《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》班決め
「じゃあ、今日のロングホームルームは修學旅行の班決めをするから、4、5人で一つの班を作ったら黒板に名前を書きに來い。あぶれたやつは先生と二人で回ることになるぞー」
無事に風邪から回復した俺に待ちけていたのは、全く頭になかった修學旅行の班決めという地獄のようなイベントだった。
そういえばもう九月だもんな、月末かなんかに京都に行くって學校行事表に書いてあったのを思い出したぞ。
これはまずい、唯一の友達である片山には自分のグループがあるし、淺川と二人で回ろうものなら何か事件が起こるに違いない。
というか、また真壁のような過激派に襲われかねん。
そう考えると小鳥遊先生と二人で京都観っていうのも良い気がするな。先生綺麗だし、きっと靜かに観を――
「ちなみに私は大の源氏語ファンでな。京都では延々と源氏語についての知識を垂れ流すと思うから、勉強熱心なやつは自分から申し出ても良いんだぞ」
だめだ、俺の修學旅行は始まる前に終わってしまった。
もはや何の打開策も思い浮かばない。こうなったら、イマジナリーフレンドが三人いますとか言って先生をドン引かせるしかない。
「宮本? ちょっと良いか?」
そうか、イマジナリーフレンドを実化させる方法を編み出せばいいんだ!
なんて頭の切れる男なんだ俺は。
「宮本、おい?」
そうと決まれば今日から修行だ。
系統的には魔になるんだろうか、なんであっても俺は得してみせるがな。はっはっは。
「宮本!!!」
「なんだ!? うるさいな!」
「うるさいは酷くない? 何回も呼んだんだぞ……」
いつのまにか俺の目の前には、心配そうな顔を浮かべた彫りの深い顔があった。
何か用事があるのか、片山が話しかけてきていたのだ。
「ごめんごめん、考え事してて。それで、どうした?」
「いや、こんな時に聲をかける理由なんて一つしかないだろ。俺と班組んでくれよ!」
……え?
申し出は死ぬほどありがたいが、何を言ってるんだ片山は。
自慢じゃないが、彼のグループの人間は俺にマイナスのを抱いていそうだし、上手くやっていける自信なんてほどもない。
それによって彼らの友に亀裂がるような事があったらと思うと、ここは丁重にお斷りするのが得策だろう。
「申し出は嬉しいけど、他のメンバーと仲良くなれる気がしないんだが」
「何言ってるんだ? あいつらはあいつらでグループを組んでもらうから、メンバーはまだ俺たち二人しかいないぞ」
「……え」
確かに、片山を抜いても彼らはグループを組める人數だが、何故そんな事をするんだろう。
わざわざ俺を選んでくれる理由がわからない。
「なんで俺と組もうとしてくれるんだ? 一人で寂しそうとか?」
「あのな……。お前が思ってるより、俺にとって宮本は大切な友達なんだよ」
「片山……」
理由なんてものに固執した自分が恥ずかしくなった。
彼は俺のことを、本當に友達として大切にしてくれているのだ。
若干頬を染めているのは気持ち悪いが、きっと照れているからだろう。
「そういうことなら、俺の方からも言わせてくれ。よかったら、一緒に班を組んでくれないか?」
「もちろんだ。よろしくな」
こうして、ひとりぼっちはふたりぼっちへと進化を遂げた。
依然として小鳥遊先生による課外授業は避けられていないが、それでも彼と一緒なら乗り越えていけるだろう。
「そういえば巖城さんについて、三人程に聞いてみたぞ」
「本當か!? ありがとう! それで、なんて言ってた?」
「片山はキラキラしてて異経験のない人には怖いと思うから、まずはゆっくり警戒心を解いていくほうがいいと思うってさ」
「ふむ……警戒心か……」
両肘を機の上に乗せ、両手を鼻の前で合わせて考えている。
アニメでよく見るポーズだが、彼がやるとサマになっているな。
「警戒心を解くって言っても、そもそも近付けないんだよなぁ」
「確かに、近付こうとすると避けられるって言ってたもんな」
「そうなんだよ。どうにかして、それこそ班にでもってくれれば名譽挽回のチャンスがあるんだけどな」
確かに、同じ班になれれば自然と関わる機會は増え、彼の誤解を解くことにも繋がるだろう。
しかし、この狀況で俺たちがっても、加してくれるとは思えない。
一どうすれば――
「ねぇ宮本君、あなたたちの班ってまだ二人だけ?」
「淺川か……そうだけ……ど……?」
顔を前に向けると、スカートからびる細くて長い足が目にった。足が長いせいで相対的に短く見えるスカートにどきっとする。
その腳の持ち主である淺川が、班にろうと聲をかけてくれたのは理解しているが、俺が驚いたのはその後ろにいる人にだった。
「巖城さん……も、一緒にる?」
「う、うん……。宮本君と、か、片山君が良かったらだけど……」
「片山……君……」
名前を呼ばれた嬉しさでショートしている彼は放置して、狀況を考えてみる。
淺川はわかる、自分で言うのも恥ずかしいが、俺に好意を持っているので、この機會を利用しようと言うのだ。
だが、淺川と巖城さんの間に接點があるとは知らなかったし、わざわざ苦手な片山がいる班にる機もないように思える。
もしやこれが、淺川が言っていた良いアイデアというやつなのだろうか、だとしたらとんだ策士だ。
方法は分からないが、難攻不落の巖城さんを落としたのだから。
こちらの回答は分かりきっているが、形式的に片山にも話を振っておこう。
「俺は全然いいけど、片山はどう?」
「も、ももちろんおっけー! よろしくね、淺川さん、巖城さん!」
「あ、うん」
「よろしくお願い…します」
こうして、俺たちは一気に源氏語験ツアーから、華々しい修學旅行を手にしたのだった。
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