《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-8話 決意の探索者!

「ご主人様とはどこで出會われたのでしょうか?」

モンスターと化したシオリに震えながらエリナが口を開いた。

「私たち“三家”に関連する家の子は小學校の時から一般人とは別の學校に行くんだよ。そして、徹底して神と専門教育を叩き込まれるの。だからそこで出會ったんだ。そうだよね? はやちゃん」

「そうだな」

「初めて出會った時ビビっと來たんだよ。『あぁ、はやちゃんは將來大になるな』って」

「言ってたな」

「それで私がごねてはやちゃんを許嫁にしてもらったんだよ」

「俺の人権は?」

「“三家”にれるならそれで良いじゃん」

「良い訳無いんだよなぁ……」

“天原”の家は“草薙”の家の分家。本家は元より、他の“三家”に対して頭が上がるはずもない。

「大、お前のせいで本家の連中に馬鹿怒られたんだぞ」

「あはは。ごめんねー」

軽っ!

そもそも三家同士、死ぬほど仲が悪いのだ。そんな中、別の家の者に手を出そうものなら手を出した方は命を失うことすら視野にれなければならないというのに、この余裕。次期當主の特権というべきか。

「ねえ、ハヤト。意味が一つも分からない。最初っから説明して」

「俺にはお前が俺を片手で持ち上げている方が意味が分からんよ」

「コツがある。ハヤトは誰にも渡さない」

「俺の人権は?」

「今のところ、無い」

《似たもの同士だな》

(……帰りたい)

《ここがお前の家だぞ》

(現実逃避くらいさせてくれよ……)

「あの、ご主人様。“三家”というのは?」

「あー。そうだな。どっから話すべきか……」

「最初からでしょ。“三家”の歴史はね、とっても古くて飛鳥時代にまでさかのぼるの」

「……本當に言ってるんですか?」

「うん。なくとも八璃(うち)の家系図はそこまで遡(さかのぼ)ってる。當時はまだ、大和の國は國としてとても脆(もろ)かったの。だから、代々優秀なものが國を率(ひき)いていく必要があったんだけど、ここまでは分かる?」

「はい。なんとか」

「おい、シオリ。お前もちゃんと聞いとけ」

《良いのか? 聞かせても》

(別に隠すような容じゃないから)

「でも、當時は學校なんて無いからほとんどの人は文字が読めないし、算數も分からない。だから、國の管理をするのが大変だったんだよ。それに、まだ國が一つじゃなかった。ここら辺は學校で習ったよね?」

「はい。一応」

エリナのことを中學生か、小學生だと思っているツバキはそれに合わせて解説をしていく。ここら辺は“三家”関係の家なら徹底して叩き込まれることだ。

「だから、大王(おおきみ)。あの時は天皇だっけ? まあ、とにかく“帝”に最も近く、そして各分野に最も秀でた者たちに“名”を與えて護國を任せたの。それが三家」

ツバキはにっこり笑ってそう言う。

「政治(まつりごと)を任された“八咫(やた)”。経済を任された“八璃(やさかに)”。そして、軍事(いくさ)を任された“草薙”。この三家が長くこの國を守ってきた。生まれた時から徹底して専門教育を叩き込むことで、青年期にはその道の専門家にも負けないだけの知識と技能を持ち合わせ、人すると護國のために働くの。それが三家」

「だから、ご主人様は……」

「うん。はやちゃんは“脳筋”の産まれだからね。強いでしょ」

「の、脳筋」

「“草薙”の蔑稱だよ。仲が悪(ワリ)ぃんだよ。三家(こいつら)」

「そ、そうなんですか!?」

「うん。はやちゃんの言う通りだよ。だって、我こそは“帝”に選ばれたっていう選民思想の持ち主だらけだもん。自分たちが最も優秀だと思って譲らないよ」

「その結果が前の戦爭だよ。バカバカしい」

三家全てが互いに譲れなくなった結果が先の大戦へとつながった。しかしハヤトは期から他の家が悪いんだと叩き込まれて育ってきているし、恐らく別の家も似たようなものだろう。

「ま、私はそんなの関係無いけどね。お金になると思ったら仲良くするし、ならないなら切り捨てる。みてよ、はやちゃんを。お金の匂いがぷんぷんするでしょ」

「《いや、しないけど……》」

わぁ。エリナとヘキサの聲が被(かぶ)ったぞ!

