《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》93 引き籠り作戦
神のとして王室にビアンカがったのなら、私は生贄を免れる可能もある。が、まだ殆ど極事項……分の高い方ほどを抱えていることを誇りに思うものだ、まして、國教に関することとなれば……ということは、生贄を奉げリーナ神に最大の敬意を払ってからの発表になるのかもしれない。
なんだかその可能がとても高くて嫌になる。ビアンカの考えていることは……正直、私には推測は出來ても読むことはできない。思考回路が全く違うのだから、あくまでフェイトナム帝國の利となる形、という意味でしか推測が及ばないのだ。
ビアンカのきが読めない限り、私は招待をければ一緒にお茶をしなければならないし、その時が一番危ないことになるだろう。
「アグリア様、私がもしお茶に呼ばれるとしたらビアンカ王妃と二人きりになる可能が高いです」
「そうだね。……ということは、その隙間が無い程、観の予定でも詰めるかい? まぁ、優先されるのは王妃からの招待になるだろうけれど」
「できるだけ……、できることはしたいと思いますので」
ウェグレイン王國滯在時の方針は決まった。
まず、できるだけ國の観にを出すこと。その為に予定を詰めて出來るだけ王城と……できれば王都を離れること。
そのためにはウォーグ卿の協力が必要だ。観するには案と見張りがつくのは仕方がない。他國の客人に、勝手に國の中を見て回っていいですよ、なんてことはどの國であろうとあり得ない。バラトニア王國だってそうはさせない。
「お邪魔しますね」
そういって窓を外から開けてってきたのはガーシュだった。
ここは他國の城の二階である。どうしてここに集まっているのかが分かったのかは理解できないが、今の彼はちょっとした貴族のような格好だ。刺繍で重たい服だろうに、まるでそれをじさせない服裝と、髪型や立ち居振る舞いで、夜會で見かけたら溶け込みすぎて分からないかもしれない。
イーリャンだけは、誰だこの男、という顔をしているが、ポレイニア王國で散々顔を合わせていたのに、イーリャンの記憶に引っかからないあたり、印象が違うのだろう。
私はイーリャンへの説明は後回しにして、早口にガーシュに言い募った。
「ガーシュ。……ビアンカがいたわ。王妃として」
「えぇ、全く厄介なことになりました。そして、今たてていただいた作戦ですが、それはやめておいてもらえますか?」
困ったように笑ってガーシュは首を傾げた。
その理由を聞くのがとても怖いが、聞かないことには話は先に進まない。
「……何故?」
聲が震えた自覚がある。それでも、他の誰も口を挾まないので、ガーシュは窓を閉め、こちらに近寄って全員に顔を寄せるように仕草で示した。
窓の外にいても部屋の外の音すら聞き分けるガーシュである。中の會話は全て聞いていたのだろう。そして、彼は影のネイジアの部族長でもある。
私たちが摑んでいない報も摑んだはずだ。
「ひとつは、王宮に……せめて首都ですね。に、いてもらった方が護りやすい。見たでしょう? 首都以外は長閑な田園ばかりだ。あぁなると、さり気なく側にいるというのが難しい。高い木立があるわけでもないですからね」
その理由には納得がいったので、ほっと息を吐いてを抑えた。
「そしてもう一つ……、あの案役のウォーグ卿はウェグレイン國王ではなく、ビアンカ王妃とグルです。クレア様を狙っている。下手に接して隙を作るのはやめてしい」
私は驚いて目を見開いた。ガーシュは表は変えないまま、目のだけは真剣に私をまっすぐ見詰めて話を続けた。
「國王陛下は……まぁ、謁見して分かったかと思いますが、えぇー……適當な言葉が見つからないのでそのまま言わせてもらいます。馬鹿です。的で、リーナ神に心酔している。教皇については今は一言だけ、狂信者と言い切りましょう。……そして、旅の前にも言いましたが」
「この國の王室、教皇、上位貴族は……生贄の儀式、を、信じて行っている……」
「そうです。今、國王の私生児はちょうど居ない。ウォーグ卿の奧方は『前年の生贄』を産んでますので、腹を休めているところです。他はちょうど、代替わり前なので子供が産める程若い貴族のがいない。さらにはビアンカ王妃という、一番濃いを継ぐ子を産める若いが輿れした。――ま、ビアンカ王妃はうまく逃げられると思っているでしょうが、そういう水準を超えてるんですよ、この國の狂信ぶりは」
ビアンカは私を首尾よく殺したら祖國に戻るつもりだろうけれど、きっとそれは無理だろうというのがガーシュの見解のようだった。
