《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第9-7話 始する踏破者!
「くなよ! 絶対にそこからくなよ!!」
「は、はい!」
「フリじゃねえからなっ!」
なんか最近似たようなやり取りやったな、と思いながら俺はルネをその場にとどめた。ルネの全は真っ赤な果を浴びてしまったせいで、全まみれみたいになっているが特に神に影響が出ているようには思えない。
自分の毒は自分に効かないというやつか。もしかしたら、いつも自分に都合の良いことを考えているから影響が出てないのかも知れない。
「これ、千切れば良いんだろ」
ハヤトはルネの首回りに生えている花弁を手に摑んで思いっきり引っ張った。
「痛い痛い痛い!!」
「うーん……」
予想以上に痛がったため、ハヤトはぱっと手を放した。
どうしよ……。これ……。
「大丈夫ですよ。ご主人。私、これからずっとここで暮らしていくんで……」
「珍しくネガティブなこと言うなぁ……。千切っても取れないってことは……除草剤とか?」
「私を殺す気ですか?」
「あー。やっぱそうなるよなぁ」
結構マジな返しをされてしまった。
「けど、お前ここにいたらいつか探索者に狩られちまうぜ」
「……ん。それは……そうですけど……。外に出た方がヤバいですし……」
ルネもだいぶ困っているようで顔をしかめた。
《解毒薬は?》
(解毒薬?)
しかし、ヘキサはあることを思いついたのかハヤトにそんなことを言って來た。
《そうだ。花の狀態が狀態異常なのだとしたら、解毒薬で解除されるんじゃないか?》
(なるほど。その説があるか)
《ああ。試してみる価値はあるだろう》
ということでハヤトはアイテムボックスから解毒ポーションを取り出すとルネに手渡した。
「なんです、これ」
「解毒ポーション」
「……いただきます」
特に説明をしなかったのだが、ルネはすんなりけ取ってくれた。そして、一気飲み。ぐいっと音を立ててポーションの空き瓶を手にもったまましばらく立ち盡くしていると、首周りに生えていた赤い花弁の殘りが急速に枯れ始めた。
「お!?」
そして、そのまま朽ちた。
「「おおっ!!」」
2人は大喜び。
「や、やった! 治りましたよ!!」
「それは……良かったんだけど。お前、何やったんだ?」
「何やったってどういうことです」
「いや、狀態異常にかかるって何かやらかしたんだろ? 変なモンスターに攻撃食らったのか、それとも変なものでも食べたのか」
「何ですか変なものって。犬じゃないんですから食べませんよ」
ルネは不服顔。
2人は外に出るために65階層の階層主(ボス)部屋に向かった。り口に戻るよりもモンスターを倒した方が速いと思ったからだ。
「あ、でも。もしかしたらあれかもしれません」
「心當たりあんのかよ……」
し呆れるハヤト。
「あの、お嬢が月刊『テイマーの會』を定期購読してるですけど」
「……何その雑誌」
需要あんの……? いや、あるから発行されてるのか……。
てか澪(あいつ)そんな雑誌買ってたのか。真面目かよ。
「テイマーのい(・)ろ(・)は(・)を教えてくれる雑誌ですよ? スキルの取得方法から初めてのテイム。テイムしたモンスターの食事とか……。あとはレアモンスターをテイムした時の対処法とかもあります。ああ、『うちの子が一番可い』っていうコーナーで毎回読者の方のテイムしたモンスターの寫真を競ったりしてますよ」
「まあ、そんな雑誌があるのは分かった。それで、それが何だって」
「はい。3日前にオフ會がありまして」
「オフ會? なんの」
「『テイマーの會』のオフ會です」
「…………行く奴いんの?」
「はい! お嬢が先輩テイマーに話を聞きたいってことで私もついていきました。喋るモンスターは珍しいってことで、お嬢めちゃくちゃ目立ってましたよ!」
「俺の知らないところで楽しそうにやってんね」
そもそもルネをテイムしたのは俺なんだけどなァ……。
《何だお前。嫉妬してるのか?》
(…………ちげーよ)
「つーか、そのオフ會。人來たの?」
「何です? ご主人もしかしてお嬢に変な蟲がつくの警戒してるんですか? 大丈夫ですよ。の人が大半でしたから」
「マジ? 珍しいな」
「あ、それそれ。非テイマーの人の大きな勘違いですよ。テイマーってが多いんです」
「へー。それは知らなかった」
「男の人って大脳筋か大規模魔法の使い手になる人が多いんですよ。テイムをメインにダンジョン潛ってる人ってないですね」
