《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-4話 本家と分家と探索者!

「はっー、はっー」

「よ、良かったんですか? 逃げちゃっても……」

「良いよ、あいつらは……」

頭の中が昭和を通り過ぎて江戸時代くらいで止まっているような連中である。放っておいても構わないだろう。

《つけられてないだろうな》

「まさか……。大丈夫だろ」

先ほどからスキルインストールが【索敵】をインストールするかどうかの確認で視界が埋まっている。必要ないって……。

本家の連中ならともかくアマネ相手だ。本當にその必要はない。

《久しぶりの家族との再會だろ? もっと喜んだらどうだ》

「ううん……。ちょっとな……」

《親じゃないだろ。何をそんなに渋ってるんだ》

「本家からの手紙があると言ってたろ」

「その、本家って何なんですか?」

「あー。そうだな。エリナにはそこからか」

ハヤトは家に上がると水を一杯あおった。

「うーん、まあ難しい話じゃないんだが……」

「はい」

「俺たち親族の大元、“天原”の一族が派生する元の一家があるんだ」

「ふむふむ」

「“草薙”って言うんだけどな、名家も名家だよ」

「その……あまり知らないんですけど」

「だろうな。“三家”は表に出ないから」

社會常識を知りえるはずのエリナですらも聞いたことは無いだろう。

「知らない言葉の説明をしてる間に知らない単語出すの止(や)めてください! 分かんないです!」

「じゃあ、その話は置いておこう。とにかく、“草薙”って家が“天原”の家の本家で、そこの力が強いんだよ。権力的にも、理的にも」

「……理的?」

「“天原”の技はほとんど“草薙”の模倣だ」

《ほう?》

ここで無言を貫いていたヘキサが會話に混じってきた。

「元々、“草薙”って家は護國の尖兵だった。だが、一つの家じゃ國を守れないからいくつも分けたんだ。警察として側から國を守る“高原(たかはら)”。軍隊として外から國を守る“高千穂(たかちほ)”。人知れず魔から國を守る“天原(あまはら)”。まぁ、他にも々あるけどとにかく、それらの家をまとめ上げる武の英傑が“草薙”なんだよ」

「な、なるほど」

「だから、強い。無茶苦茶強い。アホみたいに強い。うーん、例えづらいけど……」

ハヤトは説明しやすい的な例を出そうとして、ぱっと思いついた。

「今の前線攻略者(フロントランナー)よりは、確実に」

「……なんでダンジョンに潛らないんですか!?」

「潛る理由も無いんだろ。大、日本(J)探索者(E)支援(S)機構(O)は“高原(たかはら)”関連だし」

大方(おおかた)、分家だからと気を利かせて本家の連中に連絡でも取ったのだろう。はた迷な奴らである。

「というか、そもそも支援機構を作るときだってめたんだよ。“高原(たかはら)”がやるのか“天原(あまはら)”がやるのか」

「そうなんですか?」

ダンジョンは魔である。しかし、國に生まれ多くの注目を浴びてしまった。

「そう。だけど、“天原”は人知れず魔を狩る。魔っていうのは今、この世界に溢れている奴らのことを指すんだ。だからダンジョンに構ってそっちがお留守になったら元も子もないだろうと本家から通達があった」

「ふむふむ」

「だから警察でノウハウが十分にある“高原(たかはら)”に投げられたんだ」

「それで、その本家からのお手紙というのは」

「絶対ロクなもんじゃねえだろ」

エリナは何度もコクコクと頷いた。

《天原の技にオリジナルはあるのか?》

「……今、そこ聞く?」

《いや、何となく気になって》

こいつは武マニアというより闘爭マニアの節がある。

完璧人(こんな見た目)なのにドンパチが好きで好きでたまらないのだ。

「ほら、俺がミノタウロスにやった『星走り』があっただろ」

《ああ、あれか》

「あれはそうだ。『星走り』は自壊の技。護るための技じゃねえからな」

《へぇ》

「あとはいくつかあるけど、使い時が來たら教えてやるよ」

「そう言えばご主人様が音速超えたって話!」

「おう、どうした」

「あれ本當なんですか!?」

「何でそんなに目を輝かせてるんだ」

「だって人間で音速超える人なんていませんよ!」

「無事じゃなかったけどな」

「私、気になるんです!!!」

「そのセリフはちょっとヤバくないか?」

何だかんだで翌日の朝に防が屆いた。さっそく著込んで初陣(ういじん)である。

「あら、お久しぶりですね。ハヤトさん」

「そうは言っても三日ぶりくらいですよ?」

咲は病室で退屈にしているハヤトに差しれを屆けてくれていた。

「ふふっ。そうですね。ここ最近、ずっとハヤトさんの顔見てましたから」

「何かそう言われると照れますね」

ハヤトの言葉に眠そうにしていた咲の隣の男職員が咳払い。いちゃつかないでさっさとしろということか。

ちょっとくらい良いだろ! ケチ!!

