巻き戻されたのは、士學校卒業日の朝であった。

眩しい日差し。

し寒い覚が鮮明に伝わってくる。

──この日か。

俺の記憶が正しければ、この日がちょうどレシュフェルト王國とヴァルカン帝國の間に火種を作る決定的な慘事が起こる日でもある。

厄日そのもの。

一般人からしたらそうなるのだろうけど、俺からしたらやり直すきっかけ與えてくれる日。

悲観はしていない。

はその逆、まだなんとかなるという希があった。

「はぁ、卒業かぁ。なんかまだ実とかねぇよなぁ……」

「ああ、そうだな」

スティアーノと士學校に向けて歩きつつ、俺は今後について考えていた。

彼も今後のことを々考えているみたいだが、俺のとはまた意味合いが違う。まだ見ぬ己の未來を思い描き、希にを膨らませていることだろう。

……俺はそうじゃない。

絶的な結末を知っているからこそ、その未來をどう生き抜くか、あるいはどう変革していけるのか、ということをずっと考えている。

「なぁ、アル。卒業したらお前も王國騎士団にるんだったよな？」

スティアーノがそう言った。

その通りだ──その通りだった。

俺は既に王國騎士団への団を決めていたんだ。

定もしている。

試験もかり、一月後には王國騎士団として任務に従事することになる。それなりに恵まれた進路。

本來の道筋を辿るのなら、そうなっていたのだろうな。

だが俺は──。

「…………スティアーノ、俺さ。王國騎士団にるの辭めるよ」

踏み間違えた道を再び歩むつもりは頭ない。

その道を歩んだところで、俺には後悔する未來しか殘されていないのだ。

ヴァルトルーネ皇とは敵同士になり、彼の優しさを知りながらも、王國のために帝國軍と爭い続ける。

そんな未來を知っているからこそ、俺はこの分岐點において、あの時とは違う選択を取るべきだ。

「おい、騎士団にらないって……！」

噓だろと言いたそうなスティアーノが何か言い出す前に俺は告げた。

「これは本気だ。冗談とかじゃない」

「そ、そうか」

「急で悪い。けど、もう決めたことなんだよ」

本當に急に決めたことだ。

そもそも、俺はこの場所にいる人間じゃないのだから。

「なんか、お前らしくないな。アルディアはもっと計畫的に考えてくやつだと思ってた」

「俺も……そう思ってたよ」

士學校の頃が懐かしい。

俺は士學校時代も計畫的に過ごしてきた。

自らの実力を調整し、平凡になるように努めてきた。

王國騎士団にれたのも、かなりギリギリのところだったそう。

「こんな機會もうないかもだぞ……」

「かもな。俺の績じゃ、定したのが奇跡みたいなものだし」

スティアーノは悲しそうな顔をする。

俺と一緒に王國騎士団にるのを楽しみにしていたスティアーノ。

団してから配屬されたのも同じ部隊で、俺とスティアーノは學園時代同様に毎日顔を合わせていた。

そんな彼を俺は救えなかった。

だからもう、王國騎士団にはらないと今この瞬間に誓ったんだ。

そして、俺はもう一つ。

目の前にいる男を救いたいと思っている。

──お前が死んでいくのを俺はただ見ているだけだった。

でも、今ならもしかしたら、

「なぁ、スティアーノ。……これは個人的な相談なんだが」

俺は足を止めて、スティアーノの手を摑む。

スティアーノも俺のただならぬ雰囲気をじ取ったのか、真剣な面持ちになっていた。

「……なんだよ？」

「無理な相談なのは分かってる。けど、出來ることなら──卒業後……俺と一緒に帝國へ渡ってくれないか？」

──何故？

……と彼は思ったことだろう。

當時の俺はヴァルカン帝國に興味を持っていなかったのだから。

卒業後の進路だって、レシュフェルト王國で決めると、無意識に決めつけていた。

こんなことを言い出したのは、俺が人生二周目だから。

俺はもうあの頃の俺ではないのだ。

ハイファンタジー日間ランキング22位に上がりました。

ブックマーク、高評価をして下さった皆様、

ありがとうございます！

まだの方は是非、ブックマークをしていただけると嬉しいです！