《[完結しました!] 僕は、お父さんだから(書籍名:伝子コンプレックス)》[2-10]モミちゃんは傑だ
黒條百合華は、油斷なくこちらに注目している人たちの視線をけ止めた。
黒條會本部である邸宅のその大広間には、黒條會の重要人である數名の幹部が顔を並べている。いずれも油斷ならない表をして、百合華の発言を待ち構えていた。
呼んだ幹部は百合華が信頼する者たちであり、黒條會の將來を擔う人たちである。
直系鬼瓦組の組長、若頭の鬼瓦丈造は黒條傘下の組を束ねる黒條會の実質的なナンバー2である。直屬の傘下である鬼瓦組は若く優秀な最適化個の組員を多く組織ないに取り込むことで黒條會の勢力拡大に大きく貢獻している。
しかし、その一方で未調整の構員から敵対視されることもなくない。こういった微妙な組の対立の深さは、鬼瓦の眉間に刻まれた皺に見ることができる。
その鬼瓦の橫には若頭補佐の真田昌人が座る。彼はモドキーズの創設者であり、その初代総長を務めた新進気鋭の人だ。
壯年以上の未調整に囲まれて、まだ二十代の最適化個でもある彼はやはり目立つ。
しかし、真田は目を細めて周りを注意深く観察しながらをひそめるように大人しくしていた。
なかなかに、わきまえのある人だ。鬼瓦が気にり深く重用するのも頷けるというものだ。
その向いに杖を突いて座る小柄な老人は直系枯木組の組長、枯木源五郎。黒條組先代組長を支え続けた老練なヤクザ者で、組の年寄衆に対して大きな影響力を持っている。一般的に未調整が中心になっている古參の組の代表格としてみなされている。
私がい頃は、よく枯木の爺に遊んでもらったものだ。組長になった私のことを今でもお嬢と呼べるのは爺くらいなものだ。
そして、最後にもう一人。
枯木源五郎の隣に座るのは、私の親友である安達紅葉。現モドキーズの総代でもある現役子高生。
モミちゃんは傑だ。
あのもどき嫌いの爺の橫に座って、堂々としていられるのはモミちゃんくらいなものだ。普通の神経を通わせた人間であれば、黒條組大幹部の爺の橫に座ることなど不可能であろう。
しかし、モミちゃんはそれをいとも簡単にやってのける。しかも、至極自然に當たり前のように。
もどき嫌いの爺でさえ、隣にもどきの子高生が座っていることに不快な様子は見せていない。そればかりかモミちゃんが先ほど、どうぞ、と言って差し出したお茶を、おおきに、などと言いながらけ取ってしまっている。
彼の天真爛漫なその立ち振る舞いがそれを可能にするのであろう。いくら私の親友でありモドキーズの総代とはいえ、このような黒條會大幹部の數名だけが許される場に同席を許されるものではない。
しかし、彼の不思議なの良さがそれを可能にしている。
さて、悪くないわね。
百合華は足を組み替えながら頬づえをついた。
この極の幹部會を開催した建前は、マリモ好き冴子からもたらされた連絡により布津野の兄様が例の中國マフィアに拐されたことが判明したことによる。鬼瓦にも枯木の爺にも兄様の救出について相談したいとしか伝えていない。
兄様を救出するのは、さほど困難ではない。
地方の中國マフィア風など、黒條會の力をもってすれば容易に叩き潰せることができる。
鬼瓦組にせよ枯木組にせよ傘下の組の協力も不要だ。直屬の組組織単で事足りる。剎那に殲滅し制圧できる。
マリモ好きの冴子のように、うろたえる余地すらありはしない。
ゆえに、だからこそ、重視すべきは過程であり、その先の未來だわ。
目の前に座る四人は、黒條會の過去と現在と未來を代表する人材だ。
舊來の極道組織に対して大きな影響力を持つ枯木の爺は、社會からあぶれだした未調整たちを吸収することで勢力を拡大してきた黒條會の伝統を代表している。
