それは初耳であった。

戦爭の原因が、まさかレシュフェルト王國側から作られたものだなんて。

ヴァルカン帝國の宣戦布告からあの戦爭は始まった。

俺はずっとそう思い込んでいた。

しかし、真実はまた別であると彼は言った。

「なん……っ、え？」

「驚いたかしら？」

「そりゃ、そんなこと全く知らなかったし」

でも、何故？

レシュフェルト王國から先に仕掛けたのなら、どうして前世の戦爭ではヴァルカン帝國が始めた戦爭であるとみんなが思い込んでいたのだろうか。

世界各國がヴァルカン帝國との敵対を表明した。

今思えば、それは骨なものであり、何かの思が蠢いていたのではないかとじてしまう。

「俺はてっきり、ヴァルカン帝國が戦爭を始めたのだと思っていました」

ヴァルトルーネ皇は俺の言葉を否定も肯定もしなかった。

ただ、微かに微笑むだけ。

「そう、よね。貴方がそう思うのも無理ないわ。対外的に見れば、ヴァルカン帝國が急にレシュフェルト王國へ宣戦布告したように思えるはずだもの」

『対外的に』……か。

つまり、レシュフェルト王國の侵略行為の証拠は存在していないということか？　いや、それなら前世の世界でも、その事実が明るみになる可能だってあっただろ。

ヴァルトルーネ皇がそれを知っているのであれば、それが出來たはずだ。

にも関わらず、この戦爭はヴァルカン帝國が始めた悪きものであると世界中に認知されていた。

「……詳しく聞かせてください」

無知というものは恐ろしい。

知らなければ、あたかも本である報にまんまと踴らされることだって沢山あるのだから。

「良いわ。アルディアには話しておきたいもの。この戦爭の原因と私の目指すべき場所を──」

▼▼▼

ヴァルトルーネ=フォン=フェルシュドルフ皇。

前世での彼は、自らが前線に立ち、レシュフェルト王國軍との戦いにを投じていた。

彼は終始帝國の皇らしく戦い、散っていった。

それに関しては俺が一番良く知っている。彼の最期もちゃんと見屆けたのだから。

さて話は変わるが、今生のヴァルトルーネ皇は戦地を転々とすることをんでいないようだ。

その理由は、

「私が……ヴァルカン帝國を導くわ。どんなに苦しく挫けそうになるような道だろうとも、私は諦めたりしない」

どうやら彼はヴァルカン帝國の皇ではなく、その更に上へ──皇帝になることをんでいるのだ。

確かに彼が皇帝になることが出來れば、未來を大きく変えるきっかけになるだろう。しかし、それは簡単なことではない。

「ヴァルトルーネ皇殿下は、皇帝になるのですね？」

「ええ。そのために今すぐ、ユーリス王子との恨を斷ち切らなければならないわ。彼がいずれ告げてくるであろう侵略の話を聞いて戦いの準備を進める父上を説得しなければならないもの」

かつてのヴァルカン帝國は、結論を急ぎ過ぎた。

それ故に公に攻撃される前から戦う宣言をしてしまったのだ。

ヴァルカン帝國の威厳というものを維持しておきたいという考えの下、そういう結論に至ったのだろうけど、先に手を出したという形になってしまえば、他國からの心象は悪くなる。

つまり、今回はあえて後手に回ることが必要なのだ。

レシュフェルト王國から仕掛けさせる。その上で、かつて敵國だった周辺國家からの反を生じさせないように立ち回る。

「侵略行為の発案は、ユーリス王子……でしたか？」

「ええ、私との婚約破棄に続いて、畳み掛けるように彼は、ヴァルカン帝國の領地であるディルスト地方を明け渡すように告げてきた。勿論、帝國の大切な領地を手放す気はありません」

「徹底抗戦、ですね」

「そう、対立姿勢を鮮明にさせる必要があるの」

ただ、向こうから仕掛けてくるのを待つということは、先制攻撃は敵に打たせるということ。

迎撃戦か……。

敵をい込み、迎え撃つ戦い方は俺の得意分野。

問題は、先急ぐヴァルカン帝國を諌めつつ、ヴァルトルーネ皇が帝國全土の指揮権限を掌握すること。彼自、ユーリス王子との婚約破棄をけ、ヴァルカン帝國での立場は、ほんのしだけ悪化した。

ヴァルトルーネ皇が皇帝になる道は中々ハードな目標だろう。

それを分かった上で、ヴァルトルーネ皇はその座を手にれようとしている。

ならば俺は、

「ヴァルトルーネ皇殿下」

「────」

「俺が必ず、貴が皇帝になれるように盡力します！」

彼の恩にひたすら報いるとしよう。

それがどれだけ、茨の道だったとしても、だ──。

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