《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-21話 攻略する探索者!
空気が読めないというか、読まないユイと一緒にってきたのは……戦乙‘s(ヴァルキリーズ)だ。
《大きな聲を出すな。雪崩(なだれ)が起きるぞ》
(……ん。悪い)
ちなみにだが、ユイ以外のメンバーとも一応顔見知りである。『招かれざる來訪者《イレギュラー・エンカウンター》』を倒した後の病室で全員出會っているからだ。
「あら、本當にハヤトくん? お久しぶりね」
「どうも……」
『戦乙’s(ヴァルキリーズ)』最年長のマホが挨拶してきた。ハヤトは年上に弱いので頭を下げる。最年長といっても17だが。
「あ、あの。あのときはありがとうございました!」
「どういたしまして」
さらに挨拶してきたのは重だったカオリだ。
ていうか君、14であの怪我負ったのにまたダンジョンに潛ってんの?
屈強な自衛ですらPTSDになったというのに。
《ま、前線攻略者(フロントランナー)だから》
(それでなんでも許されると思うなよ)
とはいっても神がぶっ飛んでないと前線攻略者(フロントランナー)が出來ないのも事実である。
「アンタも攻略中に吹雪に巻き込まれたの?」
「そう」
「そっか。一緒ね。ねえ、どこまで攻略進んでるの? 良かったら地図のり合わせしない?」
「ちょ、ユイさん!」
カオリから抗議の聲が上がる。
前線攻略者(フロントランナー)の中には地図を作ることで生計を立てているものもいるからだ。報は金になる。特に、生き死にが掛かったこんな場所では。
「別に良いぜ。隠すようなもんでもないし」
「ありがと。ハヤトならそういうと思ったわ」
「えっ、良いんですか!? ハヤトさんって太っ腹ですね」
「えぇ、地図だすだけじゃんか……」
どうした? 最近俺の流れが來てるのか?
《勘違いするなよ。相手は探索者だぞ》
(探索者を異常者みたいな扱いで語るのは失禮だぞ)
主に向こうに。
そして二人は暖爐の近くで地図をすり合わせる作業にった。
「ここにトラップがあったのね?」
「あぁ。落ち葉に隠れていたが落としだった」
「あっ、そこ道が違うわよ。こっちが正解」
「マジ?」
「ええ。私たちもその地図を參考にして迷ったもの」
「そこの空白地帯は斷崖絶壁になってて上がれないぞ」
「そうなの? じゃあ、攻略は後回しね。ここ道じゃなくて川だから気をつけて」
「おう」
ということでドンドン報の共有化を進めていく。
(これを數十人でやるんだから、クランは強いよなぁ……)
《數はそれだけで力だからな)
(地図化(マッピング)擔當に任せて攻略組はステータスあげれば良いんだし、攻略するってことに関しちゃ単獨(ソロ)のメリットってそんなにないし……)
ぶっちゃけるところ、単獨(ソロ)攻略のメリットは報酬を獨り占め出來ることと目立つことである。とは言っても、ハヤトは目立てないのでメリットを一つ殺しているのだが。
「カオリちゃんは諦めた方が良いかもね」
「うう……。ユイさん、完全に食獣の顔つきしてますよ……」
「まぁ、あれだけのことがあったんだし。仕方ないわ」
後ろでなにやら聲が聞こえる。
ユイが食獣?
さしずめ俺は無殘に狩られる草食獣か。
《そういうことじゃないと思うぞ》
(そうか? 俺は可そうなヌーだぜ)
《なんで草食でヌーをチョイスしたのか知らないが、ヌーはライオンに反撃するぞ》
(そ、そうなんだ……)
《あんまり狩られるだけの草食獣はサバンナにはいないイメージだな》
(じゃあウサギで)
《ウサギぃ!? お前があんなに可いなわけないだろ?》
(ヘキサってウサギ好きなの?)
