《【書籍発売中】【完結】生贄第二皇の困〜敵國に人質として嫁いだら不思議と大歓迎されています〜》97 ビアンカとクレア
私が人生で初めてと言っていい程一心にお祈りしていると、今度は複數の足音が聞こえてきた。
部屋の中は音がよく響くにしても、鎧の足音が複數に、ハイヒールの音、そして控えめなブーツの音と、騒がしいくらいの音だった。
助けに來たというような必死さはない。皆並足で、ハイヒールの足音に合わせてすらいる。
私はとても嫌なものを見る目で、音の出どころの方を向いた。すなわち、教皇が去っていった方向だ。
「クレア、この國で一番の布団の座り心地は如何かしら?」
「……ビアンカ王妃様。私をここから返してください。國際問題ですよ」
分かっていてやっている事だと分かっていても、私はこう返すしかない。
ビアンカの前で的になってもいい事など何もない。後ろにそぞろ兵を連れてきている辺り、私が殺せさえすればこのビアンカはどうでもいいのだ。儀式を行えなかったと教皇が騒ぎ立てたらその教皇さえ殺す気だろう。
そして、もう一つの控えめな足音は、ミリーだった。黒一の乗馬服のような服裝に、頭からマントを被っている。も潰して、ビアンカの私兵のようにふるまっている。
今もまだ無表で、何を考えているのか読めない。私のせいで彼の人生は狂ったも同然だが、かといって、ミリーに殺されてあげる気は今もない。
「問題ないわ? それはウェグレイン王國とバラトニア王國の國際問題でしょう? フェイトナム帝國は、『今度こそ』あなたという元皇を死に追いやったという名目でバラトニアに攻め込み、私は祖國のためにウェグレイン王國を扇する。バラトニア王國は屬國どころか、國名すらなくなるかもしれないわね」
「……」
こうして私にペラペラと喋るということは、私を何がなんでも殺す気だということだろう。
たぶん、上では私の捜索が始まっている。だからビアンカはここに來た。いざとなれば、連れてきた兵に私を殺させればそれでいいのだ。神の正統な筋のビアンカが命じたのだから、と多儀式を捻じ曲げられる気でいるのだろう。
どうにかして時間を稼がなければいけない、と思った。
ビアンカがここに來たということは、下手をすれば私を救出される可能があるからだ。ビアンカ自はもう教會に結婚誓約書を納めているので、ビアンカに傷をつければそれこそバラトニア王國に瑕疵のある國際問題となる。
ウェグレイン王國はもちろん、フェイトナム帝國もくだろう。つまり、私とビアンカのどちらも死んでもいけないし、傷つけてもいけない。
それが分かっていて、自ら私を見張りに來た。助けが來ても私を連れ出せないように。
まったく厄介で困ったものだ。『完された淑』として、ビアンカ程恐ろしい人はそういないだろう。
私はどうすればいいかを必死に考えた。何をすれば時間を引き延ばせるのか、助けを呼べるのか。助けを待つには、どうすればいいのか。
必死に頭を働かせている私に、ビアンカが不愉快そうに顔を歪めた。
「その顔……本當にイライラするわ。淑たるもの微笑を忘れるべからず、という教えの一つもまともにに付けられなかった癖に、知恵ばかりつけて」
余裕をなくした聲に、私は不思議そうに顔をあげた。
「何を……そんなに怒っているの? フェイトナム帝國で、私は出來損ないだった。それは変えようのない事実よ」
「なのに、バラトニア王國では次々に実績を上げて歓迎されている。それが気に食わないのよ」
昔からそうだ。ビアンカは何が憎いのか、私を面白がってこうして見下し、気に食わないと言ってきかなかった。
ふと、その事がとても大事な気付きをくれた気がして、私は時間稼ぎに必要な言葉をなんとか頭の中からひねり出そうと思考をはじめた。今は、微笑む余裕などない。
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