《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第9-13話 応戦の踏破者!
《ハヤトッ!》
(分かってる!!)
ヘキサの聲で、ハヤト弾かれたようにいた。ステージの暗転など、ツバキと行ったリハーサルには含まれていなかった。
ということは、何かしらの不合。もしくは――――急襲。
ハヤトはツバキを抱きかかえると、刀を呼び出す。
“【暗視】をインストールします”
“インストール完了”
“スキル・インテリジェンス”がハヤトに暗闇での目を授(さず)けた。パーティー會場は突然の出來事にざわめく……のは一瞬だった。ほとんどの人間がこの狀況を何かのサプライズだと思い、楽しんでいる。
どこだ……? どこから來る……?
ハヤトは背中を壁に付けると全方向を見渡した。闇の中、奇襲に興じるとしたらどこからやって來る? 敵ならどこから仕掛ける?
《上だッ!》
ヘキサの慟哭。ハヤトもほぼ同時に上を見ていた。豪華絢爛なシャンデリア、その上を跳躍しながら飛び移るこそ。
「天日(あまひ)……ィ!」
ハヤトの口から洩れた言葉にはぞっとするような笑みを浮かべた。
「は、ハヤちゃん!? 何が起きてるの!!?」
“【屬魔法】をインストールします”
“インストール完了”
「全員、逃げろッ!!」
ハヤトはぶと同時に、天日(あまひ)に向かっての球を放つ。ハヤトの言葉を聞いた要人の護衛たちがいち早くき出した。
バッツツツ!!!
と、空中でバク転して天日(あまひ)はその攻撃を避ける。だが、その球に攻撃力は無い。天日(あまひ)が避けたと確信した瞬間、
パァアアアアアアア!!!
と、一面を照らしだすッ! 目的は天日(あまひ)の目!
「咲桜(さくら)さん! 天日(あまひ)です!!」
「やっぱり來ましたか」
混の最中、呼び出した聲に果たしては応えた。
「さ、咲桜(さくら)ちゃん?」
「『百鬼夜行』の目的は日本転覆。だとしたら、今もっとも求められるのは財力でしょう。今や武力は文民の下におかれて《シビリアンコントロール》ますからね。かといって、政治の力も弱い。“八咫”は確かに政界の重鎮ですが、民主主義の現代において日本を覆すだけの力を持っているかと聞かれれば首を傾げます。だからこそ、求められるのはツバキさん。あなたです」
「わ、私……」
「“八璃(やさかに)”の當主は人前に出たがりません。ですので、當主に最も近いあなたが狙われるのは必然」
バッ、と音を立ててシャンデリアにが戻る。だが、関係者たちは我先にとエレベーターにのって逃走している。それでいい。こっちに関わらなければ、彼らは無事なのだ。
「ほう。われたのは私だったかの?」
で目をヤった天日(あまひ)は両目をつむって拳を構えた。戦闘態勢だ。彼なら、目をつむったままでも戦えるということか。
……戦えそうだな。
「ハヤトさん。彼が今回のら(・)す(・)ぼ(・)す(・)。気をしっかり引き締めていきましょう」
「ツバキは……!」
「良く聞いてください。私が天日(あまひ)さんを足止めします。その間にツバキさんを安全な場所に」
「……けど、咲桜(さくら)さんは」
「速く行ってください。私はあなたを信じてます」
咲桜(さくら)が一歩前に出る。その足音を聞いて、天日(あまひ)が一歩前に出た。互いが互いの間合いを確かめる様に一歩ずつ近づく。
「ハヤトさん。目的をはき違えては駄目です。貴方に求められているのは天日(あまひ)さんを倒すことではありません。ツバキさんを守ることです」
「……くッ! ご武運をッ!!」
ハヤトは地面を蹴って窓へ。生み出した刀で一閃。強化ガラスを斬って重力にを任せた。
「きゃああああああああああああっ!!!」
珍しくツバキがの子らしい悲鳴を上げたのに笑う。ハヤトは続いて武を創造。生み出したのは杭からびた鎖。それを投擲。地面と水平に飛んだ杭はビルの壁面に刺さると、ハヤトは鎖を腕に巻きつけてビルの間を空。
凄まじい重力と、空気の抵抗。
そのまま振り子の如く、元の高さにまで降り上がると鎖を手放して前に飛ぶ。安全な場所と咲桜(さくら)は言った。そんな場所があるのだろうか。“伏見”のいる日本で、安全な場所など……?
