《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-9話 下見をする探索者!

引っ越すと言っても容易に行かぬのが親権者のいない者の辛いところである。しかし、ハヤトはここで一つの策があった。

《どうするんだ? 保証人》

「ダイスケさんに頼もうかと思って」

《ああ、良いじゃないか》

會う度(たび)にしいものが無いかと聞いてくるのである。ここいらで一つ、恩を返してもらおう。別に返してもらいたくて恩を売ったわけではないのだけれど。

「確かにダイスケさんなら不産屋さんもすぐにOK出してくれますよね!」

「まぁ『WER』日本3位だしCMにもバンバン出てるしなぁ……」

実は日本上位ランカーの中ではダイスケが一番CMやテレビに出ている。シオリもユウマもそう言ったものに無頓著であり、出たがらないので結局ダイスケが駆り出されるのだ。

中でもダイスケは探索者が“暴力的”、“犯罪者まがい”と言った世間の目をしでも変えるためにクリーンなイメージを目指して頑張っている。探索者が激しく叩かれないのはダイスケをはじめとする數多くの探索者たちの不斷の努力の賜(たまもの)なのだ。

「おっしゃ、そうと決まればさっそく連絡しよう」

《電話も無いのにどうやって連絡するんだ?》

「ギルドメールを使って」

《昭和かよ》

しかも自分の端末は無いので咲頼みである。

ダイスケからの返答はすぐに帰ってきた。「OK」である。

「いやぁ、まさかハヤトの方から俺に頼ってくるなんてな! 年長者として嬉しいぜ」

「肩バンバンするの止めてくださいよ……。痛いですって……」

「ハハハハっ」

何でこの人こんなに元気なんだろう。

「はやと、久しぶり!!」

「久しぶり、アオイちゃん」

休日のダイスケと一緒についてきたのはパパ大好きっ子のアオイちゃんである。ガタイの良いダイスケさんの肩に座ってやってきた。

《護庭十一番隊の隊長と副隊長みたいだな》

(分からんって)

《えぇ!? お前……流石に常識だぞ》

(いやいや……)

余談だが、ダンジョンが出來てからというもの漫畫、コミックやアニメの売り上げは跳ね上がった。それは一重(ひとえ)にスキルのせいである。

スキルの効果や形狀は本人の想像力に激しく作用される。その中において、最も影響を與えるのは當然、そういった類(たぐい)のものであった。特にジャンプ漫畫を代表とする年漫畫に影響をけた人間は數知れず。探索者の中には大真面目に技をパクってる人間もいるのだ。

アメリカではドラゴンボールやナルトの“技”をスキルで再現するYouTubeの畫が大人気である。男はいつまでたっても心は年なのだ。

しかも漫畫の効果は馬鹿にならず、探索者においては漫畫を読めば読むほど強くなれたりするので大人たちが大真面目に漫畫を読む會もあり、テレビにも取り上げられるほどになっているのだ。

と、こうなると調子にのるのが子供たち。勉強をさぼって漫畫、アニメを見まくる小學生が増えてニュースにもなった。両親が怒ると「探索者の勉強してるの!」と返され、始まるのは親子喧嘩である。

