《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》加護鑑定再び
神長の案で、僕とフェンは神殿の最奧にある場所に通された。
水の張った地面の真ん中に道が一本通っていて、その中央部分に祭壇がある。
前回鑑定してもらいにきたときと部屋のスケールが違う。
どうやらここは神長しかれない場所のようだ。
祭壇の前まで辿り著くと、神長は杖を僕の頭上に掲げた。
「さてそなたの名前は?」
「ディオです」
「では、ディオ君。さっそくそなたの加護鑑定を行わせてもらおう」
神長が杖を振りながら呪文を詠唱すると、ぽうううっと音を立てて杖が神々しくった。
「……ほう、これは」
は虹になってひときわ激しく輝いた後、ゆっくりと消えた。
「ふっ、面白い」
神長は心した様子でそう呟くと、ぶるっと武者震いした。
「ディオ君。そなたに與えられた加護は『悪喰(あくじき)』。非常に珍しいSSSランクの加護じゃよ」
「えっ。SSSランクですか……!?」
すごい能力だとは思っていたけど、まさかSSSランクだったなんて。
「長年様々な人間の加護を鑑定をしてきたが、SSSランク保持者にあったのは儂の人生の中で初めての経験じゃ。Sランク加護の保持者ですら、數人しか知らんしな。そなたはこの世界の命運を左右する人間になるかもしれぬな」
驚いて言葉を失う。
フェンの方を見ると、さすが我が主といわんばかりの態度で鼻高々としている。
「あの、その悪喰っていう加護は的にどんな能力なのでしょうか?」
「うむ。加護辭典を見てみよう」
神長が杖を振ると、空中に分厚い辭典が現れた。
誰にもれられていないのに、パラパラと辭典のページがめくられていく。
「ふむ、あったぞ。『悪喰』――対象を吸収し、そのものの持つ能力、知識、経験を自らの力に変える加護のこと。際限なくどんなものでも吸収できることと、吸収の仕方が捕食行為を連想させることから、悪喰の名がつけられた。二百年前の大賢者以降、加護を手にした者は一度も現れていない」
「二百年に一度……」
「知れば知るほどすごい能力じゃな。この加護を使えば、どんな力でも自分のものにできるということじゃからな」
「それには僕も驚きました。自分の手から出たが魔を吸収したと思ったら、急に知識が増えて、その上、魔の取得していた魔法まで使えるようになったので」
「すでに加護を試してみたのか?」
「はい、実は――」
僕は奈落の谷の中で、魔を吸収しまくり、魔法を百種類以上取得したことを話した。
「魔法を百種類以上習得したじゃと……!?」
神長はよほど衝撃をけたのか、腰を抜かしかけている。
「いや、たしかにこの加護の原理ならそれも可能じゃが、しかし……。名の知れた冒険者でさえ、保持している魔法はせいぜい五つぐらいだというのに……」
「え? そうなんですか?」
自分にとってはあっさりできてしまったことだったので、いまいちすごさを実できなくて、きょとんとした顔で聞き返す。
「ディオ君、そなたはなんて計り知れぬ存在なのじゃ……」
神長から信じられないようなものを見るような視線を向けられて、反応に困ってしまう。
「あの、さっきの説明だと、吸収できるのは魔だけじゃないってことなんでしょうか?」
「そのようじゃな。たとえば能力を奪いたい人間がいるのならば、加護を使ってそいつを食べてしまえばいい」
「……うっ、さすがにそれはちょっと」
共食いみたいで気持ち悪いから、極力避けたい。
「ところで、どうしてこれまで加護が覚醒しなかったんでしょうか?」
「能力が極端に弱かったり強かったりすると、そういうことはままあるのじゃよ。そなたの場合は明らかに後者じゃな、ふぉっふぉっふぉ」
この事実を知ったら、父や兄はどう思うのだろう。
「――ところで」
加護の話がひと段落したところで、不意に神長が僕の隣にいるフェンに視線を向けた。
「先ほどから気になっておったが、またとんでもない魔を連れているな」
神長が目を細める。
フェンはハッと息を呑むと、警戒心を剝き出しにして、上を低くした。
「グルルルルル……」
「こらこら、フェン。唸ったりしたらだめだよ」
大丈夫だからというようにフェンの頭をでて落ち著かせる。
「その魔はフェンリルの子供じゃな?」
「はい」
「まだ子供とはいえ、SSSランクの加護持ちが、SSランクの魔を引き連れているとは……。まったくそなたは次から次へと儂を驚かせてくれるわ」
驚かせようと思って行してるわけではない僕は、なんと返したらいいのかわからず、曖昧な笑みを浮かべた。
「ところで魔を連れて歩きたいのならば、冒険者ギルドへ魔使いとして登録をしたほうがよいぞ。登録ができていなければ、魔を連れて國境を越えることも葉わんのでな」
「そうなんですか。じゃあ、すぐにでも登録にいったほうがよさそうですね」
しかし、家を継ぎ、當主になっている場合を除き、未年がギルドに職業登録を行うには、後見人の承諾が必要だったはずだ。
「どうしようかな……。僕は家を追放されてるからな……」
獨り言のように呟くと、神長は訝しげな表を浮かべた。
「追放? なぜじゃ?」
鑑定で加護なしとわかったあと、父が僕に対してどういう反応を見せたか。
そのときのことを話すと、神長は眉間に皺を寄せて重い溜息を吐いた。
「……なんて話じゃ」
神長は呆れたようにそう呟いた。
「そなたのように特別な人間を無能扱いするとは……。そもそも、そんな理由で我が子を追い出し、路頭に迷わせる親があるものか……! 儂でよければ、そなたの後見人としてギルドへ推薦狀を用意してやるがいかがする?」
神長の申し出は素直にうれしかった。
ただ、この國は未年者に対する制約が他にもいろいろある。
そのたびに神長を頼るわけにはいかない。
「ありがたいお話ですが、そこまでしてもらうわけにはいきません。一度、実家に帰って父と話してみます」
「ふむ、そうか。何か困ったことがあったら、儂を頼ってきなされ」
神長の心遣いに対してお禮を伝えた僕は、フェンとともに追い出された実家に舞い戻ることにしたのだった。
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