《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第2-27話 スキルを覚える探索者!

「よし、じゃあ今日こそ一階層の階層主(ボス)倒しちゃおうか」

「せ、一杯頑張ります!」

も屆き、武も手にして完璧な狀態となった澪はそう言って構えた。澪が弟子になって一週間。ハヤトとしても、これ以上この階層に時間を使いたくない。

今まで武を握ったことのない普通のだとしても流石に一週間も潛った甲斐もあり、探索者の基本的なことはについてきたのではないのだろうか。ただ、やっぱり持ち前の運神経などは一朝一夕でどうにかなるようなものではないので、こればっかりは慣れてもらうしかない。

「次の階層主(ボス)戦じゃ、俺は助けにらない」

「えっ!? なら私はどうすれば良いんですか!」

「……澪がダンジョン攻略を仲間とするつもりなのか、それとも単獨(ソロ)攻略者になるのかは分からない。だが、一階層の階層主(ボス)くらいは一人で倒せるようになっておいたほうがいいだろ」

「で、でも……」

「不安なのはわかる。最初は誰だってそうなんだ。けど、ダンジョン攻略にその不安は常について回ることになる。だから、今のうちにそれは慣れておくしかないんだよ」

「うぅ……。分かりました……」

「いいか、澪。結局のところ、自分を助けられるのは自分だけだ。他人は誰も何もしてくれない。だから、努力をすべきなんだ。分かるか?」

「頑張ります……」

流石にここまで言えばハヤトの言いたいことも理解してくれたようで、澪は恐る恐ると言った合に深く頷いた。

「じゃあ、行こうか」

「……はい」

そして二人は階層主(ボス)部屋の前へとやってきた。今日も今日とて一階層の階層主(ボス)部屋の前には列ができていた。

「師匠は……」

「うん?」

その最後尾に並んだ時、澪は張をほぐすために口を開いた。

「師匠はあのゴブリンに一週間かかりましたか?」

「…………あー」

《正直に言ってやれ。下手な同などするなよ》

ここはヘキサのアドバイスに従おう。

「俺は5分で抜けたよ」

「うぅ……。私、やっぱり才能ないです……」

「……なぁ、澪。才能って本當にあると思うか?」

「ふぇ?」

「それって、努力で乗り越えられるものなんじゃないのか」

「それは……」

「才能なんて言葉にすがるのは逃げだ、澪。まだ一週間、何も分かんないだろ?」

「確かに師匠の言う通りです! なんだかやる気が出てきました!!」

「ははは。それはよかった」

《発破をかけるために思ってもいないことをいうのはどうかと思うぞ》

(必要悪だ)

才能は有る。

なくともハヤトはそう思っている。それは彼が天原にいた時に痛していたことなのだから。

なぜ、弟はあんなに簡単に技が使えるのだろう。なぜ、妹はあんなに簡単に技が使えるのだろう。どうして、父も母も弟も妹も當たり前に持っているものが自分にはないのだろう。その悔しさを噛みしめながら生きてきた。そして多分、これから先も。

「あっ、師匠。空きましたよ!」

「行こうか」

「はい!!」

部屋の中にると部屋の真ん中にゴブリンが召喚された。

「落ち著いていけ」

「はいっ!!」

ゴブリンは疾走。醜悪な見た目をした小鬼が走ってやってくる。流石に二度目となれば慣れて対応できるというものか。澪はそのゴブリンとすれ違うようにして一閃。右の腹部を深く切り抜いた。だが、大人の力なら決著となったそれはの力で屆くことは無い。

だから、

「セイッ!!」

はその場で踏ん張るとグルンと剣を遠心力に乗せてすれ違ったばかりのゴブリンの後頭部に叩きつけた。

だがそれは當たりどころが悪かった。ゴブリンの頭蓋骨の丸みによって刃がり澪は數歩だけ、たたらを踏んだ。

「…………」

《そわそわしすぎ》

(だって……)

