《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》青空と水族館 その3
不定期更新ですが新作を投稿しています。
読んでいただけたら嬉しいです。
深海のような場所からは一転、次に俺たちの目にったのは大きく吹き抜けた空間だった。
中央には大きな円形のプールがあり、それを囲むように段々に席が設置されている。
「ここでイルカショーが見れるみたい!」
「面白そうだね。もうすぐ始まるみたいだし、見てみようか」
「うん。初めて見るから楽しみ!」
「俺も見た事ないな。前の席の方がいいのかな」
昔家族で水族館に行った覚えはあるが、こんな壯大な舞臺でショーを見るというのは初めての験だ。
上の席から俯瞰で眺めるのも良いだろうし、近くの席で迫力をじるのも捨てがたい。
「近くが遠くか、どっちの席にしようか」
「どうせだったら近くでイルカが見たいかな。もしかしたら目が合うかも」
「じゃあ前の方に座ろう」
前の方は水がかかると注意書きがあるが、そんなずぶ濡れになる程でもないだろう。
ユイちゃんも初めてのようだし、二人でワクワクしている。
段々と席も埋まってきて、いよいよ開演も近い。
しかし、俺たちのようにプールの真前に陣取る観客はあまりいない。
これはもしかして……。
そう思っている間に、辺りに大きな聲が響く。
『こんにちは〜! まもなくイルカショー開演です!』
黒地に黃いラインがったウェットスーツを見に纏うお姉さんが、プールの飛び込み臺に登場する。
ついに演目が始まるようだ。
橫に目を向けると、ユイちゃんはキラキラした目でお姉さんを見ている。
「えーお姉さんかっこいい! 私もイルカショーやってみたいな」
「ユイちゃんと仲良くなるの上手そうだし、似合うかもね」
イルカの上に乗りながら笑顔を振りまくユイちゃん。ありだな。
『さぁ、最初はイルカさんの紹介!』
お姉さんが一匹一匹イルカの名前を呼んでいくと、それに呼応するようにイルカたちが立ち泳ぎをする。きゅっきゅと鳴き聲を上げながら水面をるように移する姿はとてもキュートだ。
「可い〜!」
「意思疎通できるのってなんだか嬉しいよね」
犬然り貓然り。言葉が通じなくとも意思が伝わるというのは嬉しいものがある。
『次は私が、イルカさんと一緒に泳ぎます!』
どうやって泳ぐのだろう。人間の泳ぎではイルカと並ぶ事は不可能だろうし、イルカがゆっくり泳いでくれるのか?
そう思っていると水面を揺っていたお姉さんが、突如として空中に飛び上がる。
良く見ると、イルカが鼻先でお姉さんを持ち上げたのだ。
「すご〜い!」
「すごいな!」
もはや二人とも語彙力を失っている。
持ち上げられたお姉さんはそのまま、イルカに乗って水面を移していく。
とてつもなく言い方は悪いが、ケンタウロスのようだ。
『さぁ次はいよいよメインの演目です! 水のカーテンと共に踴るイルカさんたちの姿をご覧ください!』
その掛け聲と共に、天井からは小刻みに水が降ってくる。円形に落ちてくるそれは、まるで水でできたカーテンのようだ。
そしてプールの中からイルカたちが空中へ高く舞い上がり、翼が生えたかのように舞い踴っている。
「わぁ……」
を小さくらすユイちゃんが子供のように可くい。俺にも子供ができたらこんなじなのだろうか。
『どうでしたか? 最後に、イルカさんたちから見てくれた皆さんに挨拶があります!』
「挨拶って、最初に名前を呼ばれた時みたいに泳ぐのかな?」
「うーん、なんだろうな」
そういえば、水飛沫の注意書きが噓のようにこちらへは何も飛んで來なかった。
一応書いておいたというわけでもなさそうだし、という事は……。
イルカがプールの端に近づき、上半を水面から離す。
「ユイちゃん!」
「ん? どうしたの?」
