《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-16話 胃痛の探索者!

電車を乗り継ぐこと15分。すぐに「日本(J)探索者(E)支援(S)機構(O)」へとたどり著いた。

「ハヤトさんは……6階ですね。ここでいったんお別れです」

「……じゃあ、次は帰るときですね」

「えぇ、また」

付で案された通りの場所に二人は向かう。そうして、彼らはエレベーターで別れた。

(……嫌すぎて吐きそう)

《何だ。今まで何ともないような顔をしておいて》

(……うぅ。気分が……)

このままエレベーターが事故って閉じ込められないかと願い始める始末である。しかし、エレベーターは人工。ハヤトの願いなぞ汲むはずもなく、淡々と6階についた。

(帰っていいかな)

《往生際が悪いぞ。さっさと行け》

(ぉぅ……)

生気のない返事を返し、のそりのそりと歩いていくと『天原疾人様控室』と張り紙が張られている扉があった。何だか天原のところだけ文字が大きいような気がしなくもない。

とりあえず、ノックを數回。返事が返ってこなかったので扉を開けた。

「やっほ~、はやちゃん。元気にしてたぁ?」

バァン!! とフロア全に響き渡るほどの轟音で扉を閉めた。

(……帰っていいかな)

《ううむ……。難しいラインだ》

こいつが居るだなんて知らないし、聞いてない。

「どうしたの? 部屋はここであってるよ」

「何でここにいる……ツバキっ!」

「だって、ランキング上がりすぎてギネス記録にのっちゃった人だよ? 會わないわけにいかないでしょ。ね」

そう言ってことりと頭を傾けるツバキ。

「ね、って言われてもなぁ」

「まま、りなよ。表彰は晝前からだよ。支援機構のトップが直々に表彰してくれるらしいから期待してな」

「代表って?」

「高原仁」

「仁おじさんか……」

ハヤトが天原の家に居た頃に何度か會ったことのある人だ。現“高原”家當主の弟である。この間まで警察の高をしていたような記憶があるのだが、今こんなポスト貰ってるのか。

「もしかしたら今日は草薙のお姫様が出てくるかもよ」

「……マジで言ってんの?」

草薙のお姫様。それは彼(ツバキ)と同じく三家の次期當主候補の一人だ。

にこにこと笑い顔を一つとして崩すことなくツバキは歌うように言う。

「はやちゃんは凄く運が悪いよ。脳筋一族は今とんでもなく面白いことになってるのに」

「どうせ面白くないと思うけど、一応どんなことになってるか聞いていいか?」

「えっとね、そもそも“草薙”のお姫様は、はやちゃんが絶縁狀態にあることを知らなかったの。それで、はやちゃんがこの間強いモンスター倒したでしょ? その後、高原から草薙に連絡がった。私はあんまり脳筋の分家事に詳しくないけど、どうして“天原”が“高原”の領分に踏みっているのかとお姫様は疑問に思って天原に尋ねたら、はやちゃんがいない、と」

「……それで?」

「お姫様、激昂だって」

そういってにこにこ笑い続けるツバキ。

「お姫様、はやちゃんを高く買ってたから」

「いや、サンドバッグだったぞ」

「ふふっ。はやちゃんは乙心が分かんないもんね」

「…………………」

絶対違うと思う。あれは毆りやすい玩(おもちゃ)扱いだった。

「それに加わるように“高千穂”の分家から、はやちゃんが倒したモンスターの分分析があがったの。それで、それが何だか滅茶苦茶強いとか何とかでお姫様はすぐにでも、はやちゃんを呼び戻すように言ってるんだよ」

高千穂の分家……?

