《反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】》【30話】ヴァルカン帝國へ

イクシオン王子との會談は滯りなく行われた。

ヴァルトルーネ皇の目論見通り、彼はヴァルカン帝國側に味方してくれると約束してくれた。

まあ、口約束である以上、どれほど信用していいのか俺にはさっぱりであるが。

王城を離れ、俺とヴァルトルーネ皇は用意された馬車に乗り込んだ。

このまま俺とヴァルトルーネ皇はヴァルカン帝國の首都アルダンに向かう予定である。

「あの、ヴァルトルーネ皇殿下」

「何かしら?」

「イクシオン王子殿下の件ですけど、本當によろしいのですか?」

道中で、俺はヴァルトルーネ皇にそう聞いた。

馬車では、俺とヴァルトルーネ皇が顔を合わせるように対面して座り、彼は首を傾げながら俺の言葉に聞きった。

ヴァルトルーネ皇がイクシオン王子とした約束。彼を次期レシュフェルト王國の國王にするという容についての話だ。

「イクシオン王子は確かに聡明な雰囲気がありました。ヴァルトルーネ皇殿下の言っていた通り、誠実そうだったし、優秀さは確かに伝わってきました」

けれども、彼はレシュフェルト王國の王子。

王位継承に絡まないとはいえ、あそこまで簡単に話が進んだのは些か不自然にじた。

もうし葛藤とか、戸ったりした様子を見せても良いのではないかと思うほどにイクシオン王子は落ち著き払った態度で黙々とこちらの要求を呑んでいた。

それが逆に不安要素として心に引っ掛かっている。

「アルディアは何が言いたいの?」

「順調過ぎるなと、そうじただけです。彼が裏切るという可能があるんじゃないかと不安なんですよ」

俺がそう告げるとヴァルトルーネ皇も「なるほど」と相槌を打つ。

次期國王にしてやるという彼の言葉はイクシオン王子にとって相當魅力的な話だ。けれども、他國の皇が示した言葉をそう簡単に信じるのだろうか。

「心配いらないわ」

俺の不安をよそに、ヴァルトルーネ皇は俺の橫に座る。

何故、席の移をしたのだろうか。そのまま彼は俺の手の甲にそっと自分の手を添えた。

思わずドキッとしてしまう。

の行の意図が摑めず、そのまま背筋を固めていると靜かにヴァルトルーネ皇は話し始めた。

「イクシオン王子が裏切る場合も想定しているわ。彼は多分裏切らないだろうけど、その辺は抜かりないからアルディアは安心して、私に付いてきて」

「はい……」

「本當に大丈夫。私たちのむ未來は確実に近付いて來ている」

がそう言うのであれば、盤石な足場を固めることは容易であるはずだ。俺はヴァルトルーネ皇のためにやれるだけのことをやる。

「ヴァルカン帝國に戻ったら、まずは何をしますか?」

「そうね……私がイクシオン王子と通じているように、ヴァルカン帝國にもレシュフェルト王國の上層部と繋がっている者がなからず存在するわ」

両國の戦爭になった場合、側に危険因子が潛んでいるのは、後々不利になる。

膿は徹底的に出し切るってことか。

ヴァルトルーネ皇分の関係で派手にはけない。

「ヴァルトルーネ皇殿下、ヴァルカン帝國の調査、俺が擔當します!」

だから、その役目を俺が擔う。

の手足となり、全てがヴァルトルーネ皇む未來を摑み取るための足掛かりとなるように──。

「ええ、でも貴方だけに任せるつもりはないわ。大変だもの」

気を遣った言葉の中には、彼みがけて見えた。

やはり、俺だけではやれることにも限界があると分かっているのだろう。

「では、他の者にも任せるということですね」

「その通りよ。有能で信頼できる人に目星が付いているの。その人たちを仲間に引き込めれば、後々の事がスムーズに進む」

やるべきことはまだまだ多そうだ。

けれども、ヴァルトルーネ皇はそれ以上に実績をあげるつもりだ。

俺はただ彼に付き従い、最善を盡くすとしよう。

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