「今日はどこまで行かれますか?」

「24階層の階層主(ボス)を倒そうかと」

「退院したばかりですよ? 大丈夫ですか?」

「行けますよ!」

「ヴィクトリア」という最強集団が壊滅しかけたことによって、他の前線攻略者(フロントランナー)。そして彼らが所屬しているクランがここぞとばかりに攻略を推し進めた。その結果、ハヤトの防が屆くまでの間に24階層は突破され、今の最前線は25階層なのだ。

「それに、今日が最終日ですよね?」

「はい。ですけど」

探索者ランクと、『世界(W)探索者(E)ランキング(R)』の集計ポイントの最終日が今日である。ランクを上げておいて損は無いのでハヤトは今日中に24階層の階層主(ボス)モンスターを倒したいのだ。

「生き急いでは駄目ですよ?」

「俺が生き急いでいるように見えますか?」

「昔はそう見えました。今は、どうでしょう」

「毎日可付嬢に會うために、死ぬわけには行かないんですよ」

うろたえる咲を見たくてそう言ってのけるハヤト。

「あら。ハヤトさんって16歳ですよね。そろそろ17?」

「もうちょいで17ですけど、どうかしたんですか?」

「ううん。ただ、約束のことを思い出してたんですよ」

そういってにっこり笑う咲。約束とは間違いなく2年前のアレである。

「うっ……」

今日はどうやら咲の方が一枚上手(うわて)だったらしい。ハヤトは降參の白旗を上げるべく、ダンジョンへの場処理を終わらせた。

「あ、そうだ。ハヤトさん、聞きました?」

「何をです?」

「昨日、3層で「モンスタートレイン」が起きたそうですよ」

「……まさか」

「犯人、というか。まあ引き起こした子は初心者だったらしいんですけど」

「何もなかったんですか?」

「ちょうど弟子を育てていたAランクの探索者がいたんです」

「なるほど」

Aランク探索者にとって3層のモンスタートレインなんて蚊に刺されるようなものだろう。一人いれば解決してしまう。

「まさかとは思いますけど、気をつけてください」

「そうですね。最近、鳴りをひそめていましたから」

《……『死漁り(スカベンジャー)』か》

(ああ)

初心者を裝(よそお)って、他の探索者に多數のモンスターを押し付ける「モンスタートレイン」を行うのは『死漁り(スカベンジャー)』の十八番(おはこ)だ。

ただ、問題なのはそれが本の初心者なのか。偽裝している初心者なのか分からないのである。

《初心者じゃないのに2年間も3層にいたやつもいるしな》

(勘弁してくれ……)

つまりはそういうことだ。ダンジョンは命の危険が伴(ともな)う世界。階層以上の実力はあっても命が惜しくて進まない探索者など腐るほどいる。

ハヤトがダイスケと共に実行犯の三人を警察に突き出してから、ここ最近はきらしいきも聞かなかったのだが。

「まぁ、誰も死ななくて良かったですよ」

「まったくです」

そう言ってうんうん頷(うなず)く咲。

付としても思うところがあるのだろう。もしかしたらどこかで殺人鬼を相手しているのかも知れないのだから。

「流石に前線攻略者(フロントランナー)に「モンスタートレイン」するほど用な奴がいるとは思えないですけどね」

どうして『死漁り(スカベンジャー)』は低階層で「モンスタートレイン」を行うのか。それは、ミスっても命からがら逃げ出せるからである。

高階層のモンスターは攻撃力が異常なまでに高い。そんなのを用に集めながら他の探索者に押し付けるほどの力がある前線攻略者(フロントランナー)はいないだろうし、萬が一出來たとしても中々に逃げ出せるものではない。

それに前線攻略者(フロントランナー)たちは皆、『転移の寶珠』を持っている。「モンスタートレイン」を押し付けられても簡単に離されてしまうのだ。

「何はともあれ、用心ですよ」

「確かにそうですね。じゃ、行ってきます」

ハヤトはそう言って24階層へと向かった。

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