《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》25 契約についてのぐるぐる
私は頭を抱えていた。
個人的には、結婚も離婚も自由でいいと思っている。だから、あまり細かい事を決めたくはない。それがこの國の風土ならば尚のことだ。
だが、職人が今、この國にってきている。
養蠶、製紙工房、図版の制作、インクの制作、絹の生産。
これらは諸外國に簡単に手放していい技でもなければ、ある程度許可制にしなければ見様見真似の悪品ができたり、原料の橫流しなどで原価が高騰する事がある。
幸い識字率は低くはないし、役所も各地にあって不便はない。
そう考えると、宗教とは便利なものだと思った。神に誓えば、自ずとそれを裏切る事は心の中にブレーキがかかる。
暴力を振るわれたり、理不盡な目にあわされたり、浮気をしたりしても別れるな、というのは余りに非効率的ではある。それなら今の仕組みの方がいい。
職人……雇用に関しては、契約書をわして雇用主と働き手の間で契約をしてもらえばいい。その名簿は必ず國に提出させて、辭める時、る時にも連絡を貰う。その際、辭める理由の提出も義務付ける。技の流出はある程度は仕方がないが、それでも締めるところは締めすぎない程度にしっかりしなければ。
雇用に関して、これはまぁ後でもうし詰めていけばいい。バルク卿や現場の聲を聞いて、もっと良い方法を思いつけるかもしれないし。
「……レア」
問題は結婚と出生、死亡の屆出だ。
特に王侯貴族に関しては、しっかりとした決まりを作った方がいい。を重んじて存続している家系、そして領民をまとめて領主となる家が、平民と同じ仕組みでは混を招く。
「クレア」
はっ、として顔を上げた。手の中にあったミルクティーは、すっかり冷めてしまっている。
「大丈夫? あまり、こんを詰めないで」
「すみません、せっかくのお茶の時間に……」
「いいんだよ。私たちの結婚のことだろう? 考え込むのもいいけど、私は王太子だよ。相談してくれてもいいんじゃないかな?」
優しく笑いながら言われてしまった。私は、この國の王太子妃にはなるけれど、この國のことをまだまだ知らない。
一番近な人に相談しなくてどうするというのだろう。私は、この人とちゃんと契約をして結ばれたいのに。
冷めてしまったミルクティーを一気に飲み干す。あ、冷たくても味しいな。
おかわりを淹れてもらっている間に、アグリア殿下にも婚姻の契約について考えている事をたどたどしく話した。
平民は今のままでもいい。自分の名前の書き方も知らない農民は多い。役所に虛偽の屆出をしたところで、何か不正があるわけでもないし、夫婦だからと手當が出ることもない。
王侯貴族の婚姻と出生について悩んでいると話すと、アグリア殿下も思案顔になった。が、すぐに表を改めて笑いかけてくる。
「ほら、おかわりのミルクティーがったよ。クレア、その話は仕事中に考えよう。明日は時間を作って私もバルク卿の所へ行くから……、ちょっと、いい考えが浮かびそうなんだ。だから、今は忘れて、それを飲んだら寢よう」
「は、はい、アグリア殿下」
いい考えとは一何だろう?
私は、やはりまだこの國にとって外國人だ。
明日の話し合いまで考えるのを止めるために、溫かいミルクティーを今度は味わって飲んだ。
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