私は元よりビアンカをそこまで好きではないので、それを忠告してあげる気はないにしても、その未來を思うとしばかりが痛んだ。
顔に出ていたのか、そんな私に向ってガーシュは首を橫に振る。
「ビアンカ王妃はまぁ、この際まだマシと思っておいてください。――時間が掛かってしまってすみませんね。先に部下に國させて田舎で経典を読ませておいたんですが……『生贄の儀式』の日取りが、ちょうど明後日なんですよ。だから國を急がせた……、クレア様が危険なことは確定的に明らか。ビアンカ王妃が貴族の誰にもされていて結婚誓約書を教會に納めていないのなら、まだビアンカ王妃が生贄になる可能もありましたが、首尾よくやられました」
あくまで私に対して殺される、とか、死ぬ、という言葉を使わないのはガーシュの気遣いだろうが、私は一人で座っていられなくなり、隣のアグリア様の肩に憑れ掛かった。
アグリア様はずっと、黙って話を聞いていた。今どんな顔をしているのか、私には顔をあげる気力も殘っていない。
予測の範囲ならまだ耐えられたが、命を狙われるのが確定した、というのは思いのほか私にショックを與えたらしい。頭の中では、それじゃあ戦爭になる、という考えと、死にたくない、というがせめぎ合って混ざり合い、他に何も考えられないでいる。
「それで、クレアを生贄に捧げることで……よりリーナ神の加護をけたとして華々しく婚姻の発表を行う、という事で合っているのかな?」
「えぇ、なんせ今からじゃ今年の生贄は間に合いません。糞が悪い話ですが……持ち回りで何人か同時に子を儲けるんですよ。國王の私生児をね。殘念ながら今年は全員流れてしまった、……そこにほいほいとフェイトナム帝國の第二皇であるクレア様が新婚旅行にやってくる。そのうえ、正當に子を産むための別の皇が輿れしている。……クレア様の護りは厳重にしますが、くれぐれも首都から出ないように頼みます。長旅で疲れた、と言って部屋で臥せってくれると尚よろしい」
アグリア様の力強い手が、私の肩を強く握る。聲を発することもできない。本當に臥せってしまいそうなほど、今の私には活力がない。
「その辺はうまくやろう。それで、ウォーグ卿がビアンカ王妃とグルというのはどういう意味だ?」
聲がい。アグリア様は、今、ちゃんと笑っているのだろうか。それとも、そうじゃない違う顔をしているのだろうか。
「國王陛下は馬鹿ですが、ウォーグ卿……公爵は違う。現國王陛下の叔父にあたる方で、信も厚い。おかげでビアンカ王妃と早々に會話をする機會をまんまと得て、フェイトナム帝國側の思に乗って、上手く國王をビアンカ王妃と共に持ち上げクレア様を生贄に……戦爭を始めようとしている。ウォーグ卿はビアンカ王妃の言いたい事を明確に理解し、しっかりとあなた方一行の案役に収まった。――やはり、確実に守る為にも臥せってもらいましょうか」
「クレア、気を確りもって。君のことは、私たちが守る。だから、君が決めてくれ」
アグリア様が発した聲は、優しいものだった。私は安心して、そっとに手を置き顔をあげた。
微笑んでいる。アグリア様は、私が強くあると、周りがそのために助けてくれることを信じて頼むと言ったことを、尊重してくれている。
私は微笑み返すと、周りの皆に目を移した。
フェイトナム帝國ではずっと貓背だった背を、まっすぐにばす。
「私はこれから、長旅と強行軍で疲労からくる病に臥せるわ。食事は慣れた味がいいとワガママを言うから、メリッサかグェンナが全て作って運んでちょうだい。ガーシュ、貴方のその恰好、王宮の中を歩き回るためでしょう? ウォーグ卿の部下にでも、もしかして収まったのかしら?」
「もちろんです、王太子妃殿下」
「ならば、貴方が用聞きにこなければ私は応答しません。イーリャン」
「はい」
「貴方にとって苦痛なことかもしれないけれど、リーナ教について手にれられる資料の全てを……理由は何でもいいわ、貴方が四神教の司祭で別の宗教について造詣を深めたいとか、なんでも……手にれて持ってきて。夜の間に読むわ」
「畏まりました、王太子妃殿下」
アグリア様が最後に私を見る。自分は何をしたらいい? とばかりに、微笑みの中に優しさを湛えた目で。
「お側に、ずっとお側にいてください、アグリア様」
「わかったよ、私はずっと、クレアの傍にいて守ろう」
もとより顔を寄せ合っていたので、私は全員の顔を見回して頷いた。
「じゃあ、引き籠り作戦、決行よ」
けない作戦名にその場にいた全員に呆れたような顔をされたが、これ以上ない明確な作戦名だと思う私は、周囲の顔にきょとんとしてしまった。
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