《もっと自分の弟子を信じろ》

それは“師”としてのアドバイスだろうか。

澪の空いたにゴブリンは蹴りをれた。

「きゃっ!!」

勢いを殺し切れずに後ろに倒れるが、右手に握っている剣は手放していない。その長に思わずハヤトは微笑む。びている。間違いなく。

倒れた澪に追撃を仕掛けようとしたゴブリンは、しかし己の首に剣が突き刺さっていることに気がついた。

……澪がったのだ。

そして、絶命。黒い霧になって後にゴブリンの魔石を落とした。

「た、倒しましたよ! 師匠!!」

「よくできたっ!!」

「もっと褒めてください!」

「よしよし、可い奴め〜」

「ふへへ。師匠に可いって言われました〜」

ハヤトはしばし、澪の頭をでると、後続の邪魔にならなように二階層へと向かった。

「この階段を降りた先が2階層だ」

「に、2階層にもスライムって出てきますか?」

倒し慣れたモンスターが出るほど安心できることは無い。そう思っての質問だろう。

「まあ、出てくるには出てくるけどほとんど出ない。主な敵はゴブリンだな」

「ご、ゴブリンですか……」

先程、自分が一生懸命倒した敵が主な敵と聞いて澪の顔は暗い。

懐かしい、ハヤトも違う意味で顔を暗くしたものだ。

「大丈夫だ。すぐになれるさ」

そういって2階層につながる扉を開いた。そして、そこで一旦立ち止まると、扉の隣に埋まっている寶珠を指差す。

「これにったらギルドに戻れるから」

「ここら辺の仕組みは1階層と同じなんですね」

「25階層までこれだよ」

「そ、そうなんですね……」

ちょっとがっかりした様子を見せる澪。もしかして、楽しみにしてたのかな。それならちょっと悪いことしちゃったな……。

「階層主(ボス)のゴブリンは一だったが、それは奴らの本領じゃない」

ハヤトは歩きながら澪に解説。彼からすると家の近くを散歩しているようにのほほんとしたじだが、初めて潛る澪はおっかなびっくりといった合に進んでいる。その新鮮な様子がおかしくも、そして懐かしくもあった。

「奴らが怖いのは數だ。基本的に4か5のパーティーで行しているからな」

「あ、あれが5も……」

「あぁ。だがどんな時も基本は変わらない。敵が複數出てきたら?」

「各個撃破、です」

「そうだ。とは言っても難しいと思うからこればっかりは慣れるしかない」

そう言いながら、角を曲がった時目の前に5のゴブリンがいた。

「ちょうどいい」

そう言ってハヤトは素早く槍をかした。まず、至近距離の一の頭を砕くとそのまま橫に。ダンジョンの壁にゴブリンを叩きつけ両斷。こちらにやってきたゴブリンを蹴り飛ばし、その開いた口に槍を叩き込む。

「じゃあ、殘り2をやってみろ」

「えっ? えっ? 師匠、今何やったんですか?」

まだまだ新米の彼の目では前線攻略者(フロントランナー)のきは捉えられないだろう。

「いや、突いて薙いで蹴っただけ」

「分かんないです!」

とか言いながらも澪は一番近いゴブリンの足を切りつけて行不能に。先程の反省を生かして頭ではなく、に向かって剣を振り下ろすと両斷。ごとり、と頭が地面に落ちると黒の霧になって消えていく。

余っていた1はハヤトを襲うか澪を襲うかわずかに悩むと澪を選択。まぁ、生き殘るにはそれが一番賢い選択肢だろう。だが、それが正解だとは限らない。

「せい!」

澪はやってきたゴブリンの元に剣を突き刺すとそのまま薙いだ。ゴパッ、とがダンジョンに溢れ出し辺りを赤く染めるがゴブリンが絶命すると同時に黒い霧として消えていく。そして、そこに殘ったのは明に煌く寶珠。

