《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-14話 引っ越す探索者!
「Aランク探索者になったんですか!? お祝いしませんと! どうしましょう!? 今日がそうだと教えてくださればご馳走を用意しましたのに」
「良いよ。エリナが作ってくれれば何だってご馳走だから」
《お前よくそんなこと素面(しらふ)で言えるな》
「ほ、ほんとですよ」
そう言って照れるエリナ。可い。
「それでさ、表彰するから東京に行けって言われて」
「何でです?」
「日本(J)探索者(E)支援(S)機構(O)の本部が東京にあるから」
「えぇ! そうなんですか? てっきりこの街にあるもんだと」
「俺にもそこら辺はよく分からん」
扱い的にはギルドは『JESO』の支店扱いなのだろうか。ハヤトもそこら辺は良く知らない。
「というわけで服を新調しなきゃいけないんだよ」
「明日は引っ越し業者が10時に來て、家が12時に來て、ガス業者の方が14時に來られるので……。ええっと、電気はもう通すようになってるから……。15時くらいからはスーツを見に行く余裕があるかと……」
《と言っても持って行くのは冷蔵庫と料理道と服だけだろ? 30分で終わりそうだな》
「荷がなくて良かったよ」
《まったくだ》
「あっ、やっべ。雨樋(あまどい)に開けてたの忘れてた」
「何で開けたんですか?」
「雨水を使うため」
「…………」
《もうそこら辺は金を払って綺麗にしてもらったほうが良いだろ》
「住み慣れたこの家にも、今日でお別れか」
そういってハヤトはこの五畳半の狹い家を眺めた。
「五畳あるだけでもマシだったのかもな」
「えぇ……」
《それ以下はもう人の住む場所じゃないだろ》
「いや、都にはあるらしいぜ。三畳の部屋」
《どうやって暮らしてるんだ……》
「それで家賃はウチの6倍とか7倍だから、東京(あそこ)は異常だって」
「5人連続で自殺してるこの部屋も異常ですけどね。本當に何も無いんですか?」
「ないない。何にもね」
「本當なんですかね……」
ハヤトは防をハンガーにかけて干す。雪で濡れてびちゃびちゃだ。
「もうしすればご飯が出來るので待っててくださいね」
ハヤトは、この生活が終わることに対する寂寥(せきりょう)と、新たな家に移れるという喜びが混ざり合って溶けていった。
「ふぅ、一段落しましたね」
「意外と時間食ったな」
二人がいるのは新しい家のリビング。先ほど屆いたばかりのテーブルを挾んで二人は座っていた。
「しかし、リビングだけでこの広さか……。これトータルでどんだけあるんだ?」
すっかり変わってしまった部屋の広さに戸うハヤト。
「これだけ大きいとテレビも置けますよ! ご主人様!!」
「テレビかぁ。もう何年も見てないなぁ」
「そもそも“天原”の家ってテレビ見れたんですか?」
「NHKだけなら」
「はー。厳しいですね」
「寢ても覚めても訓練訓練&訓練だよ。頭がおかしくなりそうだった」
「どうします? そろそろスーツを買いに行きます?」
「そだな。そうしよう」
「それで、どこに行くんですか? オーダーメイドのスーツでも作るんですか?」
「いや良いって。どうせ、高いんだろ?」
「なら洋服の青山にでも行きますか。手ごろな価格のがたくさんそろってますよ!」
そんなこんなで二人は新しい家を後にした。
「お前、応募した?」
「あのAランク探索者の奴? いや、まだ」
彼がいつものように中學校に向かう途中、目の前の男子生徒二人がそんな會話をしているのを聞いた。
「めったにないぜ。こんなチャンス」
「それは分かってんだけどさぁ」
昨日、「日本探索者支援機構」から新しくAランク探索者になった者たちへの弟子(バンド)応募が公開された。今回、Aランク探索者になったのは15人。そのうちの半分である7人が育てる弟子を応募という形を取ることになったのだ。
全員が1人ずつ取ればそれで7人。今までで最多の募集人數だ。當然、応募が殺到した。探索者は花形職業。その中でもAランク探索者に育てられるということは急激に長できるということだ。
