《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》父の日記

キャスパリーグから話を聞き終えた僕は、ウォーレンさんのもとへと向かった。

ルカ試験とフェンは心配そうに様子を伺っている。

膝を抱えて座り込んでいたウォーレンさんは僕の気配をじたらしく、弱弱しく顔を上げた。

「ディオさん……。……どうして……こんなことに……」

涙まみれの顔で、ウォーレンさんが呟く。

僕はキャスパリーグから聞いた話をウォーレンさんに伝えた。

話が進むほど、ウォーレンさんの瞳から零れ落ちる涙の量は増していった。

「……父さんの日記が……」

「いきなり今の話を信じるのは難しいと思います。日記を探してみましょうか?」

ウォーレンさんが無言のまま頷く。

「僕が取ってきたほうがいいですか?」

「……いえ。……僕も一緒にいきます……」

よろよろと立ち上がったウォーレンさんを支え、彼に歩調を合わせながら、ゆっくりと小屋の中へ向かう。

ウォーレンさんはベッドの前で足を止め、茫然とした様子で立ち盡くした。

「……こんなことってありますか……。これでは……父さんだってわかりません……」

口元に痛ましい笑いを浮かべたあと、ウォーレンさんが悔しそうにを噛みしめる。

ルカ試験は、ウォーレンさんの気持ちを慮って、白骨化したの上にそっとシーツをかけた。

それによって初めて、ウォーレンさんはベッドの前からくことができた。

日記は、アトリエとして使われていた奧の部屋の機の上にあるんだったよね……。

「ウォーレンさん、奧の部屋へ向かえますか?」

「……はい、大丈夫です……」

きっとちっとも大丈夫なんかじゃないのに、ウォーレンさんは無理して笑ってみせた。

やっぱりウォーレンさんには外で待っていてもらったほうがよかったのではないだろうか?

正しい答えがわからないまま、ウォーレンさんとともに部屋の奧へ向かう。

締められていた扉を開けると――。

アトリエの中は、命が盡きる間際まで書き続けられた息子への絵で溢れ返っていた。

「父さん……。ううっ……」

った瞬間、ウォーレンさんは泣きくずれてしまった。

◇◇◇

「しばらく一人にしてあげましょう」

「そうですね……」

ルカ試験に返事をする。

ウォーレンさんは今、小屋の外の木立の下に座って、トーマスさんの殘した日記を読んでいる。

キャスパリーグはウォーレンさんが日記を広げるのを傍で見守った後、僕の隣に來て伏せをした。

僕らはそのまま彼のことを遠くから見守り続けた。

――そして、三十分ほど経った頃。

し落ち著いたのか、ウォーレンさんはゆっくり立ち上がると、僕らの元までやってきた。

とても大切そうに、日記を抱えこんでいる。

「みなさん、ご心配をおかけしてしまってすみませんでした……。何があったのか、ちゃんと理解して、け止めることができました……」

「ウォーレンさん……」

「……本當は僕……変だと思っていたんです……。たしかに父は寡黙でしたが、不自然なぐらい言葉數がなかったから……。心の病にかかっているのではないかと疑いを抱いていたんです……。でも、強引に扉を開けて親子の縁を切られるのが怖くて、確かめられなかった……」

日記を抱きしめている指先に、ぎゅっと力が込められる。

ウォーレンさんは続けた。

「日記の中は、僕を心配する父の言葉で溢れていました……。……病の父にそこまで心配をかけていた自分が本當にけないです……。……僕はもっと強くならなければいけないと心から思いました。空の上から見守ってくれている父のためにも……」