「多分俺たち、今から――」
それを言い切る前に、イルカが水面にぶつかる事によって水が命を持ったかのように飛び出すした。
大きな質量によって弾き出されたそれは、目の前にいる俺たちに迫り――
「うわぁぁ!?」
「わばばばばば!!」
次の瞬間には、二人とも頭から爪先までずぶ濡れになっていた。
『あら、カップルさんに水がかかっちゃったみたい。ダメでしょレン君! という事で今回はここまで! 次回の公演は19時からです!』
あら、じゃないんだが。
いや、ろくに確認もしていなかった俺が全面的に悪いんだけど。
「ユイちゃん、大丈夫?」
彼も俺よりは軽癥だが全に水を浴び、綺麗な青い髪も水分を含み、髪が濃くなっている。
いきなりのことで驚いているかもしれないと心配になって聲をかけてみたら、
「……あははっ! 二人してびしょびしょ!」
どうやら気にったようだった。
スタッフさんにタオルを貰って、ユイちゃんに手渡す。
「はいユイちゃん、タオル」
「ありがと! それにしても、すごいショーだったね!」
「最後は違う意味で凄かったね」
頭にタオルを當てて水分をとりながら、笑顔で想を話す。
結果も含めて楽しい時間を過ごせたとじる。
彼が風邪をひかないか心配だが、外に出ればすぐに乾くだろう。
一通りを拭き終わった俺たちは、タオルを返してお土産コーナーへと向かう。
ショーを見て明るい気持ちと呼応するかのように、とりどりの魚たちのぬいぐるみやお菓子が置いてある。
「優太君見てこれ! ウツボのぬいぐるみなんだけど、口の中に腕がるんだよ!」
「うお……なんていうか、ワイルドだな」
右肩までウツボに飲み込まれているユイちゃんの姿はシュールそのものだ。
多分戦ったら凄まじい破壊力で追い詰めてくるタイプ。
「あ、これなんて可くない? イルカのペンスタンド」
「ほんとだ! 機の上に置いたら可いかも!」
ちょうど先程イルカざ空へ舞い上がる時のようなポーズをしている。波打つ水の部分にが開けられていて、ペンを立てられるようになっている。
「ユイちゃん、これ気にったの?」
「うん! 買おうかなぁ〜」
「じゃあ、ちょっと待ってて」
真剣な眼差しで見つめられているスタンドを手に取り、會計へ向かう。
高校二年生にもなって、贈りがペンスタンドだと笑われてしまうだろうか。
でも、他に候補はウツボのぬいぐるみしかなかったし、それに比べたら実用がありそうな方が良いだろうと思う。
會計を終えた俺は、ポカンとこちらを見ているユイちゃんの元へと戻る。
「はいこれ、機の上にでも飾ってくれたら嬉しいな」
「……いいの?」
不思議そうな目が、俺とプレゼントを互に捉えている。
……もしかして、ウツボの方が良かったのか?
心は難しすぎるな。
「あ、いらなかったら俺が持って帰――」
「いる! ほんとに嬉しい! 大切にしまうね!?」
「いや、使ってよ」
「そっか! 大切に使うね!」
急に元気になるユイちゃんにツッコミをれながら、手に持った小包を渡す。
「……えへへ、嬉しいなぁ」
これはチークではないだろう、彼は頬を僅かに赤く染めて、プレゼントを大切そうに持っている。
良かった。選択を誤ったかと思ったが、どうやら喜んでくれているようだ。
「今度は私が何かあげるから楽しみにしててね!もうすぐ修學旅行もあるし、珍しいもの買ってきてあげる!」
「わかった。楽しみにしてるよ」
「ちなみに、下著は著けてるのと著けてないの、どっちがいい?」
「……そういえばしい本があるなぁ」
答えたら何やら恐ろしい事になりそうなので、話を逸らす事にした。
需要あるよ、これからも読んでやってもいいよと思ってくださる優しい方がいたら、
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