《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-18話 弟子と出會う探索者!
くぅ、と可らしくなったお腹にはれないでおこうと思い、ハヤトは尋ね返した。
「ギルド? ギルドに行きたいの?」
「はい! そうなんです!!」
この街でギルドと言えば間違いなくダンジョンにるあの建だと思うが、こんな時間に一どんな用事なのだろうか。
ぱっと見たじ探索者には見えないし……。
「ここからだと電車でちょっとだけど……帰る方向も一緒だし、途中までなら案するよ?」
「えっ!? 本當に良いんですか!? ありがとうございます!!」
はそういって深く頭を下げたとき、再びお腹が鳴った。
「……ご飯食べてないの?」
「……はい。その、お晝から……」
「これもなんかの縁(えん)だし、飯奢るよ」
「そんな……。見ず知らずの人にそこまでお世話になるわけには……」
「良いって良いって」
というじにハヤトは無理やり宥(なだ)めこんで近くのマクドナルドにった。
「支払いは俺が持つから適當に決めて良いよ」
「ほ、本當に良いんですか!?」
「もちろん」
《……ハヤト、この子は》
(あぁ、間違いない)
一目見た時から、同類の匂いがしていたから。
(昔の俺(貧困層)だ)
現在、日本には相対的貧困層に當たる人間が15%近く居るとされている。貧しい理由は様々だ。障害、病気、學歴の面での就職、その他様々な理由で満足な収が得られない人たちが8人から7人に1人という割合で存在しているのだ。
勿論、かつてのハヤトもこの中に分類される。
何よりも問題なのが、その貧困層の中に子供がいる場合である。子供たちは被害者だ。満足の行く教育が、常識が、そして報が與えられないからである。
そして、近年。子供たちの貧困は見えづらくなってきていると言われている。かつては服、あるいは栄養狀態でそれらを判別出來ていたの、安く購できるファストフードやファストファッションなどの臺頭によってそれらがかき消されている。さらにそれに追い打ちをかける様に、スマホの高所有率があげられる。
かつて、貧困層が手にらなかったそれは親が子供を心配し、ない収支をやりくりして渡すことがなくないのだ。
かつて同類だったハヤトですら、目の前にいたがもしスマホを使っていたならスルーしていたかもしれない。
技の発展は良い。
だが、それは救われるべき人たちを隠してしまうのだ。
「マックなんて久しぶりに食べます!」
「そうなの? まあ、俺も初めてなんだけど」
「えっ! そうなんですか? なんだか珍しいですね」
《マック派なんだ。マクドじゃないんだ》
と、どうでも良い事に反応するヘキサ。
今略稱がどうとかいる?
「どうしてギルドに行きたいの?」
「むぐっ、んっ! 呼ばれたんです!!」
「落ち著いて食べな。それで、誰から呼ばれたの?」
「ギルドからです!!」
ギルドから呼ばれる。それは一どういうことなのだろうか。
考えられる理由としてはいくつかある。
例えば、ランクアップによる表彰。あるいはランクダウンに伴う弟子育(バンド)システムの権利剝奪などは呼び出しを食らう場合がある。
だが、目の前のは表彰されるような探索者には見えないし、逆にランクダウンによって権利を剝奪されるような探索者には見えない。
ということは?
「私、選で選ばれて弟子(バンド)になるんです!」
「なるほど」
今回、ハヤトのほかに弟子を募集した探索者は7人。全員で何人取るのか彼は知らないがハヤトは一人だけにしている。
そういえば弟子(バンド)がそろそろ來る頃だったか。
普通、ギルドからの連絡はスマホに屆くのだがハヤトは持っていないため連絡が咲頼りになってしまうのだ。
「それで、誰の弟子になるかって聞いてるの?」
「はい! 聞いてます!」
「どんな人?」
「なんでも凄い強い人らしいです」
「まぁ、Aランク探索者だから、そうだろうね」
「それに加えてすごい人があるそうです」
「人が」
ということはハヤトは違うだろう。知り合いそんなにいないし。
は一生懸命にハンバーガーにかぶりつきながら、その師匠について教えてくれた。
「それだけ強い人なのに、全然が無いらしいんですよ。探索者さんはまみれだって聞いていたんですけど、全然そんなことないって教えてもらいました」
「へぇ……」
が無いとか聖人じゃないか?
到底、そんな人間が探索者をやってるとは思えない。
探索者なんて聖人の真逆にいる連中だ。
《數學用語だと対偶だな》
(分からんって……)
「探索者になるときに心配なことはある? 俺も一応探索者だから、心配事があるなら相談にのるよ?」
「“師匠”が凄いイケメンなんですよ」
「はぁ」
「んなの人をとっかえひっかえしてるって聞いたんです」
「ほうほう」
そんなやつ探索者の中にいたっけ?
