《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第9-9話 囲む踏破者!
ダンジョンのり口で待つこと15分。飄々(ひょうひょう)とした態度で、フードを被ったが出て來た。
「あの子です!」
ルネが耳元でそう言った。ルネが言うなら間違いないのだろう。あれが、『テイマーの會』のオフ會で団子を配ったのはずだ。
「……隨分出てくるのが早いな」
「ほんとですね」
ったのが20分前だったので、彼がダンジョンの中にいたのは30分とちょっと。探索をしているようには思えない。何かをしかけに行ったと思うのが妥當だろう。それに25階層の階層主(ボス)は『赤鬼』。
あの子が本當に“伏見”の息がかかった者なら、『赤鬼』退治はむしろ得意だろう。
「まだアイツが俺の探してるやつかどうか分からない。ルネ、とりあえずお前が行ってくれないか?」
「ま、まあ良いですけど」
ということでハヤトはいったん引いてルネに後を任せた。……彼にあとを任せるというのは相當に不安が殘ることだったが、顔見知りがルネだけだ。仕方ない。
「おっひさー!」
「あれ? ルネちゃん!? 來てたの!!」
フードを被ったはルネの姿を見て、素直に驚いている様子だった。なくとも、何か悪事を働いた後の、それを誤魔化すような雰囲気は出ていない。
《どうする。これで勘違いだったら》
(だとしたら、あのの子はまずに特を暴走させてるやべー奴だ。ダンジョンを攻略するために手段を選ばないのは良いことだが、それを“外”に持ちだすってのは良くないぞ)
《……む。それもそうか》
(だからどっちにしろ、話は聞いておいた方が良い。ただ、聞く相手がルネで終わるか、それとも俺がるか。その違いだ)
「澪ちゃんはどうしたの?」
「お嬢は先に帰ったんだー。私はちょっと用事があってさ」
「用事? どしたの?」
「ううん。もう終わったから気にしないで。ねね、話変わるけどさ。あのお団子、どうやって作ってるの?」
「味しかった!? レシピ見る?」
「ほんと!? 見たいみたい!」
「あ、でも家にあるんだ。ごめん、今は持ってないの。言ってくれればまた作るよ!」
の対応を見ている限り、特の暴走について気を配っている様子が見えない。
……勘違いか?
「そ、そうだよね! スマホは……持ってないって言ってたね」
「親が厳しくてね」
フードを被ったは、『ごめんね』と言わんばかりに頭を軽く下げた。
「ううん。何にも悪くないよ。それでさ、1つ聞きたいんだけど」
このままでは分が悪いと判斷したのか、ルネが話題の転換。ちょっと知をじる行為にハヤトの心の中でルネの株が上昇していく。
「どしたの?」
「25階層に何しに行ったの?」
「んー? 探索だよ??」
「30分だけ?」
「えー。見てたの? 新しい階層だからさ。ちょっと見に行ったんだけどモンスターが強くて帰ってきたの」
「そうだったんだ。ね、あの時連れてた『妖狐』は今日は連れてないの?」
「えっ? あ、そ、そうだね。今日は連れてないよ」
その時、初めてがうろたえた。してやったりとハンドサインをハヤトに送るルネ。
……バレるぞ。
「今日は新しい階層だからさ。怪我させたくなくて」
「へー。ね、25階層が初めての階層ならさ。『妖狐』って何階層のモンスターなの?」
ルネが短くそこを突いた。が明らかに困する。
「……えっ。えーっと……。何階層だったかな……?」
そして、止めを刺すようにルネが言った。
「ね、そういえば私名前教えてもらったっけ?」
「名前? 名前なんて……」
名前を言うかどうか詰まる。明らかにおかしいその行為に、ハヤトが出た。
「【鑑定】スキルを使われれば名前がバレる。だから偽名は使えない。だが、本名を伝えれば呪的な偽裝がバレる恐れがある。だから、名前を教えなかったのか?」
フードを被ったはハヤトの姿を見て、初めて大きく驚いた。両目を見開いて、その大きな2つの目でしっかりとハヤトを捉えた。
「は、ははっ。ははははははっ!」
そして、狂ったように笑いだす。
「何だ。バレていたのか」
呆れたようにそう言って、“伏見”の狐は札を手にした。
「あいにくと、これは私の式神だ。ここでこのを捉えたところでどうにもならんよ」
「だろうな。こんな所にわざわざ本で來るわけがない」
それを知っているハヤトはため息をついた。
「つまらん奴だ。大方、25階層で私が何をしたのかも察しがついているのだろうよ。“天原”の」
「ああ。それをこれから外しに行くところだ」
それを聞いて“伏見”の狐は肩をすくめた。
「まさか、“天原”のにテイマーがいたとはな」
「得意の占いはどうした」
「くは、何でもかんでも占わなければけないほど甘ったれておらんよ」
“伏見”はそう言って吐き捨てた。
「何が目的でテイマーに近づいた」
「聞けば教えてもらえるとでも?」
「思ってねえよ」
今度はハヤトが吐き捨てる様にそう言った。
「では“天原”の。次は“八璃(やさかに)”の姫の祝賀でな」
「何だと?」
ハヤトがその先を聞こうとするより先に、フードを被ったの姿が煙のように消え去った。
「……ツバキの誕生日パーティーか?」
ハヤトはわずかに唸った。
《どうする? ツバキに伝えるか?》
(一応言っておこう。誕生日パーティーは明後日だが、今からでも警備は増やせる……だろう。増やしたところで意味があるかは分からんが)
ということで、公衆電話でツバキに一報れハヤトは25階層の階層主(ボス)部屋にり付けられた『認識阻害の札』を剝がして帰宅した。
家に帰ったら、何故か澪とシオリが先にてんぷらを食べていた。2人ともただ沈黙を保っている。同じように食事を取っているセツカも2人に挾まれてし気まずそうだ。
エリナの前には食が並んでいない。もしかして俺の帰りを待ってたのかな? 悪い事したな……。
「元気そうで何よりだ」
ハヤトは挨拶替わりにそう言ったが、シオリと澪は顔を真っ赤にしてポツリと、
「……不覚」
「………………」
だけ返してきた。澪は俺が顔を見ようとするのだが、反対に顔を俯かせるばかりで何も言おうとしない。
あー、これあれだ。やらかした時の記憶があるパターンだ。可そうに。
「……まあ、その。なんだ。頑張れ…………」
「…………」
黙々とかしていた澪の箸が止まった。そして、そのまま悶(もだ)え始める。うーん、勵ましは逆効果か……。
ハヤトはぼんやりとそんなことを考えつつ、2人を見た。
「てかさ、1つ聞いていい?」
「……何?」
「何ですか……?」
澪とシオリが仲良く茄子の天ぷらを飲み込んで、尋ね返してきた。
「なんでウチで飯食ってんの」
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