応募條件はいたって簡単。
健康的な14歳以上の男である。
何故、14歳なのか。これはシオリが事の発端(ほったん)を擔(にな)っている。彼が探索者として頭角を現しだしたのは一年半ほど前。まだギリギリ14歳の頃だった。そんな中で數多くのインタビューと共に年齢が大々的に打ち出されたため「JESO」もシオリだけの特例扱いにするわけにもいかず14歳からとなったのだ。
だが、彼(・)(・)はその話を初めて知った。それも當然。
彼の家にはテレビは無い。スマホも持っていない。
昨日も夜遅くまで年齢を詐稱している飲食店でアルバイトをしていたばかりだ。
「あーあ。俺もAランク探索者になりてえなぁ」
「お前がなったら秒で死ぬわ」
「ばっかお前。Aランク探索者になったらYouTuberになんだよ。楽して稼げるぜ」
「天才かよ」
意味のない會話が続けられていくのをじっと後ろで聞いていた。
世間話に疎(うと)い彼でも、弟子育(バンド)システムについては人並み程度に知っている。そして當然、自分がその條件を満たしているということも。もうそろそろ、將來の進路を決める頃になる。
三者面談の季節になると、彼はいつも心が締め付けられるような苦しみに襲われるのだ。
アル中になり生活保護で日がな一日酒を飲み、何かがあるたびに母に當たった父。それから逃げ出そうと彼を連れて家から出た母だったが、逃げ出した後新しい人をとっかえひっかえしている。
もう一週間も帰ってきていない。
ずっとこうだ。あと二週間くらいするとひどい香水の匂いと泥酔狀態で帰ってくるだろう。そうしてまた、どこかに行く。生活費なんて貰えない。あの母親が渡すわけがない。だからこうして働いている。
進路を考えられる悩みがあるだけ、羨ましいと思う。自分は高校に行けるような學力も、財力も無いのだから。
しかし彼は、ふとあることを思い出した。バイトの休憩中に先輩から教えてもらったことだ。あの「ヴィクトリア」と「戦乙’s(ヴァルキリーズ)」が壊滅の危機に瀕した際、助けにったあの探索者は中卒という噂があるのだという。
そうであるのなら、もしかしたら、自分も探索者としてならやっていけるのではないか。
(先生に聞いてみようかな)
そんなことを考えながら彼は校門をくぐった。
「ぜ、全然眠れん」
《ハヤトって枕が変わると寢られないタイプ?》
夜。寢相で落ちないようにと買ってきたダブルベッドに一人で橫たわりながらハヤトは天井に浮かぶヘキサと、窓の奧に輝く星々を見ていた。
「いや。そういうわけじゃないと思うんだが、まったくもって眠れん」
《新しい家だから張してるんだろ》
「明日講習會だから寢なきゃいけないのにぃ~」
《あーあ、悪循環ってるわ》
弟子育(バンド)システムの講習會である。朝の10:30に集合だ。
だから寢ないといけないという焦りがより一層、眠気を取っ払っていく。
《もう休んじまえよ》
「いやいや、流石に駄目だって」
と、眠くないのでヘキサと喋っていると唐突に扉がノックされた。
「あの、ご主人様。もうお休みですか?」
エリナだ。
「起きてるけど」
「……ってもよろしいでしょうか」
(なんかやけに遠慮がちだな)
《珍しいな》
「良いよ。あぁ、鍵は開いてるから」
「あの。その……」
扉を開けてってきたのは、パジャマ姿のエリナだった。左手にはペンギンのぬいぐるみを抱きかかえている。
「その……眠れないのです。ご一緒してもよろしいでしょうか……?」
恐る恐る聞いてくるエリナ。
それはハヤトの考えである「男七歳にして席を同じにせず」に抵してしまうと思っているからだろう。
「うん、良いよ。このベッド、無駄に広いから……」
《しっかり教えてもらえよ。ハヤト》
「……何を?」
《手取り足取り、しっかりな》
「だから何を?」
今日はまだまだ眠れそうにない。
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