一方で、優秀な最適個を取り立て組の重要な役割を擔わせながら組の勢力と合理化を推進している鬼瓦丈造とその補佐役の真田昌人は、現在進行形で変わりつつある極道の現狀を代表している。
そして、そう言った優秀な最適化個の人材の供給源ともなっているモドキーズを束ねるモミちゃんは、未調整派の爺に対して直接コミュニケーションが取れるほどに天真爛漫である。
この三者は黒條會にかかわる人材の重要な代表者であり黒條會の將來を擔うべき存在ではあるが、この三者は立場上、微妙な対立関係にある。枯木の爺は黒條會の未調整人材の利害を代表し、それは鬼瓦組が率いる最適化個の活躍の場を阻害しているとも言える。
組の最適化個の不満はれ伝えるほどに顕著化しており、それが黒條會への會を希するモドキーズのメンバーにも悪影響を與えているのは事実だ。
兄様の救出。
それは暗雲立ち込め五里霧中のさなかにある黒條の行く末を切り開くきっかけになりえるかもしれない。
黒條百合華は四人がこちらをじっと見ている様子を眺める。その細い指で下をなでながら、今一度、思索を差させる。
黒條が抱える癌、構造的な課題や限界は世代間部対立だ。
もどき達が人し社會進出を始めてから、多くの未調整が社會での活躍の場を失い、失業した。そう言った未調整たちを吸収し大化していったのが、まさにこの黒條である。
ゆえに、黒條の古株や古參の組にはもどきの門について強烈な反対意見が強くある。
しかし、組織の將來を考えると門下に最適化個をけれないことはあり得ない。むしろ、積極的にもどきの門を推進すべきだ。極道とはいえ、いや、極道だからこそ、人材こそが組織の生命線なのだ。
だからこそ、鬼瓦組を中心とした革新派と爺が代表する保守派の対立にどう対処するかが組織の長であるわたくしの重要な責務なのだ。
黒條百合華はふっ、と息をつくように笑うとそのまま周囲の大幹部に語りかける。
「さて、夜分遅くにご足労頂き、ありがとうございますわ」
まずは爺に向かって頭を下げた。
ここで最も重要なのは爺であり、爺は誰よりも優先しなければならない。もどきであり、若輩者でもある自分が組長として黒條をまとめ上げることが出來ているのも、半分以上は爺が古參の組を統制しているからだわ。
「お嬢、話は聞いちょるけぇ。お嬢のお気にりのあの仁が、シナのチンピラに攫われたちゅう話じゃてな」
「ええ」
「ふむ。さて、どげんせ、お嬢の腹ぁ、聞かせてもらおう」
そういうと、爺はモミちゃんに淹れてもらったお茶を、ずっ、と呑む。
「ふふ、爺。腹みせろと言われてしまえば、もちろん兄様をお助けたいの一言に盡きますわ」
「そうか、では助けりゃえぇ。奴らなんぞ、ものの數ではなかろうて」
「ええ、最終的にはくびき殺してやりますが、しかし、爺に來ていただいたのは故あってのことです」
「お嬢、まどろっこしいこたぁ、なしよ。わしらは、お嬢のようにおつむは良くないが、まぁ、お嬢の腹ぁ分かっとるつもりよ」
爺は手にした湯呑の水面をじっと睨みながら、口の端を引き上げて歪めて見せた。
やがて、面を上げると向かいに座る鬼瓦丈造を見據える。
「鬼瓦の鬼どもと協力して、あの仁を助けてほしい、ちごうてか?」
「……爺、ありがとう」
「へっ、ありがとうってか。お嬢はほんに、人の使い方が上手くなった」
どこか寂しそうにそう呟く爺にむかって、目を閉じて頭を下げる。
黒條組組長の五分の兄弟である兄様を助けるために、保守派代表の直系枯木組と革新派代表の直系鬼瓦組が共闘する。これがわたくしの描いた黒條のあるべき姿だ。