新しい杭を呼び出して、壁に突き刺す。
そんなことを考えてた瞬間、ハヤトは急に前(・)後(・)左(・)右(・)が(・)分(・)か(・)ら(・)な(・)く(・)なった。
「……ッ!?」
《覚麻痺だ! 落ち著け!!》
「くそッ!」
ハヤトは悪態をついて、ビルの壁面に著地した。
「ど、どしたの。ハヤちゃん!」
「大丈夫……だっ。降りるぞ……」
幸いにして上下の覚は殘っている。ハヤトは鎖を手放して、地面に落下。『彗星(ほうきぼし)』にて衝撃を地面に逃がした。
「人が……、いない……?」
ツバキが周囲を見てそう言う。
「來やがったか……」
“人払い”の結界。これまで幾度となく出會って來たものだ。
「よくぞ、天日(あまひ)から逃げたものよ」
天日(あまひ)のとは違う、だが同質の高い聲。闇を切り裂くようにして現れるの背中には巨大な9本の狐の尾が揺(たゆた)っている。
「それは素晴らしいことだが、はて。私からも逃れられるかの?」
前を向いているのに、前を向いているという実がわかない。
激しい眩暈(めまい)……いや、立ち眩みのような酩酊(めいてい)。気持ち悪く、吐きそうになるのを必死にこらえる。
「人を抱えてどこまで逃げ切れるか。“天原”の異端児よ。さてはて、楽しませてもらおうか」
九尾がそういって笑った瞬間、ズドドドド!!! と、轟音を立てて“九尾”の尾が1mはある巨大な針で貫かれた。
「兄様! お久しぶりです!!」
「よう、兄貴。元気にしてたか?」
空から落ちてくるのは年。
「アマネ!? アマヤ!!?」
「はっ! 小賢しい結界がられていると思えば、そなたらか!」
突然の者に2人は驚愕。“天原”の正當後継者である彼らのに“九尾”は笑う。勝てると踏んでいるのか、この戦力で……!
「先に往け、ハヤト」
だが最後の者を見た瞬間、“九尾”の笑いが引きつった。
「……天真(てんま)け?」
ハヤトの、父親だ。
「ここは我々が引き継ぐ。お前は“八璃(やさかに)”の姫を護衛しろ」
その傲慢な態度にハヤトは怒りを覚えた。
「……ど、どの面下げてッ!」
《よせハヤト! 気持ちは分かるが今じゃない!!》
「……ッ!」
ヘキサの言うことが正しい。それは分かっている。だが、この気持ちが収まらない。
「家族総出で楽しそうよの。だが何の策もなく、私がここに立っているとでも?」
「ええ、策はあるでしょう。だがそれは、貴(あなた)を倒せば収まるはずだ」
テンマが拳を構えてそう言った。
「では、こういうのはどうかの?」
“九尾”が札を手にして、印を結ぶ。剎那、激しい雷鳴と共に雷雲が東京の空を覆い始めた。そして、雨が降り始める。外から見れば分かるほどの局所的なゲリラ豪雨。
「……空間の切り取り、ですか」
「久方ぶりの大戦(おおいくさ)。楽しまなければ損ではないか」
(……やられたッ!)
《何をしたんだ!?》
(……局所的に俺達のいる空間が切り取られたッ! ここからは逃(・)げ(・)出(・)せ(・)な(・)い(・))
《逃げ出せない? それはあのケモミミを倒してもか?》
(……普通は倒せば終わる。けど、無策で來ているはずがない。きっと別の場所に形代か何かを用意しているんだッ!!)
剎那、ハヤトが飛び出してきたビルの窓ガラスが々に砕けて咲桜(さくら)のが地面と水平に吹き飛んだ。
「……ッ!?」
砕かれた強化ガラスから天日(あまひ)が顔を見せる。
その目はしっかりと、ハヤトを見ていた。
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