。

《裏切られたくなかったんだろ?》

(……あぁ)

《大事にしてやれよ》

(當たり前だろ?)

ハヤトがそう返した瞬間、イルカが一際大きく跳ねた。

不肖ながら日間1位を取らせていただきました。

これも全て応援してくださっている皆様のおかげです。

誠にありがとうございます!

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