「ふうん? 言われてみれば前線攻略者(フロントランナー)でテイマーやってる人ってほとんどの人だな」
「こまめなお世話とか要りますからね」
「カブトムシ大好きな男の子がこまめなお世話ができないわけないだろ」
「む? それは確かにそうですね。でも楽しいオフ會でしたよ。『WER』日本46位、“騒”のツムギさんとか。70位の“魔の姫”のナノハさんとかいらしてましたし」
「ああ、“騒”さんか……」
確か今は20代半ばでダンジョンが出來たころからの探索者のはずだ。世界でも最古參に當たるテイマーのはずである。
1度だけ喋ったことあるがが好き過ぎて結婚するならと結婚したいとか何とか言っていた。あの人、日本で46位なのかよ。たけーな。けどもう一人の方は全く知らない。聞いたことも無いから、前線攻略者(フロントランナー)では無いのかもしれない。
しかし、それにしては高ランクなのところが気になるところだ。
まあ、どうせ関わることなんてないのだから関係のない話か。
「んで、そのオフ會がどうしたんだよ」
すっごい話がズレつつあったのでハヤトが強引に元に戻す。
「そこに1人のの子が來てまして」
「の子?」
「はい。お嬢と背格好がとても似てまして……。多分、歳も近いんだと思います。結構話が盛り上がってましたから」
「それで?」
「その人がですね。モンスターが喜ぶご飯を普段から作ってるって言いまして、団子をんな人に配ってたんです。ウチの子が喜んで食べてくれるから、みんなの子にも食べてもらいたいって」
「食ったのか? その団子」
「はい。とっても味しかったですよ」
「食うなよッ! そんな意味の分からんものを!!」
「で、でも! 皆さん良い人だったんですから!! まあ、今思えばあれが原因かも……ってじです」
「良い人かどうかなんて初対面で分かんねえだろうが! ……まあ、良い。んで、ソイツはどんな恰好してた?」
「恰好ですか? ええっとですね。だぼっとしたパーカーを著てまして。ずっとフードを被ってました。まあ、歳が歳だから仕方ないのかなって思いまして……。ほら、日本1位の人の妹さんもそんなじじゃないですか」
ああ、マヤね。
黒歴史持ちの先輩としては彼の未來がとても心配である。
「……そいつのテイムしたモンスターはなんだった?」
「そこも気になります?」
「団子食べるモンスターなんて聞いたことないから……」
「ええっとですね……。確か……『妖狐』? って言ってました。何階層のモンスターなんですかね」
「……『妖狐』?」
その瞬間、ハヤトは思考を加速させた。
「背恰好は澪と同じだったんだよな? んで、ずっとフードかぶってて。『妖狐』をテイムしてて……。下半はどんな恰好だった? ズボンか?」
「そんなとこまで覚えてないですよ……」
「……そいつ。普段何してるって言ってた。探索者なんだろ? 前衛なのか、後衛なのか」
「いやー。そんな話はしてないですね。基本的にテイマーが集まるんですから、みんなテイマーやってると思うものですって。どうしたんですか? そんなに詳しく聞いて」
「なあ、ソイツは趣味とかで『占(・)い(・)』やってるって言ってなかったか?」
「さぁ、どうでしょう? みんなテイムしたモンスターの話ばっかりでしたよ」
ハヤトはしばらく考えて。
「ソイツの連絡先とは換してないのか?」
「親が厳しくてスマホ持ってないって言ってました。珍しいですけど、そういう人っていないわけじゃないですからね」
「………………」
《どうした?》
(……いや。まさか、と思ってな。ア(・)イ(・)ツ(・)が生きているとして、どうしてテイマーの中に潛りこんだのか分からない)
《…………?》
(分からないか? ルネのに起きた特の暴走。呪を用いれば簡単にできる)
《……何が言いたい?》
(珍しく察しが悪いな、ヘキサ。ほら、居るだろう。1人だけ。『妖狐』をり、背格好は澪と同じくらい。その癖、呪や占に関して化けじみた力を持った奴が)
《……まさか》
(『百鬼夜行』はダンジョンを贄(にえ)にして、何かをやらかすつもりだった。『百鬼夜行』は壊滅したが……。それでも中核の2人はまだ生(・)き(・)て(・)い(・)る(・)。なら、再び手を出してきてもおかしくない)
《なら、そいつは》
(恐らくは“伏見”……。あそこを壊滅させたのは失(・)敗(・)だったかもな……。數が絞られたせいで、自由にかれるぞッ!)
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