《…………あぁ》
ヘキサの知らない一面を知ってしまった。
「ねえ、ハヤト。ちょっと、聞いてる?」
「ん? いや、ごめん。聞いてなかった」
「ここよ。ここ。ここに階層主(ボス)がいるんじゃないかって言ってんの」
ユイが指したのは25階層の北端にある一つのだった。
「ここって誰も奧までってないのか?」
「ええ。り口に祠(ほこら)があったって言ってたわ」
「中には?」
「怖いからやめたって」
「……なるほど」
25階層の「山岳」エリアは確かに日本の山みたいなじである。確かに、階層主(ボス)部屋の前に祠や、あるいはそれに該當するものがあってもおかしくはない。
「ここからだと距離的にはどれだけ離れてるんだ?」
「えっとね……大6kmよ」
「遠いな……」
普通の階層ならすでにエリア外である。
「とりあえず、行くだけ行ってみましょう。無理なら引き返せば良いし」
「あれ、ちょっと待って? 俺も同行する流れになってんの?」
「當たり前じゃない。ウチのクランは男手が足りてないのよ」
いやいや、高ランクの探索者に別とか関係ないから。
「ユイさんとんでもない理屈でハヤトさんを引き抜こうとしてますよ……」
「長い間一緒にいたいのかしら」
「そこうるさいっ!!」
「ごめんね〜」
謝るマホ。その顔には一つとして反省のは窺(うかが)えない。
「まぁ、この吹雪が止んだらな」
と、いった瞬間にピタリと風が止んだ。
「止まったわね」
「……………」
そんなことある?
「さ、行くわよ」
「おいおい、また吹雪(ふぶ)くかもしれんぞ」
「じゃあ、また季節が変わるまでここに待機するの?」
「そういうわけでも……」
「あれ? もういくの?」
「ねむーい」
と、今まで椅子に腰掛けて眠っていた二人のが目を覚ました。
「吹雪が止んだからね。あ、男手を捕まえたから荷持たせて良いわよ」
「ん? あっ、ハヤト君じゃん。いたんだ」
「久しぶり〜」
あーダメだ。名前が出てこない。こういう時は想笑いでごまかしておこう。
「手前がアヤネで、奧がミサキよ」
完全に心が読まれてる……。
というわけでアイドルクラン『戦乙‘s(ヴァルキリーズ)』5人と、荷持ち1人の即席パーティーがここに誕生した。
「えぇー! ハヤト君ってアイドルに興味ないの?」
「男の子ならみんな興味あるんだと思ってた」
しんしんと雪が降っている中、一行は6km先を目指して進軍である。その最中に、先ほど寢ていた二人組に絡まれた。
「俺あんまりテレビとか見てなくて……」
「私たちYouTubeにMVあげてるよ?」
「俺、YouTube見ないから……」
「えっ、じゃあ家で何してるの?」
「家で……家じゃ基本的に何もしてないかなぁ。飯食って寢てるだけだよ」
「趣味は? 趣味とかないの?」
「探索かなぁ」
「「ストイック〜」」
何これ。
《完全にギャルに絡まれるキャだな》
(……ギャルとか死語だぞ)
《噓……だろ…………》
殘念ながらマジである。
「あの、アヤネさんもミサキさんも、ちゃんと後方確認してくださいね」
とカオリがちらちらとユイの顔を見ながら仕事をちゃんとするように注意。
あー。あいつ真面目だし仕事サボってたら怒りそうだな。
「大丈夫だって。取らないから」
「うん。そうだよ。ユイちゃんの獲だし」
獲つってんじゃねーか!!
《哀れなハヤト。お前のことは忘れないよ》
(諦めるのが早すぎる)
もうちょっと粘れよ!
お前は俺の救いと違うんかい!!