「聞いてくれよ、ハヤト。この間、YouTubeにあげた「火遁・豪火球の技」の畫が3億再生超えたんだよ」

「いい歳してなにやってるんですか」

「何言ってんだ。お前だって「螺旋丸」とか「千鳥」とか練習した口だろ」

「まあ否定はしませんけど」

天原の技で「千鳥」が出來ないかと大真面目に考えた。結局出來なかったが。

「お兄様って漫畫読めたんですか?」

「こっそり、な」

バレたらしこたま毆られたけど。

「大、ダイスケさんなら「影分」の方が割に合ってるじゃないですか。スキルもそう言ったじですし」

「あれは俺の切り札だからな。おいそれと公開なんて出來ねえよ」

二人が話しているのはダイスケの“覚醒”スキルのことだ。

「ま、立ち話もなんだ。そろそろ行こうや。家は大決まってんのか?」

「いや、まず件を見に行こうと思って不産會社に行ったんですけど門前払いでした」

「その年齢ならそうなるだろうな」

店員が冷やかしだと思って相手にしてくれないのだ。

「よし、じゃあ俺の知り合いがやってるとこあるからそこ行くぞ」

「そんなとこあるんですか? すごいっすね」

「パパは凄いんだよ!」

アオイの言葉にハヤトはしかと頷いた。

二人してたどり著いたのは街中の一等地にある不産會社。その中にダイスケは我が顔でっていった。

「いらっしゃいませ。……阿久津さま!? 本日はどういったご用件で」

「こいつの家を見に來たんだ」

そういってハヤトの背中をバンバン叩くダイスケ。

これ俺が前線攻略者(フロントランナー)だから耐えてるけど、普通の人間だったら背骨折れてんぞ。

「ではどうぞこちらに」

ダイスケの紹介ということもあって何一つ余計なことは聞かれずに席へと促された。

《信頼の力だな》

(あぁ。やっぱり凄いな)

頼って正解である。

「どういった件をお探しでしょうか?」

「妹と二人暮らしをするので、それなりの広さがあって、あとダンジョンから近いとベストですね。エリナはなんかある?」

「そうですね。エアコンがついていてコンロの口が二つ以上あるところが良いです」

家事をするのはエリナだ。彼の視點もあったほうが良いだろう。

「ハヤト、お前の家ってエアコンないのか……?」

「えぇ、まぁ」

「凄いな……」

《ガスコンロ一つだけなのに良くあそこまで手際良く料理作れるもんだ》

(私は奉仕種族(メイディアン)ですよ!)

うおっ。思考の會話にエリナが混じってきた。

「他に條件はありますか」

「防犯設備と言いますか……。不審者がってこないのが良いんですけど」

不審者というのはアレとアレである。

「でしたらオートロックのマンションが良いですね。家賃のご希はありますか?」

「うーん。相場がよく分からないので、大どれくらいが良いんですかね?」

「そうですね。一般的に給料の1/3の部屋に住むのが良いとされていますが」

1/3というと幾らだろうと思ってエリナを見る。

「経費を除くと大30萬くらいですね」

はえー、ということは俺っていま月100萬くらい稼いでるんだ。

全然実わかねえや。

それも全ては生活レベルのせいである。

「でしたら、ここの件はいかがでしょう?」

そう言って店員がタブレットに映したのは3LDKの部屋。

「こちらの家賃は25萬円となっております」

「に、25萬……」

め、眩暈(めまい)がしてきた。

「なんでそうなるんですか……。もっとしっかりしてくださいよ!」

「で、でも今のところの25倍だし」

「お前の家、家賃1萬なのか……」

した聲をあげるダイスケ。

「こちらは去年建てられたばかりの新築でして、中に防を手れできる部屋が完備されております。こちらがお部屋の裝ですね」

「うわぁお。めっちゃ綺麗」

「新築ですから」

タブレットをスワイプして寫真を見るハヤト。へぇ、ちゃんと武を置ける臺も置いてあるんだ。凄いな。

《いや、必要ないだろ……》

(男はこういうのでテンションあがるもんなの!)

《そうかぁ? まあ、そう言うならなにも言わないけど》

「ここってダンジョンまでどれくらいですかね」

「ダンジョンまでですと徒歩で15分、自転車は5分ほどですね」

「じゃ、今のところとそんなに変わらないのか。どうする、エリナ」

「実際に見てみないと何とも言えませんけど……二人暮らしで3LDKも必要ですか?」

「確かに」

置にすりゃ良いんじゃねえの。探索者としてやっていくなら荷も増えていくだろうし」

「なるほど。それもそうですね」

置というのは使わないアイテムの保管である。ハヤトはポーチに収まるだけしか持っていないが、これからはそうもいかなくなるだろう。必要な場所で必要な分だけを取捨選択しなければならないからだ。

「では、見されますか?」

「はい、そうします」

「車を用意しますので、々お待ちください」

そう言って外に出ていく店員。

「なぁ、ハヤト」

「なんすか」

「引っ越し(こういうこと)はもっと早く言えよ。お前の生活ヤバすぎだろ」

「アオイもそう思う!」

五歳児にそう言われてはお終いである。

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