空を見上げたウォーレンさんの頬を涙がつうっと流れていく。

「みなさん、ご迷とご心配をおかけして申し訳ありませんでした」

「無理をしているのではないですか……?」

ルカ試験が眉を寄せて問いかける。

ウォーレンさんは、苦笑しながら、頬をかいた。

「はい、し……。いきなりこの気弱な格を直せるわけでもないようです……。だけど、それでも僕は大丈夫です。父の殘してくれた絵と、この日記帳があるから」

そう言うウォーレンさんの瞳には、それまでとは違う強い意志が宿っていた。

「ディオさん、本當にありがとうございました。父は三年前には亡くなっていたのに、今まで同行してくださった賢者様たちは誰一人気づきませんでした。今回もあなたでない人に依頼を出していたら、同じことになっていたと思います。あなたがたのおかげで、僕は父を連れて帰り、安らかな眠りにつかせてあげることができます」

そう言うと、ウォーレンさんは僕に向かって深々と頭を下げてきた。

「ウォーレンさん、僕ではなくフェンが気づいたんです。それで僕に教えてくれたんです」

涙で腫れた目を見開き、ウォーレンさんが僕とフェンを互に見る。

「……あなたからキャスパリーグと會話をしたと聞いた時は、正直困しました……。でも、日記を読んだ今は、すべて本當だったとわかっています……。あなたはフェン君とも話せるんですね……。それではどうか、キャスパリーグとフェン君にも心からのお禮を伝えてください」

キャスパリーグのほうを振り返ると、彼は目を瞑ったまま、一度だけ尾をかした。

『お禮なんていらないにゃ。……暇だったから気まぐれを起こしただけだもの……』

それが彼の強がりなのはわかっているので、僕はそっと彼の頭をでた。

フェンのほうはお禮を伝えられたのが照れくさかったのか、僕の後ろにさっと隠れてしまった。

そんな二匹の態度を見て、ウォーレンさんの表しだけらかくなる。

「どちらの魔もすっかりあなたに懐いていますね。SSランクの魔と意思疎通が図れるなんて……。本當にすごい方だ……。今ならギルドマスターの言っていた言葉の意味も納得です。間違いなくあなたは、これから先、伝説の冒険者として名を馳せていくことになるでしょう。だってこんなすごい魔使いも賢者も、どこを探したっていませんよ……!」

「いやいや……。それに僕はまだ冒険者を目指す者であって、魔使いでも賢者でもないですし」

「それは違いますよ」

それまで靜かにやり取りを見守っていたルカ試験が、きっぱりとした口調で否定してきた。

「目指すものではなく、あなたは立派な魔使いであり、賢者です」

え!?

「あの、それはつまり……?」

「キャスパリーグが現れた瞬間から、今回の依頼はSSランクに格上げになっていました。それをあなたは魔使いの能力と、賢者の知識を用いて難なく解決させてしまった」

ルカ試験はぎこちなく表かすと、以前に見せてくれた笑顔をもう一度僕に向けてくれた。

「本來のAランクの任務では、無事に街まで帰りついて合格となるはずでしたが、たとえあなたが帰り道にすべての魔討伐を私に押し付けようと、私はこの言葉を取り消しません。――おめでとうございます。ディオさん。魔使いと、賢者、二職の試験はどちらも合格です」

『おおおおお、主、やったではないか!!!』

「よかった!! ディオさん、本當におめでとうございます!! あなたの特別な日に立ち敢えて僕も幸せです」

ちらっと片目をあけたキャスパリーグが、『何事にゃ……』と呟いている。

僕は試験に合格できた喜びをじながら、一人一人にお禮を伝えていった。

もちろん、ルカ試験には魔を押し付けたりしませんよと言うのも忘れなかった。

「さあ、皆さん、トーマスさんとともに町まで戻りましょう」

ウォーレンさんを筆頭に、みんなが頷き返してくれる。

まだ瞼は腫れたままだが、ウォーレンさんはどこか憑きが落ちたような印象を與えた。

彼が本當の意味で父親の死を乗り越えるのには、まだまだ時間がかかるだろう。

でもきっとウォーレンさんなら大丈夫だ。

トーマスさんが、彼に、心の強さを殘していってくれたから――。

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