「ふふふ。それは見る目がないよ!」

「そ、そうですかね。でも、確かにご主人様はここ最近、お金持ちになられましたけど」

「でしょ? そろそろ巡(・)っ(・)て(・)き(・)た(・)ころだと思ってちょっと調べてみたらAランク探索者にも負けず劣らずの活躍! これはお金の匂いがぷんぷんだよ!!」

「俺、お前のそういうところ嫌いだよ」

「はやちゃんは強い人が好きなだけでしょ。戦闘狂(バトルジャンキー)だからね」

「そうなの? ハヤト」

喜々としてハヤトを覗き込んでくるシオリ。

「何でお前がちょっと嬉しそうにしてんだよ。天地がひっくり返ってもないから安心しろ」

「照れちゃって~」

「そのポジティブさは見習いたいよ……」

ため息をつくハヤト。

自分の周りにいるまともな人間がなくて頭を抱えたい。

ダイスケさんか咲さんあたりのマトモな人間に話を聞いてもらえればしは解決するかな? あー、でもダイスケさんはあんな目にあっても喜々としてダンジョンに潛ってるから論外だな。頭のねじが何本か外れてるわ。

なら殘るは咲さんか。

《消去法でを選ぶのは失禮だぞ》

(消去法っていうか、そもそも舞臺(ステージ)に上がれんだろ……。こいつら……)

「というわけで、はやちゃん。『D&Y』がスポンサーになってあげるよ!」

「嫌だなぁ……」

「どうしたの? 何か不満があるの?」

「だって、社長お前だろ?」

「うん」

「それだよ」

「またまた~。はやちゃんが探索者になった時に防と武を付けてあげた恩、忘れたとは言わせないよ?」

「……………………」

そう言われては何も言えなくなるハヤト。

そもそもハヤトが意地を張っているだけで、ツバキはダンジョンが出來た時にいち早くその儲け口を見抜き、會社を作りダンジョン関連の大企業へと長させた凄腕経営者である。

普通にスポンサー契約を結べば良いだけの話だ。

だが、

「人を金としか見てない奴に俺のスポンサーなんてしてしくないね」

「こんなアパートに住んでて?」

「良いの! ここが気にってるの!!」

「より良い生活はより良い住居からだよ。はやちゃん」

「もう良いから帰ってくれ。俺は探索で疲れてるんだから!」

「そういえば前線攻略者(フロントランナー)になったんだっけ? ああっと、そろそろ會議があるから私は帰るね」

ハヤトの意志は固いと知るやツバキは帰る準備を始めた。時は金なり。

今、かないならこれ以上滯在する意味もないと思ったのだろう。

「二度と來るなっ!」

ハヤトは塩の準備。魔を祓う時の鉄板アイテムである。

「んじゃ、また近いうちに會おうね」

「人の話を聞いてたか?」

「そうそう、その防似合ってるよ。ウチのデザイナーを褒めとくね」

「これお前んとこの奴かよ!」

それだけいい殘してツバキは帰っていった。會う度に疲れる奴だ。

「邪魔が消えた。はい、これ」

ツバキが部屋から出るのを見た後、シオリがダンボールを手渡してきた。

「ん? あぁ、ありがと」

どうせまともなじゃないと思うが、貰うだけもらっておこう。

「開けてみて」

「今ここで?」

「うん」

ハヤトはAmazonと書かれたダンボールを開けるとそこにっているのはSMプレイの首と手綱。

「これ、あげる。いつでも私を捕まえて」

「帰れッ!!!」

そう言ってシオリを叩きだしたハヤト。

「エリナ! 塩だ!! 玄関にありったけ撒くぞ!!」

「ほどほどにしておいてくださいね。けど……喋るだけでこんなに疲れるとは……」

「……決めたぞ、エリナ」

「どうされました?」

「こんな所に住んでられるか! 俺は引っ越すぞッ!!」

落ち著くはずの家が落ち著かないってどういうことなの……。

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