「えーと、ミア？　どこら辺から聞いてた？」

「ん？　いや、ほとんど聞こえなかったんだけど、『戦爭』とか『守って』とかって単語が聞こえてきたからさぁ。えっ、何？　これから戦爭があるの⁉︎」

ああ、良かった。

特に重要な容は聞かれていなかったようだ。

……多分、これから戦爭が起きるってことは勘付かれちゃったみたいだけど。

俺とヴァルトルーネ皇が二度目の人生を送っているなんて知られたら大変ななことになってしまうだろう。発言には気をつけなければ。

「ねぇねぇ、アルっち？　戦爭なの、ねぇ？　答えてよ〜」

いけないいけない。

焦ったあまりミアのことを放置して考え込んでしまっていた。

途中の騒な単語を聞かれてしまった以上、俺とヴァルトルーネ皇の話していた容を完全に濁しておくというのは不可能だ。

けれども、俺からそれを告げるのは違う。だから俺は、ヴァルトルーネ皇に視線を向けた。

彼も、俺が何を言いたいかということを理解したようでコホンと軽く咳払いをし、ミアの注意を自分に向けるようにしていた。

「ミアさん、私から簡単に説明させて頂きます」

「…………」

「まず、戦爭が起こるのか起こらないのか、という件ですが……」

「うん」

「恐らく、數年以にヴァルカン帝國とレシュフェルト王國の全面戦爭が引き起こされるでしょう……あくまでこれは、仮説ですが、將來的にはほぼ確定で戦爭になるかと」

ヴァルトルーネ皇はそうミアに説明をする。

未來の戦爭を知っている俺とヴァルトルーネ皇からしたら、『仮説』なんて楽観視は一ミリたりともしていないが、斷言するのはそれこそ怪しい。

彼の説明はとても合理的であった。

「そうなんだ……ひょっとして、アルっちと騎竜に乗らなかったのは、それに関することの話し合いをするため？」

「そうですね。アルディアにはこの容を共有していたので、今後のきについてのり合わせをしようと思っていたところです」

間違ったことは言っていないな。

きっとヴァルトルーネ皇は、レシュフェルト王國との戦爭が起きる前に々と先回りするための計略を練ろうとしていたのだと思う。

前世の記憶を共有している者同士。

失敗を知っている者同士だからこそ、対策を立て易いというわけだ。

「なるほど、えっとなんでヴァルカン帝國とレシュフェルト王國が戦爭になるか聞いてもいいですか？」

ミアはこれまでよりも真面目っぽい顔でヴァルトルーネ皇に詰め寄った。ヴァルカン帝國出の彼にとっても、今話した容は他人事ではないからだろう。

ヴァルトルーネ皇も隠す素振りを見せず、素直に口を開いた。

「私が、レシュフェルト王國の第二王子……ユーリス王子との婚約を解消されたからです。婚約解消に伴い、王國と帝國の友好関係は悪化することでしょう」

瓦解する関係をヴァルトルーネ皇は示す。

そのことを聞き、ミアの顔が変化するのを俺は見逃さなかった。

彼が怒りのを抱いたのが瞬時に分かった。

──あのユーリス王子に対して、思うところがある人はなくない。だから、ヴァルトルーネ皇は続けて話す。

「そこから戦爭に発展するか……それは私にも分かりませんが、破綻した関係が修復されることは難しいことです」

壊れたものは簡単に治せない。

失った信頼も。

愚かな行の代償も。

それらは全て、災いを招いた者に返ってくるのだ。

もう両國の関係悪化は始まりかけている。

止めることなど、ほぼ不可能なこと。

だからこそ、人を選択を迫られる。

何を信じて、突き進むかということを──。

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