《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》プランA

というわけで週末、俺たちは修學旅行の準備の為、近くのショッピングモールを訪れる事になっていた。

駅での待ち合わせ場所には既に片山の姿が。

黒いスラックスに白いTシャツ、それに黒いシャツを羽織ったシンプルなコーデだが、むしろ蒸し暑い夏はそのくらい簡素な服裝の方が良いだろう。

巖城さんに會えるとあって、彼の気合いを表しているかのように、髪は束じられるセットをしてある。

「おはよ、片山」

「おう相棒。そういえば、私服で會うのって初めてだったか。お! それってmullniの新作の巾著バッグだよな!? めちゃくちゃかっこいいな!」

「ありがとう。手りが良くて気にってるんだ」

出會い頭から早速彼の知識量の富さと褒め上手を確認したところで、今回の作戦についての打ち合わせをする。

そもそも、何故放課後でなく休日に集まることになったかというと、私服なら巖城さんが服好きだという証拠が得られるのではないかと考えたからだ。

そして淺川の「ごめん、今週は撮影があって週末しか空いてないんだ」という一言で、無事にこの日が実現したというわけである。

「で、今日の作戦なんだけど」

「そうだったな。確か、最初に本屋に行った後、各自必要な道を買いに行くって段取りだったな。それで、宮本と淺川さんが同じエリアに行くからって、二人ずつに別れる。これで大丈夫だよな?」

「大丈夫。その時巖城さんも同じエリアに來ないよう、事前に何を買いたいのか引き出しておく必要があるな」

「了解。なんとかやってみるよ」

ペアで別れることとなれば、巖城さんも落ち著いて片山と話す事ができるだろうし、何かしら進展があるのではないかと考える。

こんなもんで打ち合わせは大丈夫だろう。

「二人とも、おはよ」

「おはようござい……ます」

その時現れたのは、淺川と巖城さんだった。

黒いオフショルダーのトップスに、デニムのスキニーパンツ。とてもシンプルな格好だが、素材が良すぎるため、過度な裝飾など不要だった。

対する巖城さんはというと、黒いワイドパンツに白いグラフィックTシャツをタックインした、これまたシンプルな格好だった。

確かに普段とは雰囲気が変わっているが、眼鏡もそのままだし、果たしてお灑落が好きだと理解できる報はあるのだろうか。

そう思い、小聲で片山に判斷を仰ぐ。

「なぁ、巖城さん、バレないように抑えてきてないか?」

「確かにその通りなんだが、良く見てくれ。あのサンダルはカナタとスポーツブランドがコラボした時のものなんだ。やっぱり、俺の見立てに間違いはないみたいだな」

この一瞬でブランドを見抜く観察眼、そして本來であれば誰もが目を奪われるはずの淺川に見向きもしないことから、どれだけ彼が本気なのかが窺える。

「よし、じゃあみんな集まったし、早速行こうか。まずは本屋さんでいいよね?」

片山が軽快に場を纏め、俺たちはショッピングモールにある書店へ向かうことになった。

「えっと、観雑誌は向こうみたいだ」

「だいぶ広いな、この本屋」

「そうだね。なんでも置いてありそう」

書店に到著した俺たちは、観誌が置いてあるエリアへと向かう。

ここに來る途中も片山はみんなを盛り上げようと會話を振っていたんだが、やはり巖城さんはあまりノっていない様子だった。

ただ、特に帰りたそうにする素振りもなく、時々小さく笑顔も見せることから、どうやら素でこれくらい落ち著いているみたいだ。

「……あ、これじゃないですか……?」

「本當だ。ありがとう、巖城さん」

「い、いえ」

巖城さんが見つけたのは「京都観名所50選」という、有名どころから絶対に楽しめないだろと思うようなところまで、様々な観名所が載っている雑誌だった。

「へえ、伏見稲荷大社には千本鳥居っていうのがあるらしいぞ。淺川は行ったことある?」

「一回だけ近くは通ったことあるけど、実際に見たことはないかな。著を著て歩いたら凄く楽しそう」

「確かに淺川さんの言う通り、著著るのはいいかもしれないな。これを自由行れようと思うんだけど、巖城さんはどう思う?」

「わ、私は賛……です」

「宮本も淺川さんも賛みたいだし、二日目はこれで決まりだな。三日目は定番だけど、清水寺でどうかな」

こちらの問いかけにも皆同意し、早くも修學旅行の予定が決まることとなった。

「あ、ごめん。言うの忘れちゃってたんだけど、私二日目の夕方はマネージャーと打ち合わせがあるから、二時間くらい抜けることになっちゃうと思う」

「わかった。その間あんまり離れないでおくから、終わったら連絡してくれ」

「そうだな。多分夜は飯食って旅館に帰るだけだろうし」

こういう時ですら気が抜けないのが、人気モデルだという証拠だろう。

「本當は宮本君と二人でデートしたかったんだけどね。そうすればあの二人もいい雰囲気になると思うし」

「そ、そうだな……」

淺川が肩を寄せ、耳元でそう囁く。

自分の要求に本來の目的を添えることで説得力を増すことのできる高等テクニックだ。

自然に使ってくるなんて、やはり淺川は相當な策士だと思われる。

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