──気が付いた時には、中が塗れでした。

返りもあるが、その大半は私自から流れ出た。

手の爪はボロボロに割れて、

足には大きな切り傷か殘る。

普段から崇められている私の面影は微塵もなく、ただ戦地で殺されかけた死にかけの人みたい。

──痛みはあまりじなかった。

見た目ほど傷口は深くなかったから。

深く斬られなかったから。

手加減されていたというか……対峙したあの真っ黒な騎士には迷いが見えた。

彼が死に狂いで私を殺そうとしたならば、きっと片としてバラバラに刻まれていたと思う。

「うっ……」

口から吐き出したのは、大量の。

傷は深くなくとも、傷はかなりの數になっていた。

「諦め、ない……私は！」

1人で歩む帰路。

周囲は暗く、救いのない景がずっと先まで広がっていた。

人の姿に戻り、もう蛇の姿を維持する余力すら殘っていない。

でも、聲だけは出る。

掠れたから、搾り出した聲は案外普段と変わらないようにじた。

「…………もう、失敗は、許されないのに」

過去の過ちだけが殘っている。

記憶はなくとも、かつての私がどのような末路を迎えたのかはなんとなく分かる。

運命を変えなければ、

そうでないと、誰も報われない。

「選定者を──この世界を、変える存在を見つけないと」

このままだと、この世界自が崩壊する。

それを自覚していながらも、今回の大敗によって救済すべき道は高い壁によって遮られた。

あの黒騎士は、この世界において最も厄介な存在かもしれない。

本來であれば、私に傷をつけることさえ不可能なこと。

そう、常人であれば、私の命に刃を突き立てることは原理的に無理なこと。

だから、外的要因によって、私が死ぬことはない。

──そのはず、だった。

「回帰前の私は……あんな化けとどうやって渡り合ったというの？　うぇ……っ！」

吐き気が止まらない。

最悪な気分なのは、目先に発生した大きな反分子の存在が深く起因していた。

真っ赤なを通りに道に殘しながらも、私はゆっくりと歩みを進めた。足は重い、けれどもあの黒騎士が追ってきていたらと考えると、歩みを止めることさえ恐ろしい。

──帰らなければ、今はただレシュフェルト王國の領地に戻らないと。

その一心だけで私はいている。

まだ繋がるはず。

「記憶を殘している……希となる存在を、早く探し、出さなきゃ……」

それができなければ、聖レシアとしての役割を果たせたとは言えない。

この世界は戦に焼かれる。

荒廃もする。

けれども、問題はそこではない。

「悲劇が起こるまで、もう時間がない……」

世界崩壊の危機が待ちけているのは戦後のことだ。

記憶には殘っていなくとも、そう本能に刻まれている。

だから、レシュフェルト王國には、いち早くヴァルカン帝國を滅ぼしてしい。そうして、ヴァルカン帝國にあるあの土地を活用して、本當の敵を討たなければならない。

前回の世界線よりも、もっと早くに対策を立てなければ、いけない。

私に記憶が殘っていない以上、記憶のある者の力を借りなければどうにもできない。だから今回の戦いは絶対に勝っておきたかったのに……！

「もう、奪わせたりは……しない！」

私がもっと頑張らないと。

多くのものを救うために、やれることをやり、各地を奔走しなければいけない。

でないと、

──人類はまた、滅びてしまうのだから。

【皆様に重要な、ご報告】

この度ありがたいことに。

『反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士』

の【書籍化&コミカライズ】が決定いたしました！

ありがとうございます！

詳細報はまだ伏せなきゃなのですが、報公開の許可が降り次第、『反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士』に関しての報をお伝えしていくつもりです！

今後とも、

『反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士』

をよろしくお願い致します！

以上、ご報告となりました！

※追記:レビューしてくださったmarlow様、

ありがとうございました。