《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-3話 デート帰りの探索者!

「凄かったですね。お兄様!」

「ああ、凄かったな」

イルカショーというものを見るのは初めてだったが、中々楽しめるものだ。エリナなんかは盛り上がりっぱなしで周りのご老人夫婦から暖かい目で見つめられた。

ハヤトとしてはどうやってイルカに教え込んでいるのかが気になるところである。そういえばテイマー職が出てきてのショーがより一層複雑化したという話を聞いたことがある。

どこまで本當か知らないが、たちが人間と遜ないレベルのきをするのだそうだ。相も変わらずスキルというやつは恐ろしい。

「13:30からペンギンの餌やりが出來るそうです!」

「じゃ、それまでに飯食わないとだな」

二人がいるのは水族館のレストランだ。一か月前のハヤトなら目を丸くしそうな値段ばかりである。

《へぇ。だいぶ、金銭覚も落ち著いたか》

(まあ、貯金もかなりあるし)

《それ散財するやつのセリフだぞ?》

(…………)

二人は食事を済ませるとエリナはハヤトの手を取ってペンギンコーナーへと走った。別に走る必要はないと思うがエリナは気持ちが抑えられないのだろう。

ハヤトも自分に思い當たりがあるために微笑(ほほえ)ましく思ってしまう。

ペンギンの餌やりは中學生までということだったが、エリナは見た目で普通に通った。ある部分がちょっと長しすぎているが、特に何も言われることなく通った。ザルなものである。

(そういえばエリナって年齢的に何歳なんだろうな?)

《2歳以下だろ。ダンジョンが出來てそれくらいだし》

(…………やばいな)

《あんな見た目にしておいて何言ってんだ》

(うるへー)

エリナとその周りにいる子供たちは真剣に飼育員の話を聞いている。こうしてみると、周りの子供たちとなんら遜(そんしょく)ない。髪や目のからして外國人だと思われても仕方ないとは思うが。

その時、ふと見た事のある子供の顔が目にった。

(……あの子は)

《知り合いか?》

(……まぁ)

エリナの橫にいる。それは間違いなく、あの雨の夜の日にハヤトのせいで事故に巻き込まれたであった。

(良かった。元気そうで)

《治癒魔法が効いたんだろうさ》

(取り調べで俺のことを言ってないことを祈るよ)

《人を助けておいて、と思わないでもないが例外を作ったらアウトだものな》

(法律は難しいし、そこら辺は賢い連中に何とかしてしいところだな)

そして時は刻々と過ぎていく。

「お土産は本當にそれだけで良いのか?」

「はいっ! これ以上買っても置く場所ないですし」

「うーん。そう言われると弱るなぁ……」

エリナが持っているのはコウテイペンギンの赤ちゃんのぬいぐるみだ。それもかなり小さい奴。

ハヤトの考えていた予算の都合上、まだ余裕があるのでそう尋ねたのだが部屋の広さを出されると困る。

ハヤトは會計を済ませてエリナにぬいぐるみを手渡してやると大変喜んだ。見ているだけで微笑ましい。

「エリナが家(うち)に來てくれて、嬉しいよ」

「もったいないお言葉です!」

そういってにっこり笑った顔が輝かしい。二人は水族館だけではと、しだけショッピングもと街を回った。だからと言って特に買おうと思っていたものが出てきたわけではないが。

「今日はとっても楽しかったです!」

「楽しんでもらえたなら何よりだよ」

二人は既に日の傾きつつある中、電車で家に向かった。その周りにはギルドでちらほらと見かける顔もいる。こっち方面の電車に乗る奴は探索者か、その関係の者しかいない。

流石に前回の時のように電車で騒ぐ迷な探索者は出てこなかった。ああいった手合いはどこにでも潛んでいるので、今回は表面化しなかっただけかも知れない。

そんなことを考えながら駅からの帰路についていた時だった。

「兄様(にいさま)!」

そんな聲が聞こえた。

「エリナ、呼んだ?」

「いえ。私じゃないですよ」

「じゃあ、誰が――――あっ」

振り返った後ろに、一人のが立っていた。

をセーラー服に包んで、しだけ病弱そうな顔に腰までばした黒髪が風にたなびいて揺れている。一人のように見えるが後ろに2、3人の護衛を連れているのは見なくとも分かる

その顔の面影はどことなく氷細工を思わせるほどに冷たいものがあるが、それは彼の本懐ではないということをハヤトは知っている。

「……なんで、ここに」

ハヤトも思わず、息をのんでしまった。

「えっ、えっ? だ、誰ですか。この方は……」

「…………妹だ」

「い、妹様!?」

《……そうか。お前が有名になったから》

(そろそろ、來る頃合いだとは思ってたがまさかここで來るとはな)

「やっぱり、そうですよね。兄様ですよね」

どうやら、彼は無事に高校生になれたようだ。

「生きて、いらしたんですね」

「あぁー。そこなんだ」

もしかして実家の連中は死んだと思ってたんだろうか。

(……なあ、中學生で死んだ場合って學歴どうなんの?)

《今気にするところってそこか? 小卒だろ、普通に考えて》

(…………まずいかもしれない)

《何がまずいんだ。普通、行方不明屆出すだろ》

「はい! 兄様が家を出られたと聞いた時から、私は兄様のことが心配で心配で夜も眠れず、食事も(のど)を通らず……。あら、こちらの可らしい方は?」

「エリナ、自己紹介」

「えっ、いいんですか?」

「ほんとの妹に妹で通すわけにもいかんだろ……」

「確かに、そうですね。初めまして、私はエリナです! ダンジョンでご主人様に拾われました!」

「あら、ということは使役(テイマー)されたということですか?」

「はい! それで大合ってます」

「私は天音(アマネ)。天原天音です。兄様とは一歳違いの15歳です。よろしく」

「よろしくお願いします!」

「……それで、何しに來たんだ」

「はい。それなんですけど、これを手渡しに來ました」

「あん?」

そう言ってアマネが差し出したのは一通の手紙。

「本家からです」

「捨てていい?」

「駄目ですよ! いつのまに兄様はそんな悪い子になったんですか!」

「あの。本家ってなんですか?」

「……ん、そこら辺はおいおいということで」

「お返事待っていると、當主様が」

「……捨てていい?」

「駄目ですって!」

「はぁ……」

心の底から吐き出したのではないかと思うほどの深いため息。

「なんで今更なんだよ」

「先日、日本探索者支援機構様より連絡がありまして」

機構に様つけるやつ初めて見たよ。

「……どこに? 実家?」

「いえ、本家です。兄様のランクがB以上になることは確実とのことでしたので、天原(ウチ)に圧がかかりまして」

「はぁ」

「それで急遽(きゅうきょ)、兄様を見つけなければということで話がまとまり、私が駅に張り込んでいるとタイミングよくお兄様が來られたということになりますね」

「……なるほど」

ハヤトはそこで一呼吸。

「靴ひも直したいから、これちょっと持ってて」

「はい」

そう言ってアマネに手紙を手渡したその瞬間、

「また會おう!」

そう言ってエリナを抱きかかえて逃走開始ッ!

「えっ!? ちょっと!! 兄様―!!!」

流石にそこから逃げ出すなんて考えもしなかったアマネは完全に虛を突かれた形となり、ハヤトを追うことが出來なかった。

そもそも前線攻略者(フロントランナー)の腳力を活かした全力の逃走である。追いつける者など、同じ前線攻略者(フロントランナー)だけだ。

ハヤトはすぐにアマネの視界から消えると大きく迂回しながら家に帰った。

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