《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-5話 ! 筋! 探索者!

24階層はり組んでいる館であるが、前に一度通ったことのある道である。難なく安全圏(セーフエリア)へとやって來れた。

この階層は既に攻略が終わっているので地図がギルドのショップで販売されている。最前線に近い階層の地図はアホみたいに高いが、それは命の値段だ。惜しむわけには行かない。

「なんか拍子抜けなんだけど」

《何が》

「ここのモンスターってこんなに弱かったっけ?」

《ああ、そういうことか。ステータス見てみろ》

ハヤトの疑問は最もなもの。ということでヘキサはそう促(うなが)した。

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天原(あまはら) 疾人(はやと)

HP:52 MP:55

STR:30 VIT;30

AGI:32 INT:26

LUC:05 HUM;75

【アクティブスキル】

『武創造』

【パッシブスキル】

『スキルインストール』

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「おおっ!? 何だこれ!!??」

普通では考えられないほどの高長っぷりに思わずんでしまった。

《そりゃ53階層の階層主(ボス)を倒したんだ。ステータスも上がるだろうよ》

「つっても、これは上がりすぎだろ……」

ハヤトが1週間近く見ていないだけで10近く上がっていた。ダンジョンでトレーニングすれば人間を辭められるとは専(もっぱ)らの噂であるが、モンスターを倒したほうが手っ取り早いとはその中でも良く聞く話だ。

ただ、ここで注意したいのは漫然(まんぜん)と倒していると、ステータスは雑に上がっていくということ。均等に育てたい場合や一部を特化させて育てたいと思うのなら、その部分を強化するようなトレーニングをしなければならないのだ。

筋力(STR)を上げたいならダンジョンで筋トレすればいい。

耐久(VIT)を上げたいならダンジョンで攻撃をけ続ける。

敏捷(AGI)を上げたいならダンジョンで専門のトレーニングを。

魔法(INT)を上げたいならダンジョンで魔法を使いまくれば良い。

人間(HUM)なんてダンジョンでトレーニングしていたら勝手に減っていく。

運(LUC)は特にない。

こうして列挙すると魔法(INT)が上がらないのも當然かとハヤトは思う。自分はかなりの近接偏重。魔法が効きやすい相手にしか、魔法スキルを使わないからだ。

「これじゃあ単獨(ソロ)攻略者がない訳だよ」

ステータスを均等に上げる労力と、攻略の楽さが全く釣り合っていない。

《全部を均等に上げなきゃいけないからな》

「どこかが欠けたら命取りだし」

ちなみにだが単獨(ソロ)攻略者は過酷であるが故にもっとも注目される役職である。14歳くらいの年が単獨(ソロ)攻略者を目指して挫折(ざせつ)していくのは、もはや一つの慣例だ。ちなみにハヤトもその類(たぐい)だが、友達がいないので単獨(ソロ)攻略者のままここまで來てしまった。

「お、見ろよ」

《綺麗にぶっ壊れてるな》

ハヤトたちが安全圏(セーフエリア)を突破して、薄暗い廊下の中を歩いている最中に、瓦礫(がれき)が散らばっていた。この瓦礫は本來あったダンジョンの壁を無理やり壊したために飛び散ったものである。

「おお!? まだ俺のが殘ってるぜ」

《汚いなぁ……》

「なんつーこと言うんだよ」

ここはハヤトが『忌の牛頭鬼《フォビドゥン・タウロス》』を倒した場所である。あの時、『星走り』と共に散ったは床と壁と天井と、あらゆる方向にこびりついていた。

《最前線(こんなところ)だから誰も綺麗にしないのか》

「いやぁ、それにしてもシオリが居なくて良かったよ」

《何故だ?》

「だって、アイツ絶対舐めそうだもん」

ハヤトがそう言った瞬間、肩に手を置かれた。

「もう舐めたよ」

「うおぉわああ!?」

脳に危機を刻まれた聲と共にシオリが現れた。

「誰と喋ってたの?」

「……トモダチ」

「そっか。いつか私にも紹介してね」

『WER』日本二位の子高生はハヤトの言葉に一切突っ込まず、れた。

「何でここにいるんだ」

を採りに來たの」

(……ほらな)

《………………》

「ちなみに聞いておくんだけど、そのを採ってどうするんだ」

にはDNAがあるから」

「……あるから?」

DNAが何かを詳しく知らないハヤトだが、嫌な予が背筋を貫いた。

「この間、中國のダンジョンで見つかった『超(オーパーツ)』に何でも復元できる裝置がある」

「…………それで?」

「ハヤトのからiPS細胞作って子を作れば」

「作れば?」

「私とハヤトの子供が出來る」

「……!?」

「どうしたの?」

「……コウノトリはどっから來るの?」

「………………」

その時ヘキサはそれまでハヤトの言葉に突っ込まなかったシオリの顔に戸(とまど)いが生まれたのを見た。

「……ごめん。ハヤトが正しい。キャベツ畑に持って行く」

「やめて!」

《そっちには突っ込むんだ……》

「ハヤトはどうして、ここに?」

「階層主(ボス)を倒しに」

「ちょうど良い。私もついていく」

「何で」

「二年ぶり。久しぶりの相棒(バディ)」

「俺とお前で組んだことは無いぞ……」

勝手に付きまとわれたことはあったが。

「あの時は、私が足手まといだった。今は違う」

「俺が足手まといってか?」

「ううん。ハヤトが主(メイン)。絶対違う」

「分かったって。そんなに真面目に突っ込むなよ。ならさっさと行こう。あんまりここに留まってもあれだ」

「うん。そうする」

一つの場所に留まっていると、その分モンスターと対敵するリスクも上がる。挾まれた時に逃げられない可能も出てくるので、出來るだけ移し続けた方が良い。そちらもそちらでモンスターと出會う(エンカウント)する確率は上がるが、反対にすぐに逃げられるというメリットがある。