「師匠ー! なんか綺麗な珠が落ちましたよー!!」

それを手に取って持ってくる澪。

「……スキルオーブだ」

「え?」

「これスキルオーブだ!!」

《あっ、ほんとだ》

「スキルオーブってなんですか?」

「説明しよう! スキルオーブとはスキルを覚えられる寶珠のことだ!!」

「ほ、本當ですか?」

スキルと探索者は切っても切れない関係にある。理法則を無視したそれらは數々のテレビやネット畫で世界に拡散されているからだ。

だがそれよりもこのスキルオーブが注目されるのは他でもない。

出ないのだ。この珠は。

あまりにもドロップしないため統計データを取ることもできない。どのモンスターからどんなスキルがドロップするのかも分からない。そのため、このスキルオーブには數百萬、數千萬という値段が付くのだ。

「このスキルオーブは澪のものだ」

「ほ、本當に!? 使っていいんですか?」

「けど、ちょっと待ったほうが良いかな。鑑定に掛けてからだな」

「どうしてです?」

「例えば、このオーブが澪が覚えても使いようのないスキルだったとするだろ?」

「はい」

「そしたらこれを売って別のオーブを買うことができるんだ」

「な、なるほど! 頭いいです! 流石師匠!!」

「いや、最初のガイダンスで言われてるから……」

もしかしてガイダンスの話聞いてないのかな。

「なら、一旦帰ったほうがいいですね!」

「そうだな」

”【鑑定】をインストールします“

”インストール完了“

……お前、鑑定スキルインストールできるんかい。

今までそういった系統のスキルを一つとしてインストールしなかったので勝手にできないものだと思っていた。

「……ちょっと見せてくれ」

”【紫電一閃】のスキルオーブ“

”スキル【紫電一閃】は攻撃技のスキルです“

あぁ、後半は知ってるから表示しなくて良いよ。

“怒(おこ)”

怒って……。

まさか鑑定スキルから返答が返ってくるとは思わなかったが無視して澪に促した。

「あぁ、使っていいぞ。澪」

「えっ、さっきの売るっていう話は?」

「無しで」

「はいっ!」

ハヤトの言葉に言うが早いか澪はスキルオーブを手に取った。

「これ、どう使えばいいんですか?」

「手に持って使おうと念じたら使えるよ」

「なんかんだほうがいいですか?」

「……なんで?」

「いや、かっこつくかなって」

「まぁ……。びたいならんでいいんじゃない?」

ぼうが、ばまいが別にスキルの効果が変わるということは無いし。

とは言っても探索者の中にはロールプレイを楽しんでいる者も多く、そういった人はそのキャラに合った雄びとともに使ったりするのだ。

「使いますっ!!」

そう言って澪はスキルオーブを天高く掲げた。摑んでいる手が輝き、側から白を基調とした7が溢れ出すとともにスキルオーブが々に砕け散る。は澪のに吸い込まれた。

「……わ、分かります。使い方が、手に取るようにッ!」

「お、どうした?」

ロールプレイでも始めたか?

「……師匠。“覚醒”スキルを使えるようになるにはどれくらいかかりますか?」

だが澪はハヤトの考えとは裏腹にそんなことを尋ねてきた。ハヤトはわずかに逡巡すると、彼に間違いを教えないように考しながら口を開いた。

「俺よりダイスケさんとかシオリに聞くのが良いと思うが、人による。それが本人に合ってるか合ってないか。全てそれに盡きるな」

「師匠! 私はこのスキルを“覚醒”させてみますよ!!」

「ははっ。急にやる気になったな」

【紫電一閃】

それは高速で移しながら攻撃するスキルである。最も汎用に優れたスキルであり、このスキルの覚醒者は世界に5人。

全ては澪の想像力次第である。

「頑張れよ、澪」

こればっかりは彼が教えることはできないのだから。

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