爭いはすぐに始まった。

アルに斬りかかる無謀な挑戦者が一人。

兵士であるから、戦場で戦った経験はあるのだろう。

それなりに剣筋がいい。

「死ねぇ！」

殺気を振り撒いて、アルの心臓を狙っている。

試合なんかじゃなくて、あわよくば殺してしまおうという気持ちが前面に表れていた。

──でも、アルにはその剣じゃ、屆かない。

アルは軽くを逸らしてその攻撃をかわす。

矢継ぎ早に剣が振られる。

しかし、それがアルに當たる気配は全くない。

「おお、素晴らしいのこなし……」

父上も彼のことをし見直したような表を浮かべている。

平民で平凡な、この前まで學生だった男。

それが私の専屬騎士になるなんて、本來なら許したくはなかったことだろう。

でも、私が初めて選んだ専屬騎士。

父上は黙ってそれを許してくれた。

──嬉しい。アルの強さを示せていることが堪らなく嬉しい。

「アルは、士學校時代は平凡な績でした」

「そのようだな。諜報員に調べさせた結果は我も知っている」

「ですが、彼には人並みならぬ才能がありました。それが花開いたのが、ごく最近なのです」

でっちあげ。

彼は元から強かった。

その強さを明確に誇示することがなかっただけで、士學校にった頃から、彼の化けじみた能力は既に──。

とにかく、今この環境下で彼はその実力を解した。

私の専屬騎士となり、彼は全力で戦うことを選んでくれた。

「だが、あの人數が一斉に攻撃をしたら流石に……」

負けると？

父上はまだ、彼の本領が見えていない。

「負けませんよ。アルは最強ですから」

力押しするだけが彼の実力ではない。

「おい、全員取り囲め！　タイミングを合わせろ！」

「調子に乗るなよ！」

「平民は平民らしく、地べたに這いつくばれ！」

父上の予想通り、彼らはアルの前後左右を固める。

アルの実力の高さを再確認し、本気で潰しにかかっているのだ。

しかし、その生半可な包囲網では、

「んなっ⁉︎」

──アルのきを止めることはできない！

誰もが驚くほどの跳躍によって、アルはその包囲を簡単にする。

そして、近くにいた者をしっかりと毆打。

一人、また一人と彼のと剣によって倒されていく。

彼の取り柄は剣のみではない。

高い能力はもちろんのこと。

攻め時の判斷。

「ぐあっ！」

──そして引きの判斷。

「當たらねぇ……！」

戦況を客観的に捉えて、次にどうくのが最適解であるかを正確に導き出せる。

天の戦闘センスは他の人には真似できないことだ。

「あれを回避して、反撃に繋げるか……どうやら彼のことを相當過小評価していたようだ。あれほどの剣の使い手、帝國にもそういないだろう」

父上も彼の秀でた部分を垣間見た。

これで、彼に対する不信は多拭われたことだろう。

窓の外を吹く風が心地よい。

ああ、本當に気分がいいわ。

アルの戦をそのまま見続ける。

幸いにも、彼自が手加減してくれているおで、大量の鮮が飛び散るという事態は免れている。

殺す気で向かってくる相手に対して、最低限の損害を與え続ける。一歩間違えば、己の命が危ないというのに……。

誰でもやれることじゃない。

彼自の技量と度。

それらが合わさって初めて至れる境地。

「くそがぁっ！　……へぶっ！」

半狂の兵士に怯えもせず、ただ黙々と無力化している。

「あの速度……彼は本當に人間なのか？」

父上ですら人間かと疑うほど。

「もちろん人間ですよ。私の大事な専屬騎士ですから」

やはり、アルの力は比類ないもの。

彼の才能は今、こうして証明された。

各方面へのアピールにもなるこの騒は私にとって有利に働いてくれるでしょう。

上々の結果ね。