「24階層の階層主(ボス)ってどんなの?」

「めんどい」

「どゆこっちゃ」

「數で押してくる系」

「なるほど」

確かにそういう階層主(ボス)は一定數いる。厳にいえば違うが、5層の階層主(ボス)である「スケルトンキング」もその類(たぐい)と言えばその類である。

「そこ危ない。こっち」

普通に歩いていると唐突に首っこを摑まれて後ろに引かれた。ハヤトは分からないが、何らかの罠(トラップ)があるのだろう。

「お前よく分かったな、こんなの」

が違う」

「えぇ……」

ハヤトは目の前の通路を見るが何一つとして違うは見えない。

《いや、確かに……言われてみれば》

(噓だぁ……)

ずっと注視していればうっすらと見えてくるような、そんな違いである。

「速く、行こ?」

それに納得がいかずずっと地面を覗き込んでいたハヤトをシオリはそう言って覗き込んできた。その近さと仕草にハヤトは思わずドキッとしてしまい――してしまったことに恥じて目の前のトラップを踏もうかと思ったが痛いのは嫌なのでやめておいた。

(顔は……悪くないんだけどなぁ)

《お前……人の顔にとやかく言える顔か》

(いやいや、一般論の話。……だけど格がなぁ)

《良いじゃないか。好かれていて》

(他人事だからそんな軽く言えるんだっつーの……)

「ここだよ」

シオリが立ち止まったのは、一見すると大きな絵畫のように見える。しかし、真ん中には隙間がしだけ開いており、巨大な扉であることが窺(うかが)えた。

「ついたか」

「階層主(ボス)は攪(かくらん)のために雑魚をばらまく。その中に隠れている階層主(ボス)を倒せば終わり。簡単でしょ?」

「あぁ。本はシオリに任せて良いか?」

「ん。分かった」

「“スキル”は?」

「ここじゃ、あまり使えない」

シオリは《WER》24位の英傑。當然“覚醒”スキルの保有者だが、高い攻撃力と範囲制圧力を誇る代わりに部屋が狹いとその効果を発揮しないという弱點もある。

「分かった。俺が周りを片付ける」

「ハヤトが雑用みたい。あんまり、気持ちよくなれない」

「良いよ。そんなの」

「やっぱり、私が雑魚を」

「良いって!!」

ハヤトは別に攻略できればいいのだ。ここで押し問答なんかをしているわけには……。

《後ろ! 後ろ!!》

「あん?」

ぱっと後ろを振り向くと、首のない2mほどの巨大な人影。

まず目を引くのは首がないことだが、それよりも目が行くのはムキムキマッチョな。そして、大事なところを隠すようにりつけられている紫の貝殻である。

「し、『紫鉄貝(シテツガイ)』だッ!!」

「っ! 開ける!!」

あのシオリですら焦った様子で階層主(ボス)の扉を開け始めた。

ハヤトが今著ている防にも素材として使われている『紫鉄貝(シテツガイ)』だが、面白い習として自分よりマッチョな人間は襲わないというものがある。

だが、ここにいるのはモヤシとJKである。

「やばいやばいやばい!!!」

「は、ハヤト!! 押して!!」

「おおおおお!!!」

『紫鉄貝(シテツガイ)』は走らずゆっくりこちらに迫ってくる。捕まったら首を引きちぎるのがこのモンスターの攻撃だ!!

《ま、間に合わんぞ! くっ、こうなったら》

(いったん逃げるか!?)

《いや、筋を譽めろ》

(は?)

《早く!》

くそ! 訳が分かんねえ!!!

「い、良い筋だっ!!!」

「……ハヤト?」

突然のハヤトの行に首を傾げるシオリ。勿論、ハヤトだって自分が何をしているのか訳が分からない。しかし、ここはヘキサの言葉に賭けるしかないッ!

果たして首のないマッチョは、確かにその言葉できを止めた。

「ナイスバルク!!」

「どうしたの?」

「今のうちに押せ押せ!」

階層主(ボス)部屋の扉は重い。だが、確かにゆっくりと開いている。

「デカいよー! 筋以外見えないよー!!」

《お前上手いな!》

「今日もキレてるね!」

《あとしだ》

「そこまで絞るには眠れない夜もあっただろ!」

その聲に『紫鉄貝(シテツガイ)』は、その場でピシィッ! と音を立てるほどのポージング。

やった! アイツ馬鹿だ!!

「腹筋で大おろしたいよ!」

「ハヤト、開いた」

「筋がデカすぎて固定資産稅がかかっちゃうよ!!」

「開いたって」

「ん? お、おう。行くか」

ハヤトたちが階層主(ボス)部屋にるまでの間、『紫鉄貝(シテツガイ)』はポージングし続けていた。

ここで気になるのは『紫鉄貝(シテツガイ)』の見た目である。ダンジョンに現れるモンスターは全てそのエリアに相応(ふさわ)しい姿で出現するからだ。ならば、かのモンスターがここに現れる理由はただ一つ。

――鍛え上げた筋は蕓ということである。

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