《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》もふもふが仲間になりました
水竜の水魔法に驚いていると、突然猛烈な眠気が襲ってきた。
どうやらさっきの水魔法で、魔力を使い果たしてしまったようだ。
あっという間に意識が朦朧としていき――。
僕はパタンと倒れ込むと、そのまま眠り込んでしまった。
どのぐらい意識を失っていたのだろう。
を優しく溫めているような不思議な覚がして、目を覚ます。
「んんっ!?」
瞼を開けた瞬間、視界に飛び込んできたのは白くてもふもふとした塊だった。
『わんっ!』
子犬!?
のわりに大きな両足を僕の頬に押し付けて、顔中をペロペロと舐めてくる。
「……はは、あはは! 待って待って! くすぐったいから、やめてよ……!」
笑いながら子犬を両手で摑み、顔の上から降ろす。
……って、あれ?
が痛くない……?
崖を落下するときに負った切り傷がずっとヒリヒリしていたのに、その痛みが消えている。
を確認すると、傷が跡形もなくなっていた。
なんでだろう?
不思議に思いながら起き上がろうとしたとき、手のひらにズキンとした痛みが走った。
そうそう、こういう傷が中にあったはずなんだけどな。
『わふっ!』
「ん?」
子犬が何かを確認するように、僕の手のひらを覗き込んでくる。
すぐに子犬のがをまといはじめた。
子犬のから放たれたキラキラしたが、僕の手のひらの上に落ちてくる。
すると、手のひらの傷がすうっと消えてしまった。
これ、回復魔法だ。
「……もしかして君が僕の傷をみんな治してくれたの?」
子犬は僕を見つめたまま、ぱたぱたと尾を振った。
「そっか。ありがとう」
お禮を言って頭をなでると、尾を振る速度が増した。
かわいいな。
でも、なんで僕を助けてくれたんだろう?
そもそもどうしてこんなところに子犬がいるんだ?
「君、迷子? 僕と一緒にくる?」
そう尋ねると、子犬は未練があるとでもいいたげな態度で後ろを振り返り、悲しげな聲で鳴いた。
「あ……」
子犬が振り返った先には、先ほど水竜に倒されてしまったフェンリルの亡骸が橫たわっている。
青みがかった白い並みと、長細いマズル、大きな耳。
死んだフェンリルと子犬は細かい部分が似通っている。
サイズが全然違うからすぐには気づけなかったが、親子なのかもしれない。
「あのフェンリル、君のお母さん……?」
まるで言葉が通じているかのように、子犬もとい子フェンリルがこくりと頷く。
子フェンリルは親フェンリルの傍まで行くと、先ほど僕にしてくれたように回復魔法を発させた。
親フェンリルの上にきれいなが降り注いでいく。
それでも親フェンリルの目が開くことはなかった。
「回復魔法では生き返らせることはできないんだよ……」
『くーん……』
悲しげな鳴き聲をらし、離れがたいというように親フェンリルに鼻先をりつける。
その姿を見ていたら、僕もが痛くなった。
鉱石だらけの窟の中では埋葬することも敵わない。
このまま朽ち果てるに任せるしかないのかな……。
子フェンリルの傍らに跪き、そっと親フェンリルの鼻先をでる。
【………………どうか…………お願い………………】
どこからかそんな聲が聞こえてきて、僕は驚きながら周囲を見回した。
【私のを取り込み……私の子供を代わりに守ってください………………】
「……!」
これ、親フェンリルの霊が僕に呼び掛けたってこと……?
たしかに僕が加護を使って取り込めば、親フェンリルは僕の一部となるわけだから、ある意味親子は僕の存在を介してずっと傍にいられるとも考えられる。
僕自は親フェンリルのを取り込むことに対して、そんなに抵抗はないけれど、子フェンリルは果たしてどう思うだろう。
「……信じられないかもしれないけれど」
そう前置きをしてから、僕は親フェンリルの聲が聞こえてきたことを子フェンリルに話してみた。
「君はどうしてほしい?」
子フェンリルは僕をじっと見つめた後、深々と頭を下げてきた。
會話が出來なくても、この子が言いたいことは伝わる。
親フェンリルのむとおり、そのを取り込んでくれという意思表示をしているのだ。
「うん、わかった。それじゃあ――」
親フェンリルに向かって両手を翳し、靜かに目を閉じる。
加護を発させるのはこれで三度目。
水竜のときとは違い、今度は余計なことを一切考えず、ただ親フェンリルの存在に意識を集中させた。
ゆっくりと掌が溫かくなっていく。
瞼を開くのと同時に、僕の両手からあの白いが放たれた。
これまでと違い、攻撃的なきではなく、そっと包み込むように、白いが親フェンリルのをぐるぐると覆っていく。
吸収が終わると、の奧に新たな力の芽生えをじた。
『……ありがとうございます。あなたの中にたしかに母の魂をじる。母も喜んでいることでしょう』
ん?
新たな可らしい聲が聞こえてきた。
驚いて振り返ると、子フェンリルが俺に向かってパタパタと尾を振っている。
寶石のようにきれいな瞳に浮かんだ涙のことは見ないふりをする。
「今しゃべったのは君?」
『いかにも』
どうやら親フェンリルを取り込んだことで、フェンリル語の知識も得られたらしい。
にしてもこの子フェンリル、ころころした見た目とかわいい聲のわりに喋り方が渋い。
『あなたには謝してもしきれない。どうか我をあなたの部下にしていただきたい。一生をかけてお仕えする所存!』
「部下じゃなくて友達になろうよ」
『我らフェンリルは孤高の存在。友達などという弱な関係は築いたりせぬ。斷固として主従関係をお願い致す』
なんだかわからないけど、この子にはこだわりがあるらしい。
僕のほうは友達だと思っていればいいか。
「うん、わかったよ。それじゃあこれからよろしくね」
俺が手を差し出すと、子フェンリルは無邪気な仕草で自分の鼻をすり寄せてきた。
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