《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》班決め その2
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「よし、殘念ながら先生と勉強したい奴はいないようだが、一通り班は決まったな。ではこれから、各々集まって修學旅行の予定を決める事。二日目と三日目の晝過ぎまでは自由行だぞ」
ひとりぼっちで項垂れる生徒を見ずに済んで、先生もさぞ嬉しいことだろう。
今からは自由行の際、どこへ行くのかを決める時間らしい。
そもそも修學旅行に自由な時間がある事を、この瞬間初めて知ったんだが。
「片山、これはチャンスだ。この時間を利用して、巖城さんの好みとかを探ろう」
「流石相棒、天才か? よし、上手いこと話をそっちに持っていくか」
俺たちは巖城さんに聞こえないよう、ヒソヒソと作戦を練り始めた。
どうでも良いが、既に俺のランクは相棒にまで上り詰めていたようで、若干の気恥ずかしさをじる。
「二人とも大丈夫? 今から予定を決めようと思うんだけど」
「平気だよ。片山も大丈夫だよな?」
「もちろん。じゃあどこに行くかなんだけど、やっぱり京都といえば清水寺だと思うんだ」
「確かにそうだね」
こうして観地の相談がスタートし、淺川が的確に相槌をれていく。
おそらく本當に清水寺に行きたいわけじゃないだろう。
これはあくまで話の繋ぎで、本當の狙いは、ここから巖城さんと會話を始めること。
「だな。でも、有名どころ過ぎるんじゃないか?」
「流石宮本、いい意見だ。もう行ったことのある人も居るかもしれないしな。巖城さんはどう? 清水寺行ったことある?」
「わ、私は……京都自初めてです」
伏し目がちで告げる彼の目元はよく見えない。
今の段階では片山への拒絶は見られないが、依然警戒はしているようだ。
どのようにすれば、安全な人間だと理解してもらえるんだろう。
そう考えている間にも、片山は返事をする。
「そうなんだ、実は俺もなんだよ。いまいちどこに行きたいなっていうのがないんだけど、どっか気になってる場所とかある?」
「うーん……そもそも何があるのかもあんまり分からなくて……ごめんなさい」
場が整ったおで、片山は自らのコミュニケーション力を存分に活かして話を回す事ができる。
しかし、話はそう簡単にまとまらないようだ。
ここからどうするべきか、上手い落とし所を探らねばならない。
「ううん、謝らないで。俺も同じだからさ」
「実は私も京都詳しくないんだよね。撮影で行くことはあっても、観してる時間がなくて。宮本君はどう? 京都詳しいの?」
涼しげな淺川の目元が、俺に何かを告げようとしている。
よく考えろ、きっとこの二択が勝負の分かれ目だ。
片山も巖城さんも、淺川も京都に詳しくない。
もしここで俺が、京都に通しているとしたら?
俺が案役になるか、目的地の候補を出してそれで終わりだ。
しかし、俺も詳しくないと言えば……そうか!
「いや、俺も全くだ。なら、みんなで調べてみるのはどうだ? ショッピングモールの本屋なら、京都特集の本がいっぱい置いてあるだろうし、準備しなきゃいけないものも買えるし」
「それはいいな! 淺川さんと巖城さんはどう?」
「うん、いいと思う」
「私も……賛です」
淺川のキラーパスのおで、なんとか次に繋げる事ができたようだ。
放課後なり休日なりに集まれば、嫌でも距離がまるだろう。
隣の席からはうるうると謝のこもった視線を送られているし、ミッションコンプリートだ。
『キーンコーンカーンコーン』
「お、それじゃあ今日はここまで。ちょっと職員室戻るから、その間にみんな帰りの準備しておけよ〜」
一日の終わりを告げるチャイムが鳴り、小鳥遊先生が教室から出ていく。
もともとざわざわとしていたクラスは、修學旅行への期待からか、さらに大きな音に包まれていた。
「よし、今日はこんなとこだな。調べに行く予定を合わせたいし、みんなでグループ作っておこう」
片山がそう言うと、各々が自分のスマホを取り出し、メッセージアプリを起させる。
基本個人間でやりとりをするアプリなのだが、招待された人間が承認することで、複數人で連絡を取る事もできるのだ。
手際の良い登録もあって、あっという間に四人のグループが完し、片山は実質巖城さんの連絡先を手にれたと言える。
「それじゃあ予定はグループに送るね。巖城さん、行こっか」
「う、うん。それじゃあ、失禮します」
そうして淺川と巖城さんは去っていき、俺たち二人だけが殘る。
「いやぁ良かったな片山。巖城さんの連絡先をゲットしたも同然じゃないか」
「お、おぉ……そうだな……」
前人未到の快挙だというのに妙に歯切れが悪いなと思い彼の方を見ると、何故か汗がダラダラと額から流れ、顔面からも無くなっていた。
「片山!? どうした!?」
「い、いや……巖城さんとたくさん喋れたのが嬉しくてな……」
「そ、それならいい……のか?」
「あぁ……夢のようだ……。これ夢じゃないよな? 一回毆ってみてくれないか?」
「気持ち悪いからやめとくよ」
赤くなるとかじゃなくて真っ白になるのは意味が分からないが、調不良じゃないようで安心した。
何はともあれ、次の勝負は近い。
再び作戦を練って、二人の仲を近付けなくては。
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