相手がよそ者の中國マフィアで、救出すべき相手が未調整の兄様であることが、良いスパイスになっている。これをきっかけに、黒條の対立融和を図りつつ、最適化個の人材確保にむかって緩やかに方針を転換する。
百合華はするどく鬼瓦に向かって視線を流すと、枯木の爺に向かって言う口調とはうって変わった命令口調で問いかける。
「鬼瓦、お前も問題ないな」
「はい、お嬢の兄貴を助けるためです。枯木の叔父貴も、このたびは、貸して頂ければと」
鬼瓦は座りながらも両腕をテーブルについて深く頭を下げた。隣に座る真田もすばやくそれに倣った。
爺は苦いものを口に含んだように表をゆがめて、ぼそりとつぶやいた。
「ふ、若造だったお前も、ずいぶんと偉ろうなったもんよなぁ。鬼瓦よ」
「はい、お様で」
より一層、深く頭を下げる鬼瓦丈造の口頭部を見下ろしながら枯木の爺は目を細めた。おもむろに湯呑に手をばそうとすると、橫に座るモミちゃんが急須を差し出した。
百合華はそれをじっと観察していた。枯木の爺の目元が弓なりに緩んで、おおきに、とモミちゃんに頭を下げた。
注ぎ足された湯呑を口に含んで息を整えた爺は、思いのほか優しい顔をして鬼瓦を見下ろした。
「……此度の喧嘩。おまんとこが仕切れや」
「えっ」
鬼瓦を驚いて、皺を刻んだ眉間を開いて顔を上げた。
「鬼瓦組が仕切ればええ、枯木の一派は兵ば出す」
「しかし、叔父貴。格で言えば、ここは枯木組かもしくは姉が直々に。わしらのような新參のり上がり、でしゃばるような喧嘩じゃありませんぜ」
「そりゃ、そうじゃてな。わしかて、もどき共ばかりのおまんの組に仕切られとうないわ。しかし、それがの、お嬢が決めた黒條の將來じゃて、鬼瓦よ、おまん、お嬢の顔、泥塗るきか」
「いえ、枯木の叔父貴、滅相もない。叔父貴にそう言って頂けるのであれば、この鬼瓦丈造慎んで」
「ほれがええ、おまんとこの組は新參ゆうても、お前は黒條の若頭じゃて、そういう時代なんじゃ」
もう一度、深く頭を下げる鬼瓦と真田を一瞥した爺は、百合華を見た。
その瞳は老人のそれにふさわしいほどに穏やかで、どこか疲弊したものもあった。
「お嬢、これで、ええか?」
「ええ、爺。ありがとう、本當に」
「何、お嬢がわしらに気を使ってくれたのはしっちょきに。それに、もうわしらのような未調整の時代、とうに終わってたんじゃ」
「爺……」
「それしてもじゃ、この喧嘩が、布津野の兄貴ば救う喧嘩で良かったわ」
爺は遠くを見るように、目を細めて呟いた。
「あの仁、お嬢が惚れるだけはあるわ。初めて會った時はどこの馬骨か知らん、未調整のくせして、もどき共の味方しちょる奴やと思うとったが、あれは骨のある仁よ。のう、鬼瓦よ」
爺は、鋭い目つきで鬼瓦を見た。
「はい」
「布津野の兄貴に萬が一のこたぁ、あれば黒條の恥やと思えや! この喧嘩、気張れよ」
「はい!」
「シナのチンピラどもなんぞ、いて殺せや!」
「はい!!」
黒條百合華は目を閉じて、枯木の爺に深く謝をした。
これは黒條にとって重要な一歩になる。黒條の長を支えてきたのは間違いなく社會からあぶれだした多くの未調整たちであり、その中心組織となってやってきた枯木組を代表する古參の組一門である。
しかし、その黒條が將來にわたって存在し続けるためには、未調整を尊重しつつ主導権をもどきに委譲していく必要がある。
その困難を、源的な自己否定を、組組織を背負う爺はけれてくれたのだ。
ゆっくりと、目を開けると、狀況を真剣に見つめるモミちゃんの顔が目にった。
私がこの場にモミちゃんを呼んだ理由は彼がモドキーズの総代であるからではない。それは、彼をこの場に同席させるための建前に過ぎない。
