《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-13話 ランクアップの探索者!

「お疲れ様です」

「上はあっついですね……」

転移の部屋から出てきたハヤトを出迎える咲。もう秋も終わるというのに、先ほどまでの階層と比べればしむっとした暑さがある。

「25階層は冬でしたか?」

「ええ、さっきまで吹雪の中ですよ」

「凍傷は大丈夫なんですか?」

「多分、大丈夫だと思いますけど……まあ、治癒ポーションを飲めば治りますし」

「ですね。では鑑定しますのでドロップアイテムをここに」

「おっけーです。……と言っても冬だからそんなにないんですけど」

冬の25階層は「スノーラビット」や「スノーバード」などのモンスターが基本的な相手となる。このモンスターたちはが白ということで、雪に隠れており見つけづらいという難點があるのだ。そのため冬の場合は中々モンスターと戦えない。

「地図化(マッピング)はどこまで進んでるんですか?」

「半分ほど、ですかね。これが今日の書いた部分の地図です」

「はい。け取っておきますね」

地図は探索者たちが持ち込み、それをギルドが編集する形で発売されている。地図への恩恵の度合いによって後から謝禮が払われるという仕組みだ。もちろん、前線クランの中には自分たちだけで地図を作ってそれを攻略に用いているところもある。

咲は手際よくアイテムの清算を終えると、ハヤトはリーダーに探索者証(ライセンス)をタッチ。澄んだ電子音と共にハヤトの口座にギルドより今日の分の報酬が振り込まれる。

「ねえ、ハヤトさん。今日って何の日だか覚えています?」

「今日? いえ、何かの記念日でしたっけ?」

《咲とお前が出會った日とかじゃないのか》

(そんなシオリみたいなことしないでしょ……)

「今日は、探索者ランクと『世界(W)探索者(E)ランキング(R)』の更新日ですよ!」

「あぁっ!! 今日かっ!!」

探索者ランクと、『WER』。それら二つは探索者の実力を見極めるために使われる。

探索者ランクは適正階層を示すためのものである。例えば、25階層まで攻略が進んでいる今現在だと。

1~5階層:Eランク

3~9階層:Dランク

7~15階層:Cランク

12~20階層:Bランク

~25階層:Aランク

と言った合にギルドが指針を出している。だからと言って、別にこれを超えて攻略したとしても特に咎(とが)められることはない。ただ、ギルドより指摘されるだけだ。危険だから考え直せ、と。

これらを更新するために必要なのはモンスターを狩るか、攻略に貢獻すること。そういった諸條件を『日本(J)探索者(E)支援(S)機構(O) 』がポイントを割り振り、本部である『國際(I)探索者(E)支援(S)機構(O)』が全世界の探索者の格付けを行っているのだ。

では、『WER』とは?

これはアメリカのとある格付け會社(S&P)がアメリカ政府への提供ということで初めた代だ。元々は1000位までのランキングだったのだが、これがひょんなことをきっかけに去年末にどこかしらから流出。

それに目を付けた『IESO』のお調子者がこれを本格的にやったら面白いんじゃないかと言い出して、作られたのが『WER』である。ランク付けのためのポイントの大小でそのままランキングを出すだけだったのでそこまでシステム的に難しくないということも後押しする理由の一つになった。

『IESO』は、ランキングを出すことによって探索者同士の競爭を高めるという風に言っているが過激な競爭が死亡事故に繋がるのではないかと厳しく非難されている。だが、そうは言っても大部分の探索者は「ランキング」の導によって自分の位置が正確に分かると、割と肯定的だった。

まあ、探索者なんて頭のネジが數十本ぶっ飛んでいるような連中ばかりである。格付けなんて気にもしないのだろう。

「上がってましたか?」

「ふふっ、どう思います?」

「まぁ、流石に上がっていると思いますけど……」

前線攻略者(フロントランナー)に返り咲いたわけである。

これで上がっていなければどうやっても上がらないだろう。

咲はにっこり笑ってハヤトに片手ほどの大きさの箱を差し出してきた。

「おめでとうございます。天原疾人さん。あなたはDランク探索者からAランク探索者への昇格が認められました。これが、新しい探索者証(ライセンス)です」

そこにあるのは、Aランク探索者であるとをはれるだけの煌めく探索者証(ライセンス)がっていた。

「続いて『WER』ですが、348746位から1231位になりました。おめでとうございます!」

「…………せ、1231位……」

まさかの4桁代に突である。

7か國合計の數字と考えれば悪くない――どころか相當に良い數字である。

「國ランキングですと170位ですね」

「おおお……だいぶ上がったな……」

《大丈夫か? ランキングは公開されるんだぞ?》

(名前だけだし、大丈夫だって)

「そして、ハヤトさん。あなたはAランク探索者という世界に誇る素晴らしい人材となりました。その技を貴方の代で終わらせるのは國、ひいては世界の損失となります。よってここに後人を育てる義務が発生しました」

「……弟子育(バンド)システムですね」

「はいっ! 久しぶりに言ってみたかったんです。このセリフ!」

言いたい臺詞を言えたので、うきうきな様子の咲。

「古い探索者証(ライセンス)は預ければ良いんですよね」

「はい。こちらでリサイクルしますので」

ランクの昇降によって不要となった探索者証(ライセンス)はギルドが一度回収し、點検。その後、何も異常がなければ清掃と共に別の探索者へと引き継がれる。

「新しい探索者証(ライセンス)は今日から使えますよ」

「ありがとうございます!」

「それで、弟子育(バンド)システムに関してなんですが後日、講習が開かれます。都合の良い時間はありますか?」

「そうですね……。明日は……引っ越しなんで、明後日で」

「分かりました。あっ、そうだ。忘れていました。ハヤトさん、來週は何か用事がありますか?」

「用事? いや、特にないですけど」

「都でハヤトさんの表彰式をするので、是非けてきてしいとのことです」

「……なんの表彰式ですか」

「ええっと、數多くの前線攻略者(フロントランナー)を助けた功績と、DランクからAランクに上がった世界初めての探索者であるということと、一気に35萬位近くもランキングが上がったのでギネス記録に登録されるということで、それ全部合わせて「JESO(ギルド)」が是非とも表彰したいと」

「……サボるのはありですか?」

「うーん、探索者を続けようと思うなら止めといたほうが良いと思いますけど……」

(どう思う)

《ん。まあ、確かにお前の経歴だけ抜き出すと表彰に足るものだとは思うが……》

(“高原(たかはら)”の連中が何か考えているのか、それとも本家からの圧か)

《さてな、私はお前ほどお家事に詳しくないから何とも言えん》

(……行きたくねえなぁ)

「そうだ。ハヤトさん、誰を弟子(バンド)にするか決めてます?」

「いや、Dランク以下の知り合いっていないんですよ」

「なら、応募という形で良いですか?」

「はい、それでお願いします」

弟子(バンド)は師である探索者が選び、弟子となる探索者がOKを出してはじめて結ばれるが、中には自分の子供や人を弟子(バンド)にするという人も一定數いる。

だが、ハヤトにはそんな相手がいないので応募というハヤトに弟子にしてもらいたい人間が応募する形を取った。

これは弟子にする知り合いが居なくても弟子が出來るが、人気が無いと誰も応募してきてくれないという諸刃の剣みたいなシステムだ。まあ、あまりに人が來ないと流石にギルドが斡旋(あっせん)するが。

「すいません。ただ、ちょっと応募の時に條件を付けてしいんですが」

「條件?」

「はい。その條件は…………」

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