《友達いないお前が探したところで當該人が出てくるわけがないよね》
(失禮な。ユイがいるぞ。ユイが)
たった一人の友達を誇らしげにしているあたりに友達がない人間の(さが)が出ているがそんなことは気にしない。
「それで、その……私、大丈夫かなって思いまして」
「何が」
「その“師匠”の側にいても大丈夫な見た目してるのかなって」
「あー。そういうこと」
貧困層の子供たちは、容姿はともかく服の様子などを気にする場合がなくない。これは人である以上、仕方のないことではあるが、貧困層の子供たちは貧困であることを“恥”とし、それを隠そうとするからだ。
と、思ったがこれは違うか。
単純に容姿の釣り合いの問題だ。
「あの、私はなりがそこまで良くないので」
合ってたわ……。
「そんなの気にしないと思うけどなぁ……」
「ほ、ほんとですか? どうしてですか??」
「あんまり、俺が探索者の常識を語るのもアレだとは思うんだけどさ」
「はい」
「探索者ってのは普通、防を著るんだよ」
「はい。テレビで見たことあります」
「だからさ、あんまりなりがどうとかって気にしないぜ」
「そ、そうなんですか?」
「おう」
「それなら一安心です」
そう言って安堵した様子を見せる。
「まぁ、俺の意見だけどな」
「探索者さんの意見です! 參考にします!!」
「ははっ……」
乾いた笑いを浮かべるハヤト。
「なぁ、その“師匠”とやらの寫真は持ってないのか?」
「ありますよ。ちょっと待ってください」
そう言ってボロボロになった鞄を漁り始める。
「んー。あれ? おかしいな、ここらへんにしまったと思ったんだけどなぁ……」
「見つかんないなら良いよ」
「でもすっごいイケメンだったんです」
「へぇ……」
そんなにイケメンなやつあの講習會にいたかな?
どいつもこいつもキャラが濃そうな見た目をしていたのでハヤトは関わり合いになりたく無いがあまり、常に無言を貫いていたし目も合わせなかった。
「ご馳走様でした!」
「ちゃんと食べれたか?」
「ごめんなさい。ご馳走になってしまって」
「いいよ。気にすんな」
自分が助けられると思って手を差し出しただけである。どちらかというと、自己満足に近い部類のものだ。決して手放しで褒められるようなものではない。
「じゃ、行こうか」
「はい!」
そう言って二人は改札で切符を買うと、電車に乗り込んだ。
「今日、泊まるところはあるのか?」
「ギルドが休憩所を貸してくれるそうです」
「そうか……それは、よかったな」
休憩所といってもソファがいくつかあるようなところである。確かに、この子の格ならあのソファでも十分、橫になれるだろう。
しばらくして、電車がいつもの駅に到著した。ハヤトは道案と町案を兼ねて、散歩するようにギルドへと向かった。
「ここだ」
「すみません。何から何までお世話になってしまって」
「良いって。気まぐれみたいなもんだから」
「そういえば、私名前を言ってないです」
「そういや、そうだな」
「私、朝宮(あさみや)澪(みお)って言います!」
「そうか、俺は天原……」
「ハヤトさん、ですよね?」
「……あれ? 俺自己紹介したっけ?」
「いいえ! 有名人だから知っているだけですよ!!」
「マジ!? それはヤバイッ!」
俺、実名報道までされているかも知れないの……?
「なんでそんなに焦っているんですか?」
「いや、こっちの話だ。……これから頑張れよ」
まだ新人探索者だが、これから先もしかしたら探索者としてハヤトの人生と再びわることがあるかもしれない。後輩になる人間の門出に対してどんな言葉を送れば良いのか分からず、月並みな言葉になってしまった。
「はい! ありがとうございます!!」
新人探索者のうち、8割はなんらかの理由で辭めていく。探索が辛い、キツい、思っていたよりも稼げない。重度の怪我を負ってしまった。その理由は様々だ。
だがしかし、今もダンジョンに夢を見る者たちは一向に減らない。テレビやネットで取り上げられる上っ面の探索者を見て、自分も一攫千金を狙いやってくるのだ。
「今日は疲れた」
《エリナに晩飯食って帰るって言ったっけ?》
「あっ」
《頑張れよ》
せっかく作って待ってくれているのだ。食べないという選択肢は存在しない。
「おはようございます」
「おはようございます」
翌朝、ハヤトも咲も、いつも通りの時間にいつも通り顔を合わせていた。
ルーティンの恐ろしさをじてしまう。
「ハヤトさん、ついに今日ですよね」
「今度はなんすか……」
もう表彰関係も“草薙”関係もこりごりだ。
「弟子(バンド)ですよ! 昨日、來られたそうです」
「あぁ、やっとですか」
澪も昨日來ていたし、弟子は昨日集合という連絡が伝わっていたのかもしれない。
「もう、ギルドには來られているのですけど、顔を合わせますか」
「早い方が良いですよね?」
「それは、まあ、そうですね。あんまり遅いと待たせちゃいますし」
「じゃあ、會います」
「連絡しますね……って、その必要はないみたいです」
「師匠!!」
ふと、咲の視線がハヤトの後ろに飛ぶと同時に聞いたことのある聲がハヤトに屆いた。
「……ん?」
「昨日はお世話になりました!!」
そういって深々と頭を下げる澪。
……なんとなくそんな気はしてたけど、やっぱりお前かーい。
「良いってそんなこと」
「あら、昨日のうちに出會われていたんですか?」
「ええ、ちょっと。々ありまして。なぁ」
ハヤトが聲をかけるが、澪はそんなことなど聞いておらず。
「私、私! こんなイケメン師匠の弟子になれるなんて、幸せ者です!!!」
と、ギルドに響き渡るほどデカい聲でそう言った。
(……昨日は普通に見えたんだけどなぁ)
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