《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》プランA その2

書店での報収集も済ませ、俺たちは店を出る。

「巖城さんは後は何が必要なの?」

「私は…ウェットティッシュとかを買おうと思ってます」

「そうなんだ。宮本君と片山君は?」

淺川が自然に質問してくれたため、巖城さんが買いたいものについて簡単に知ることができた。

今此方に向けられている質問に対して、淺川と被りやすい返答をすることで、上手く別れる事ができる。

「小さいバッグを見ようと思ってるんだ」

「俺は巖城さんと同じでティッシュとかそういうやつだ、淺川さんは?」

「私は宮本君と同じ、ちょうどいい大きさの鞄があったら買おうかなって」

「それなら俺と巖城さん、宮本と淺川さんで分かれたらちょうどいいな」

よし、片山が今後の行をうまいこと提案してくれた。

これで彼らに距離をめるチャンスができたことになる。

「巖城さんもそれで良いかな?」

「は、はい。それじゃあ片山君……い、行きましょう」

「う、うん! じゃあ二人とも、終わったら連絡してな!」

一瞬片山と目が合うと、彼の瞳はやる気と喜びに満ち溢れていた。

よくよく見ると、気づかれないように右手で此方にガッツポーズをしている。

頑張れ相棒。このチャンスを必ずモノにするんだぞ。

ぎこちないきで歩いていく二人を見送ると、俺と淺川も行を開始する。

「俺本當は買いたいものないんだけど、淺川はどうなんだ?」

「私もないよ。だから暫く二人でぶらぶらしようよ」

「そうだな。……あ、アイスでも食うか?」

「いいね。食べたいな」

タイミングよくアイスクリームショップを見かけたので、俺たちはそこでアイスを楽しみながら時間が経つのを待つ事にした。

俺がい頃から知っているチェーン店なだけに、お客さんも多い。

どの味にしようか考える時間がしかったのでちょうど良いとも言えるが、淺川は何を選ぶのだろう。

「淺川はもう味決めたか?」

「私はストロベリーにしようかな。宮本君は?」

「俺は……これかな」

そう言って俺が指差したのは、クッキー&クリームだ。

この二つを組み合わせようと思った人間は天才だと思う。

ノーベル平和賞とかあげてもいいんじゃないだろうか。

それはさておき、俺たちは店員さんにメニューを伝え、料金を払った。

し経って、カウンターから二つの容を手渡される。

俺はそれをけ取ると、淺川へストロベリー味を渡す。

「はい」

「ありがと。じゃあ食べよっか」

近くにあるベンチに二人で腰掛け、スプーンを口に運ぶ。

「ん……味しい」

「懐かしいなぁ。久しぶりに食べる」

「確かに最近來てなかったかも。昔はよく來てたんだけどね」

そう言って淺川はこちらを一瞥する。

それがどういう意味なのか分からないわけではないが、もう今の俺たちには関係のない話だった。

その意図を察したであろう彼は、微妙な空気を切り替えるかのように別の話をする。

「ねぇ、私も一口ほしいな」

片手で髪を耳にかきあげ、食べるときに邪魔にならないようにアピールしている。

々こちらへを乗り出し、じっとこちらを見つめている姿は、アイスではなく俺を狙っているかのようだった。

「……はいよ」

「ん、ありがとう。こっちも味しいね」

何か別の行を起こされる前に、素直に自分のアイスを掬って、彼の口元に差し出す。

それが口の中に達したというが親指に伝わり、雛鳥に餌を與える親の気持ちはこんなじなのかなぁとぼんやり考えていた。

「じゃあ次は私のあげるね」

「いや、いいよ。あんま好きじゃないし」

「遠慮しなくていいよ。はい、あーん」

遠慮ではなく、本當にあまり好きではないのだが。

いちご自は好きだが、アイスとなるとなんとも言えない。

だがそんな俺の思いも屆かず、彼のスプーンは俺の前に差し出される。

しょうがない、抵抗は諦めていただくとしよう。

「……あ、意外と味しいかもな」

「でしょ? そういうと思った」

「もっと濃い味かと思ったけど、爽やかで食べやすい」

「わかる。あ、このスプーンは私が持って帰るから、新しいの貰ってくるね」

「おい待て」

さらっと変態っぽいことを言うな淺川は。

先程と違いこれに関してはしっかり抵抗しておかなければ。

最終的に渋々折れてくれたが、再び同じような事があれば、その時はきっと俺に何も言わずに持ち帰るだろう。

「じゃあ俺と片山はちょっと雑談してから帰るから、二人ともまたね」

「うん、またね」

「はい、ありがとうございました」

日も暮れかけてきて、全ての任務を終えた俺たちは解散することになった。

遠ざかっていく二人の背中を見ながら、片山に今日の戦果を聞いてみる。

帰ってきた二人はなんとなくぎこちない様子だったが、あながち悪いじでもなかったため、良い語を聞けるだろうと予期している。

「で、片山。二人でのデートはどうだった?」

「よくぞ聞いてくれた宮本よ。それではこれから、俺の験した出來事を説明するとしよう」

そう言うと片山はぽつぽつと、まるで夢でも見ているかのように語り始めた。

え、またこういうじなの?

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