《反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】》【25話】激の歴史が幕を開ける日

レシュフェルト王國國王陛下ダグラス=レト=レシュフェルト。

威圧があり、數段高い場所にある玉座から俺とヴァルトルーネ皇を見下ろす様は、まさに支配者の顔である。『婚約破棄』の単語を聞いた瞬間、その瞳は一層鋭くなり、敵を殺す矢のようなものへと変貌。

現在は、胃痛と止めどない悪寒に襲われつつも、婚約破棄に向けての手続きが進んでいた。

「汝は、我が息子との婚約を解消したいと……そう申すのだな」

重厚のある聲音が玉座の間に響き渡る。

ヴァルトルーネ皇でさえ、し顔が強張っているが、流石に覚悟の出來た彼だ。

「いえ、正確にはユーリス第二王子殿下がおっしゃられたことにございます。彼にとって私では婚約者として務まらないと」

それを聞き、國王ダグラスはし離れた場所にいるユーリス王子に視線を向けた。

「ユーリスそれは、誠か?」

ここで彼が惚けた顔をして、ヴァルトルーネ皇に全責任を負わせるようなことがあれば、今俺の懐にある切り札を出す。

張の瞬間。

しかし、それは全くの杞憂であった。

「はい。その通りです父上! こんな態度のデカい他國の皇など、俺に相応しくありません」

簡単に言えば、ユーリス王子は馬鹿であった。

彼が婚約破棄をみ、ヴァルトルーネ皇がそれを國王陛下に申し出ている。

この構図が意味することは、ヴァルトルーネ皇にとって有利な展開。先に婚約破棄の意思を持ったのがユーリス王子である以上、國王ダグラスがその婚約破棄を無理やり無かったことにするなど出來るはずがない。

「なるほど……」

ああ、良かった。

ユーリス王子も婚約破棄をしたがっているのだから、こうなることは必然だったか。まあ、今更何を考えようとも、彼の一言が國王ダグラスに屆いた時點でこちらの勝利はほぼ決まったようなものだ。

「國王陛下……婚約破棄、認めて下さりますよね?」

ヴァルトルーネ皇がそう尋ねる。

「……分かった。ユーリス=レト=レシュフェルトとヴァルトルーネ=フォン=フェルシュドルフの婚約をここに破棄することを宣言する!」

今この瞬間から、両國間の関係は悪化の一途を辿ることだろう。

けれども、曖昧な繋がりは確実に絶てた。

ヴァルトルーネ皇は晴れやかな表を浮かべていた。

「貴重なお時間を頂いたこと、心から謝申し上げます」

ユーリス王子はその様子をほくそ微笑みながら、眺めていた。

だが、彼の立場もこの瞬間終わりを告げることだろう。

次期國王になるのは、恐らく第一王子。ユーリスはヴァルカン帝國皇との婚約という後ろ盾を失い、國王の座に座ることは限りなくゼロに近付いた。

──大人しく婚約を続けていれば、戦爭も起こらず、治世の王として安定した人生を送れただろうに。

「これでやっと、レシアとの新たな人生を送れるな!」

──聖だかに振り回されて、輝かしい人生を棒に振った愚かな王子。まあ、それが理解できるのはまだまだ先のことだろう。今はまだ束の間の喜びを堪能させてやろう。

浮かれるユーリス王子を目にヴァルトルーネ皇が立ち上がるのを見て、俺も床から膝を離した。

「それでは、これにて失禮致します」

用は済んだ。

そう言わんばかりにヴァルトルーネ皇は退散の姿勢になる。

「おい、ヴァルトルーネ」

「……なんでしょうか?」

「殘念だったな、俺に見捨てられて。お前はもうレシュフェルト王國の次期王妃の座には著けない」

「でしょうね」

ヴァルトルーネ皇は靜かにそう告げ、そのまま立ち去る。

彼の告げた言葉はそっくりそのまま彼自に跳ね返ることも、ヴァルトルーネ皇は分かっていただろうが、それを教えてあげることはなかった。

ユーリス王子の言葉が彼の心に響くことはもうない。

殘念だった?

次期王妃になれない?

実に面白い。

がそんな地位に収まる程度のにしかなり得ないと本気で考えているのなら、ユーリス王子は蕓者の才能がある。

ヴァルトルーネ皇は、王族、皇族の一人で終わるような人ではない。

その頂點。

は皇帝を目指す気高きなのだ。

「ヴァルトルーネ皇殿下……ユーリス第二王子との正式な婚約破棄、おめでとうございます。心より祝福申し上げます」

ユーリス王子への皮も込め、ヴァルトルーネ皇にそう言葉を贈る。彼もこちらに視線を向け、口元を綻ばせた。

「ええ。ありがとう、アルディア。これでやっと先に進めるわ」

まだまだ先は長い。

ヴァルトルーネ皇がヴァルカン帝國の皇帝になる未來。

それは、茨の道であると共に塗られた暗い運命を打ち砕く歴史の幕開けとなるだろう。

俺は彼の進む覇道を共に歩む。

共に傷を負い、苦しみながらもヴァルトルーネ皇が最後の目的地に辿り著くまで──支え続ける。

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