枯木組と鬼瓦組の協力制を取り付けることに失敗した場合、彼の存在が狀況を好転させる要因になるかもしれないと期待したからだ。
仮に、枯木と鬼瓦が互いに協力を拒んだとしたら、おそらくモミちゃんはモドキーズ単獨で兄様を助ける、と言い出すだろう。
その時、わたくしが直接モドキーズと枯木一派と鬼瓦一派を直接指揮すると提案することで建前上の協力関係を演出する腹積もりだった。
しかし、どうやらその策は不要だったらしい。モミちゃんには無駄足を運ばせてしまったわね。
黒條百合華は謝意を込めて、紅葉に笑いかけた。
「モミちゃんも、ご足労ありがとうね」
「ううん、クロちゃ……、じゃなかった黒條會長さん。モドキーズはどうしたらいいのかな?」
「そうね、枯木と鬼瓦がいるから戦力は十分よ。あまり未年を危険な目に合わせるとお上がうるさいわ。今回は私たちを信用してちょうだいね」
「うん、そうだね」
そう了承してくれたモミちゃんは、左右に気を遣うように周りに視線を配った。
「ねぇ、私も布津野先輩を助けに行ってもいいでしょ?」
「あら、モドキーズ総代が直接?」
「モドキーズは関係ないよ。私が先輩を助けるの。モドキーズのみんなには申し訳ないけど、このことは黙っておくよ。先輩が攫われたなんて知れたら、モドキーズのみんな、一萬人が駆けつけちゃうからね」
「あらあら、それは面倒ね」
わざと困ったように首を傾げて見せてみた。
殘念ながらモミちゃんを止めることは不可能だろうし、正直なところモミちゃんが要れば心強くもある。さて、どうしようかしら、とりあえず黒條組直屬の預かりとして私の傍にいてもらおうかしら。
「もどきの嬢ちゃん、ふかしよるわ」と愉快そうに爺が口をはさむ。
「む、クロちゃんのお爺ちゃん。私は強いんだぞ」
「そうか、そうか。しかし、嬢ちゃん、これは人が死ぬ喧嘩ぞ」
「それって、つまり、先輩が死んじゃうかもしれないってことだろ。だったらなおさらだよ」
「むぅ」
ぐいとを引き絞った真剣なモミちゃんの目に覗き込まれて、百戦錬磨の極道である爺が思わずたじろいだ。
これは、なかなかに面白い展開だ。
さて、これはどうしようかしらね。面白くなってきたわ。
などと考えながら、たじろぐ爺の姿を見て楽しんでいると、橫から鬼瓦が聲をかけてきた。
「お嬢、実は知らせたいことがありまして」
「あら、何かしら」
「実は、布津野の叔父貴のご子息についてです」
「あら? それはそれは、もしかしてロク君のことかしら」
「ええ、髪の白くて量がえらい良い」
百合華の口がニンマリと引き上がる。
鬼瓦の口から彼の名を聞けたことは、なにか運命じみたものをじる。思わず口元がゆるんでしまうのを抑えることができない。
「ここに來るまでの道中で彼を見つけたのでここまで同行してもらいました。実は別室で待たせています」
「あら、鬼瓦、それは、それは。とても大切なことじゃない」
「ええ」
「これはとても面白くなってきたわね」
黒條百合華は、まるでアネモネの華のように艶やかに笑った。
◇
「さて、初めの一言が大切だと思うのよね」
「……」
黒條百合華は、ロクを見下すように品定めするように見下ろした。
ロクは百合華を見上げながら口元を歪ませている。それは百合華が浮かべる笑顔とは対照的に、ひきつっていて、彼の困を如実に表していた。
百合華が鬼瓦丈造に案された控えの部屋には、鬼瓦丈一郎とロクが二人で控えていた。百合華はついてきた丈造と真田そして紅葉を引き連れて部屋にるなり、開口一番にそうロクに問いかけたのだ。