「……熱くなってきたわね」
「いているし」
雪山は寒いように思われるが、防寒をしっかり著込むとそれなりの場所に行かない限り段々と熱くなってくる。熱くなった時に上をぐと全から湯気があがるのでギア2ndごっこが出來ちゃうほどだ。
足元が最悪ということもあり、6kmを踏破するのに三時間もかかってしまった。時折、いくつかの戦闘を挾んで目的の場所に到達である。
「これが、祠か」
「ずいぶんと古いわね」
「ちょっと怖いです……」
窟のり口ということもあり、たしかに何か出そうな雰囲気はしている。
ここまで來た探索者が逃げ帰ったというのも納得だ。
「……祠っていうのはさ」
「どうしたの?」
「神様を祀(まつ)るものなんだが、そもそも神道の神様って二面があんだよ」
「そうなの?」
「ああ、溫厚な和魂(にぎみたま)と災禍(さいか)をもたらす荒魂(あらみたま)の二つだ。この祠は……よく見てねえからよく分からんが、十中八九後者を祀ったものだろうな」
「詳しいわね」
「まあな」
人に仇なすものを魔と呼ぶのなら、荒ぶる神々を鎮(しず)めることもまた、天原の仕事である。
「どうする? 進むか?」
《私は反対だ。25階層の階層主(ボス)は24階層から順に上がった強さではない》
(そこら辺は戦ってみて決めても良いんじゃねえかな。最悪の場合、『転移の寶珠』がある)
「ま、ここまで來たんだし。覗いてみてもいいんじゃない?」
「うん。ユイちゃんの言う通りね」
「見てみるだけなら……」
「行こう行こう!」
……すげぇ。誰からも反対意見が出ねえ。
「じゃ、行きましょ」
「まだ階層主(ボス)が出るって決まったわけじゃないけどな」
「それもそうね」
ということで窟を奧に進んでいくと20mも歩かないうちに巨大な扉に突き當たった。
「……出るんかい」
「もしかして、私たち1番乗り?」
「すごいじゃん! 『ヴィクトリア』にドヤ顔しよー」
階層主(ボス)部屋の前だってのに能天気だな……。
「開けるわよ」
「念のため、開けっぱなしにしておこう」
ヘキサの言葉で用心をしているハヤトがそういうと、皆が頷いた。
中はとても広い円形狀の部屋だった。直徑は50m、いや70mはある。天井は暗くなっており、部屋の高さは窺えないがそれでもかなりの高さを持っていると思って良いだろう。
6人が部屋の中心にたどり著いた瞬間、天高い暗闇から階層主(ボス)が落ちてきた。
ドンッ! と著地したのは5mの巨。
「……おいおい。冗談だろ」
そのモンスターを初めてみる5人は絶句。一人、それを知っている天(・)原(・)は乾いた笑いをあげた。
人並外れた巨軀に、負けず劣らずの巌(いわお)のような筋。局部を隠す布切れは虎の柄。異常に発達した牙が口に納まりきらずに溢れ出している。その額には二本の角。は赤。
「『赤鬼』かよッ……!」
ハヤトの言葉に呼応するように、
「ウォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッツツツツ!!!!」
伽噺の“魔”が吠えた。
- 連載中223 章
【書籍版4巻7月8日発売】創造錬金術師は自由を謳歌する -故郷を追放されたら、魔王のお膝元で超絶効果のマジックアイテム作り放題になりました-
書籍版4巻は、2022年7月8日発売です! イラストはかぼちゃ先生に擔當していただいております。 活動報告でキャラクターデザインを公開していますので、ぜひ、見てみてください! コミック版は「ヤングエースUP」さまで連載中です! 作畫は姫乃タカ先生が擔當してくださっています。 2021.03.01:書籍化に合わせてタイトルを変更しました。 舊タイトル「弱者と呼ばれて帝國を追放されたら、マジックアイテム作り放題の「創造錬金術師(オーバーアルケミスト)」に覚醒しました -魔王のお抱え錬金術師として、領土を文明大國に進化させます-」 帝國に住む少年トール・リーガスは、公爵である父の手によって魔王領へと追放される。 理由は、彼が使えるのが「錬金術」だけで、戦闘用のスキルを一切持っていないからだった。 彼の住む帝國は軍事大國で、戦闘スキルを持たない者は差別されていた。 だから帝國は彼を、魔王領への人質・いけにえにすることにしたのだ。 しかし魔王領に入った瞬間、トールの「錬金術」スキルは超覚醒する。 「光・闇・地・水・火・風」……あらゆる屬性を操ることができる、究極の「創造錬金術(オーバー・アルケミー)」というスキルになったのだ。 「創造錬金術」は寫真や説明を読んだだけで、そのアイテムをコピーすることができるのだ。 そうしてエルフ少女や魔王の信頼を得て、魔王領のおかかえ錬金術師となったトールだったが── 「あれ? なんだこの本……異世界の勇者が持ち込んだ『通販カタログ』?」 ──異世界の本を手に入れてしまったことで、文明的アイテムも作れるようになる。 さらにそれが思いもよらない超絶性能を発揮して……? これは追放された少年が、帝國と勇者を超えて、魔王領を文明大國に変えていく物語。 ・カクヨムにも投稿しています。
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