あぁ、あの防衛省おかかえの研究機関か。

ハヤトが『忌の牛頭鬼《フォビドゥン・タウロス》』の素材を売り飛ばしたところである。

「でも、はやちゃんのお父さんって自分の決定を変えない人だからさ。お姫様の意思に反発しちゃって」

「おう」

あの親父のことだ。その姿が鮮明に思い浮かぶ。

「で、脳筋名のアレをやったらしいの」

「あれか」

武の一族において、意見が衝突した時の解決方法は一つしかない。

すなわち、

「それでね、お父さんボコボコにされたらしいんだ」

己が力を持って示すのだ。

「それじゃあウチの親父がただの馬鹿じゃん……」

「ね、面白いでしょ?」

「いや、一つも面白くない」

令和の時代になって未だに拳で決著つけてるあたり馬鹿だし、変な意地を張って絶対勝てない相手に挑んでいくのも笑えない。しかもそれ、絶対引いても大丈夫な狀況だったろ……。

「だから、はやちゃんをあの手この手で草薙に戻そうとするはずだから気をつけてね」

「何でお前はそんなに丁寧に俺に教えてくれるんだ」

「だって草薙に戻ったら、はやちゃんがお金にならないから」

「まあ、そんなとこだと思ったよ……」

だが、その報は信用に足るものだ。ツバキは金が絡まないと絶対にかないが、いたということはその報は真実ということ。なくとも、ツバキが信用に足る報だと思っていているということだ。

「どう? はやちゃん、今のうちに『D&Y』とスポンサー契約を結んでおかない? そうなったら公表するし、大々的に宣伝(CM)に使うから草薙としても天原にはれづらいと思うよ?」

天原は人知れず魔を狩る一族。人に知られてはいけないのだ。

「そうは言ってもさ……。俺、目立てないんだって」

目立ったら警察に掘り返されるかもしれないが、目立たないと草薙に放り込まれる。

完全に進退(しんたい)窮(きわ)まっている。

どうしたら良いの……。

「あのスキルの件でしょ? 大丈夫だって。よく似た別人にすればいいから」

「んなバカな……」

「私に任せてよ!」

「幾らとるんだ」

「はやちゃんが『D&Y(ウチ)』に來てくれるならタダでやってあげる」

「タダより高いは無いっていうぜ」

その瞬間、扉が數回ノックされた。

「天原様、お時間になりましたので行きましょう」

「ありゃ、時間切れみたい。じゃ、頑張ってね。はやちゃん」

「八璃(やさかに)社長!? 來られていたんですか」

その時、ツバキに気が付いた職員が驚きの聲を上げた。ツバキ、まさか無斷で侵してたのか……。

「うん。ちょっとね」

ツバキはそう言ってするすると部屋から出ていくと、最後にハヤトに投げキッスをして帰っていった。

いらねぇ……。

「こちらです」

そういって職員に連れてこられたのは、とある部屋の前。到底、表彰するような場所に無いように思われるが……。

(どう思う)

《スキルインストールに聞いてみろ》

狀況に合わせたスキルをくれるスキルインストールだが、うんともすんとも反応しない。

ということは何も無いの? 本當に??

「失禮します。天原様をお連れしました」

「どうぞ」

ガチャリと、扉が開かれ部屋の中にる。

そこに居たのは……出るわ出るわ。一騎當千の化けたちだ。

“高原”家から當主弟の高原仁が、

“高千穂”家から當主息子の高千穂大牙(たいが)が、

“天原”家から當主娘の天原天音が、

そして、

「お久しぶりですね、ハヤトさん」

和(にゅうわ)な笑みを浮かべた

“草薙”家の現當主の妻である草薙凜(りん)がそこにいた。

それだけでなく數多くの護衛と思われる連中が近くに立っている。馬鹿なことだ。護衛対象が何よりも強(・)い(・)というのに。

「あー、なんというか。俺、帰っても良いっすか」

《まさか、本家と分家がお揃いとはな》

“【韋駄天】【隠】【忍Lv1】をインストールできます。”

“インストールしますか? Y/N”

おせえよっ!!

とは言ってもパッシブスキルに文句を言っても仕方がないのだが。

「ふふっ。ハヤトさんも冗談を言うようになったんですね。そこにおかけください」

ハヤトの言葉を綺麗にスルーすると、凜はハヤトに席へ著くように促(うなが)した。

…………胃が痛い。

なんと評価してくださった方が500人を超え、ブクマが6000件を超えました!

ありがとうございます!

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