「興味深いのはまるで珠玉の戯曲のようにそれぞれの思が差して直していないこと。その中心にいるべきロク君が、お上の重要人であり兄様のご子息が、ここにいて両膝を抱えて座り込んでいるのは、さてさて、どういうことかしら」
今にも鼻歌でも歌いそうな様子で百合華はそう口ずさんだ。
チラリと百合華が目線を下ろすとロクと目が合った。ロクの目はし怯えているように見えた。
あのロク年が怯えている。
その事実に百合華はゾクゾクとそそられた。
まるで家出した子のようなロク年の目を見て、この不遜な天才にそんな目をさせる可能を百合華は検討すらつかなかった。
そう、この私が検討すらつけることが出來ないのだ。
ふふん、とわずかに鼻歌をこぼして百合華は慌てて口を抑える。
「さて」
そう口にしながら、百合華は思考を整える。
さて、本質を抉りながらも本質を傷つけない問いかけをしなければならない。それは難題のように思われたが、彼はすぐに無難な妥當解にいきついた。
もとよりロクにこのような顔をさせ得る存在を、私は一人しか知らない。
「さて、ロク君。兄様が攫われたようだけども、貴方はどうするのかしら?」
「……」
ロクの歪んだ口が、グイと引き結ばれて、怯えた目は今にも泣きそうなほどに揺らぎ始めた。
百合華は高揚に吐息をらす。
もうし彼をいじめるべきだろうか、と思い悩む。もっと彼が苦しむのを鑑賞したいような、彼を救ってやりたいような、錯綜した倒錯衝にが高ぶっている。
貴方は件の中國マフィアについて自分に一任しろといったわよね?
貴方はそれでも品種改良素なのかしら?
貴方はそれでもあの兄様の息子なのかしら?
どれが彼をより傷つけるだろう。どれを選べば彼を泣き喚かせることが出來るだろうか。ああ、これを選べなんて何という至福。
それとも、彼に救いの言葉をかけてみるのもいいかもしれない。さぁ、私たちと一緒に兄様を救いにいきましょう。とでも言ってみようかしら? そうすれば、彼は尾を振り回してついてくるかもしれない。
さてどちらにしようかしら、と百合華が思い悩んでいると、橫についてきた紅葉がロクに話しかけた。
「ロク君! 布津野先輩が大変なんだ。一緒に助けにいくよ!」
「紅葉、先輩……」
あら、モミちゃんに取られちゃったわ。
「……でも、僕は」
そう言い淀みながら、ロクは俯(うつむ)いた。
百合華は一層、興味が湧いた。
どこか彩を欠いている。常ならば、このような狀態において率先して問題の解決にあたっていたはずだ。
百合華は先ほどにあった冴子からの電話を思い出した。
狀況から察するにこの問題に対して対応の陣頭に立っているのは冴子のようだ。そしてロクがこの事態に対してここにいることはどういう狀態だろう。
しかし、そのような百合華の思考よりもはるかに速く、紅葉はずいと前に出てロクの両肩を摑んだ。
「しっかりして! 貴方はロク君でしょ」
「先輩」
「貴方のお父さんが大変なんだよ。ロク君がどうにかしなきゃ、おかしいでしょ!」
百合華は思う。
モミちゃんの言葉はいつも、力強い説得力に溢れているわ。
紅葉はそのままロクをぎゅっと抱きしめたかと思うと、次はバンバンと彼の背中を數発叩く。
當のロク年はモミちゃんの大きなの中に抱きすくめられて、モゴモゴとあがいている。しかし、も懐もとても大きなモミちゃんはロク年が苦しそうにしているのも構わずさらにギュッと抱きすくめながら、まるで母親のように優しく問いかけた。
「さぁ、ロク君。しっかりして。私と一緒に先輩を絶対に助けるよ」
「……ひゃい」
モミちゃんのに挾まれたロク年の口からは、変な返事が飛び出てしまった。
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