《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-10話 平穏って良いよね!
四人は件の下見を終えてファミレスで晝食を食べていた。アオイはお子様ランチについてきた旗が自分の知らない旗だったので大喜びである。
あぁ、俺にもあんな純樸な時代があったんだなぁ……。
《お前は今でもピュアだろ》
(そう? 結構れちゃってると思うけど)
《…………》
「どうだった。あの家」
「結構良いと思うんですけど、やっぱり広すぎる気がするんですよね」
「贅沢な悩みだな」
「いやぁ、俺にはクローゼットくらいの大きさで十分ですよ」
ウォークインクローゼットが付いているのだがその大きさが今のハヤトの部屋をちょっと狹くしたじである。余裕で暮らせるね。
「エリナちゃんはどうだった」
「コンロがガスだったのがポイント高いです。あと三口(みつくち)なのは最高ですね」
「料理好きらしい言葉だな」
「トイレと風呂って別にする必要があります? 場所の無駄遣いですよ」
「多分、世の中全を見た時にハヤトと同(おんな)じ事いう奴は1%いないと思うぜ」
そう言ってステーキを頬張るダイスケ。私服が真っ赤で目立つものだから、先ほどから注目を浴びて仕方がない。その流れで自分も素がバレないかとハヤトは冷や冷やである。
「そんなもんですかね」
「他の件も見てみっか?」
「と言ってもあそこ以外だとダンジョンから急に離れるんですよねぇ」
この街はダンジョンを中心に作られている街であり、全てはダンジョンを中心に回っている。だから、件もダンジョンに近づけば近づくほどに人気なのだ。激しい探索を終えたあとは疲れ切ったで帰るまでになるべく時間かけたくないと思うのは人の(さが)だろう。
「ま、近くは人気だからしゃーねえよ」
ダイスケはそう言ってメロンソーダを飲み干した。好が子供っぽい人である。
「あそこにすっか?」
「そうですね……。別に家賃が払えないわけではないですし」
ちなみにだが、探索者は非常に家が借りにくい。理由は単純で、死ぬからだ。そうなると、大家としても安定的な収が見込めなくなるので進んで貸したがる大家はいない。しかし、ここ最近は國が探索者関係の制度に力をれ始めているため、そういった現狀も解決しつつあるのだ。
けれど、ここまでスムーズに探索者であるハヤトが見を終わらせることが出來るのはひとえにダイスケのおかげだろう。持っててよかった人のコネ。
「じゃ、そこでいいじゃねえか」
「ですね。そうします」
「なんだか男の人同士の會話ってじですね」
「ははは、よく分かってるな。エリナちゃんも」
「パパ、これあげる」
「ん、ありがとう」
そう言ってアオイがダイスケにポテトを一本渡す。
「これは、ハヤトの。こっちはエリナお姉ちゃんの」
そういってお子様ランチについてきたポテトを一本ずつ手渡すアオイ。
「ありがと」「ありがとうございます」
……ん?
「ははは、エリナちゃんはお姉ちゃんだけどハヤトは呼び捨てなんだな」
「俺なんかしましたっけ?」
「何もしてねえからだろ」
「ぐう」
ぐうの音も出ないとはこのことだ。
「じゃ、飯食ったし戻って契約するか。今日決めていいのか?」
「なるべく早くが良いですね」
アレとアレの被害を最小限に抑えたいのだ。
「じゃ、これから契約しにいくか。今んとこの大家とは話し合ってんの?」
「いや、何にも言ってないですけど。多分、大丈夫です」
「そうか。なら出ようぜ」
「ごちそうになります」
「……だんだん後輩力付いてきたな。お前」
「そうっすか?」
かくして四人はファミレスを出て、再び不産會社に向かったのだが、アオイが途中で寢たのでダイスケが抱きかかえて歩くことになった。
「アオイちゃんはお父さん大好きなんですね」
「ほとんど家にいないからな。休みの日くらいは付き合ってやらねえと、可哀想だろ」
「……ですね」
「それに、いつ死ぬかも分からねえし」
「…………」
それは、前線攻略者(フロントランナー)として當然の心構えだろう。殉職率が10%を超える過酷な世界で2年間生き延びたからと言ってそれから先、生き延びれるかどうかの保証なんて誰もしてくれないのだから。
「だから、その時は頼んだぞ。ハヤト」
「何で俺なんすか」
「そりゃだってお前……久我に務まると思うか? 今日もライブ行ってんだぞアイツ」
「良いじゃないすか、人の趣味なんだから」
「ライブでグッズを大人買いするんだぞ。しかもそれだけじゃ飽き足らず「ヴィクトリア」から暇な奴連れて毎回3セット買ってるんだからな」
「……あの人、そんなことしてるんですか」
大人げないというか、なんというか……。
「公私混同しないだけマシだけどよォ。今日、両手でサイリウム振れないつってクソ落ち込んでたんだぞ。そんな理由であんなに落ち込む奴初めて見たわ」
あぁ、俺の中で久我さんのイメージが崩れ去っていく……。
真面目で理知的なイメージが……。
《ドMだろ? 見た目通りじゃないか》
(どういう評価してるんだ。ヘキサ)
「んじゃ、書類書くかぁ……」
「嫌そうな聲出しますね」
「クランでも死ぬほどハンコ押すからなぁ。ハヤト、俺の代わりにハンコ押すバイトしねえか」
「嫌ですよ……」
サインじゃないだけマシなのかもしれない。
「アオイちゃんは私が預かりましょうか?」
「そうだな。子供の扱いは男よりもの子のほうが長(た)けてるし。ただ、ちょっと重いぞ?」
「大丈夫です。子供を落とすようなことは絶対致しませんから」
(……奉仕種族(メイディアン)って子供の世話も出來んの?)
《みたいだな。凄いな、奉仕種族(メイディアン)……》
ダイスケからアオイを預かったエリナは見た目からは想像できないほどの力でしっかり抱きかかえるとほどよく揺すり始めた。
それからの作業は大、一時間ほどで終わった。このまま何事もなく進めば一週間後には引っ越しである。と言っても荷らしい荷も無いので、ほとんどそのまま移するだけだ。
「じゃ、困ったらいつでも呼べよ」
「ばいばい! またね!!」
ダイスケとアオイは近くを走っていたタクシーを捕まえて乗り込んで帰るらしい。ハヤトとエリナは見送りだ。窓の中から必死に手をばすアオイの手をエリナが摑んでばいばいしている。
「今日はありがとうございました!」
ハヤトはダイスケに向かって一禮。
「おう。エリナちゃんも馬鹿な兄貴を持つと苦労するだろ」
「それが良いんですよ」
「へっ。大人だねえ」
ダイスケはそういって笑うと、タクシーを進めた。ハヤトとエリナはそれを最後まで見送ると、アパートへと向かった。
「心が洗われるような一日でしたねぇ。ご主人様」
「ああ。やっぱり、子供って良いなぁ」
《おおい。お前のその発言は危ないぞ!?》
「何でだよ」
「そ、そうですよ! 流石に今の発言はやばいですよ」
「だから何でだよ……」
夕焼けのなか、三人の話題は次第に夕食のことへと切り替わっていくのだった。
じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
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