《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》プランA その3

いやほんと、なんていうかさ、夢のような時間だったよ……。

宮本と淺川さんのおかげで二人で行出來ることになって、まぁ最初はガチガチに張してたんだ。

また避けられちゃったらどうしようってな。

でも、巖城さんは全然そんな素振りがなくて、むしろ俺が話を振ればちゃんと返してくれてたんだ。

それでも踏み込んだ話をするのは嫌かなって思って、初めのうちは昨日のテレビとか修學旅行で食べてみたいものとか、そんなとりとめのない會話をしてた。

前まで避けられてた巖城さんとやっと話せたんだ、俺はそれだけで幸せだったんだけど、やっぱり人間ってさらに上を求めちゃう生きなんだよな。

ふと會話が途切れた時、意識したわけじゃなくて、本當に自然に俺は聞いてしまったんだ。

「そういえば、夏休みに展示會で會ったよね?」

らかい表だった巖城さんの顔は一変して、何かに焦っているような、再び前のように恐怖しているような表になってしまった。

その瞬間、あ、やばいと悟ったんだ。

でも、一度言ってしまったことは取り消せない。

俺はなんとか自分の思っていることを伝えようと、そのまま言葉を続ける。

「い、いやほら! 俺もそういう服裝大好きでさ、周りに服の話できる人なんてほぼいなくて、だからすごく嬉しかったんだ! もし嫌な気持ちにさせたらごめん!」

「……え」

ちょっとダサいが、理由を説明する俺の必死さが伝わったのか、巖城さんの目は驚きに大きく見開かれ、から滲み出ていた焦りも消えていた。

何かを勘違いしていたと理解したのか、巖城さんは言葉が途切れ途切れになりつつも口を開く。

「あ、あの……私も……嬉しい……です」

し俯いて恥ずかしそうにそう言う彼を見て、俺はもうノックアウト寸前だった。

やっと想いが伝わった嬉しさ、同志と認めてもらえた満足が俺のをなみなみと満たしていく。

きっと、巖城さんも服好きの友達がいないのだ。

「今日のサンダルもカナタのコラボのやつだよね?」

「え、知ってるんですか?」

「一眼見たときから分かってたよ。スウェットもカッコよかったよね」

「そうですよね! 買うか悩んでる間に売り切れちゃって、悲しかったです……」

警戒心が解けたおかげで一気に會話が盛り上がる。

はこんなに活発に、そして楽しそうな顔をするのかと、會話と共に鼓も高まっていく。

「人気だから仕方ないけど、ちょっと悔しいじするよね」

「わかります。次は絶対にゲットして……あ……」

勢いよく喋っていたことにようやく気が付いたのか、巖城さんは再びこまったようになると、バツが悪そうに視線を左右に彷徨わせている。

「気にしないで、俺も巖城さんと話せて嬉しいからさ」

「……ほ、ほんと?」

「もちろん。展示會で會った時から、ずっと仲良くなりたかったから。巖城さんは俺と話したくない?」

の眼鏡がに反し、その表を読み取ることはできない。

一瞬の思考の後、彼は俺の視界で唯一確認できる小さな口で告げる。

「…………話したい、です」

その時、飛び上がらずにいられた自分を褒めてやりたいくらいだ。

凄まじく喜んでいる様子は流石に気持ち悪いからな、どうにか平靜を取り繕って會話に戻る。

「ありがとう、すごく嬉しいよ。じゃあさ、お互いタメ口にしない? 友達になれたってことで」

「え……う、うん。わかった、これで良い……かな?」

不安そうにこちらを見つめる巖城さんが、推定だが、學校の人間の中では俺だけに軽い口調で話してくれる巖城さんが可くて、そこからの俺はもはや暴走列車のように會話をし続けた。

その間も彼は笑顔を増やし、二人と合流するまでにだいぶ距離がまったんだ。

殘念なことにみんなの前では口調が元に戻ってしまうが、考えてみたらそれもまたにしている関係みたいで興するな。

「……ってじなんだ。巖城さん、可くないか?」

「流石片山だ……。巖城さん可いな」

「だろ? 俺は決めたぞ宮本」

「何をだ?」

別に巖城さんがここにいるわけではないのだから、そんなに改まった態度を取る必要はないのだが。

というか片山の話、巖城さんの表現だけ無駄に凝ってなかったか?

「俺は…………修學旅行の最終日、巖城さんに告白する!」

「お……おう」

「え!? なんでそんな微妙な反応なんだ!?」

「いや、なんでって……」

そんなこと言われてもな、俺の返事は一つしかないだろう。

「そんなの分かりきってた事じゃないか」

「……確かに。やるな相棒」

むしろ、ここまで進展があって未來が見込めるのに告白しないわけがないだろう。

スーパーマン片山が、に臆病なわけでもないのだから。

「……じゃあ、次に俺が言う言葉もわかるか?」

「もちろん。一緒に頑張ろうな、片山」

「あ、相棒〜!!」

目に涙を溜めながら抱きつこうと飛び込んでくる片山を華麗に回避する。

「なんで避けるんだよ!」

「いや、服に涙ついたら嫌だから」

「あーそれは悪かった。ま、巖城さんだったら全然いいんだけどな!」

「ロマンチックな雰囲気とかで服が汚れる分には、俺も構わないぞ」

「今もロマンチックだったろうが!」

互いに笑いながら帰路へ著く俺たち。

何はともあれ、片山と巖城さんに進展があって良かった。

修學旅行も二週間後に控え、いよいよ準備も大詰めを迎えてくる。

本番で失敗することは許されない、綿な作戦を立てて、片山の就させてやりたい。

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