《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》ギルド本部に呼び出された
ホランドさんがギルド本部のある街に戻って數日。
やはりホランドさんが予想していたとおり、ギルド本部から僕に対して呼び出し命令が出た。
「本部だからといって構えることはない。いつもどおり君らしくしていれば何があったって大丈夫だ」
ホランドさん経由でったギルド本部からの呼び出し狀を差し出しながら、ギルドマスターが勵ましてくれる。
呼び出し狀には、メデューサ討伐の件も含め、面談をしたいというようなことが書かれていた。
できるだけすぐ出発するようにという話だったので、その日のうちには旅立つことにした。
僕が支度する様子を手伝ってくれたアリシアは、いつもに比べて明らかに元気がない。
「もう旅に出ちゃうんだ……」
「毎回バタバタしてごめん」
「ううん! 私のほうこそ、しんみりしちゃってよくないよね……! 一箇所にとどまってる暇もないってことは、冒険者にとってはすごくいいことだもんね。置いていかれちゃうのは寂しいけれど、私もちゃんと笑顔で送り出さなきゃ! 帰ってきたらまた、々と話を聞かせてね!」
以前アリシアは、薬の素材となる魔を自分で取りに行って、解してるほうが好きだと言っていた。
今はお姉さんの代わりに店を守っているけれど、もしかしたら本當はアリシアも冒険がしたいのかもしれない。
「それじゃあ行ってくるね。ギルド本部がある町はここより大きいみたいだし、なにか珍しいものがあったらお土産に買ってくるよ」
「ふふ、楽しみにしてる! 怪我だけはしないように気をつけて。フェンとキャスパリーグ、ディオのことお願いね」
フェンとキャスパリーグが尾を振り回してアリシアに応える。
◇◇◇
そんなこんなでギルドマスターやアリシアたちに見送られながら、僕はギルド本部のある街ラロールへ向けて出発したのだった。
最初は飛翔魔法を使って移することも考えたのだけれど、キャスパリーグを従えて飛んで移するのは目立ちすぎると思い、徒歩での旅に変更した。
「フェン、キャスパリーグ、三人で旅するの初めてだね。ケンカしないようにね」
『主、私は心配いらないからそっちの小生意気な貓に言ってくれ』
『コロッコロの子犬が何を言っているにゃ』
やれやれ……。
フェンとキャスパリーグの口喧嘩や甘噛み対決は道中何度か繰り広げられたが、それ以外特に大きな問題が起こることもなく――。
宿屋に泊まりながら、旅は順調に進み、五日後の夕暮れ時には、水上迷宮都市ラロールの検問所へ辿り著けた。
冒険者ライセンスを差し出し、検問を終えてから市街地へとる。
そこには、港灣都市ギャレットとはまた違った雰囲気の大きな街が広がっていた。
街の中には大小さまざまな川が流れていて、人々を乗せたゴンドラが行きかっている。
「実のゴンドラなんて初めて見たなあ。フェン、キャスパリーグ、一度乗ってみたいね」
興する僕とは正反対に、二匹の尾は垂れ下がっている。
どうやら二匹とも、水があまり得意ではないようだ。
まずは街の中心部を目指して、細い川に沿った道を歩いていく。
集して立する建の壁はどれも白く、そのため町全に不思議な統一があった。
たくさんの川を中心に形された街だからか、道はどこもり組み、階段や橋がいたるところにかけられていた。
そんな特殊な街並みの中、何よりも目立っているのが、中心部に立つ巨大な塔だ。
あれは一何の施設なんだろう?
興味を抱きつつ、冒険者ギルドを目指す。
僕らは何度も迷子になり、そのたびに通りすがりの人に道を尋ねて、ようやく本部の前まで辿り著けた。
「まるで迷路みたいだったね……。同じ道を何回通ったかわかんないよ」
『主、今日は辿りつけないかと覚悟してたよ』
キャスパリーグは疲れ果てている。
「どうやらこの街の洗禮をけたようだな」
聞きなれた親し気な聲を聞いてそちらに目を向けると、懐かしい顔がそこには合った。
「ホランドさん!」
「十日振りだな、ディオ君。わざわざ呼び出してしまって申し訳ない。ギルドマスターを含めた幹部が、どうしても君に會いたいと言ってきかなくてな」
僕の到著を待っていてくれたらしいホランドさんに案され、ギルド本部の中へる。
吹き抜けの広々としたエントランスは、全面窓になっていて、高い天井から明るいが差し込んでいた。
カウンターの広さも、ギャレットの三倍近くありそうだ。
その全てが埋まっているだけでなく、待合室も冒険者たちでごった返している。
ギャレットのギルドも田舎育ちの僕にとってはかなり賑わっているようにじられたが、さすがに本部は規模が違う。
エントランスをってすぐのところに、丸くて小さなカウンターがあり、通常はまずそこで付票をもらわなければならないらしい。
「ディオ君はそのままこっちに」
ホランドさんに手招きされて、職員たちがいるカウンターの側へ回る。
「みんな、この年がギャレットギルドから出た例のルーキーだ」
何十人もいる職員たちに向かっていきなり紹介され、ぎょっとしてホランドさんを見上げる。
「君のメデューサ退治の件は、本部でも相當な噂になっているんだ。みんなディオ君を一目見るのを楽しみにしていたんだよ」
ええ……。
ホランドさんの言葉を証明するかのように、僕は興味津々という様子の職員たちによって、あっという間に取り囲まれてしまった。
「こんな若い子が、あの偉業をし遂げたのか!」
「君、悪喰の加護を使えるって本當なのかい!?」
「あのSSSランクのメデューサも君が倒したんだろう?」
おしかけられている僕を見て、ホランドさんはなぜか得意げな表をしている。
「君は悪喰の使い手なんだろう!? 魔をどれくらい吸い込んだんだ!?」
「えっと……五〇〇ぐらいかと……」
「ご、五〇〇だってえ!?」
尋ねてきた職員の男が、目を丸くして驚きの聲を上げる。
「魔使いとしてもとんでもない才能を見せたんでしょう!? フェンリルを仲間にしてしまうなんて……! ん? ところでその変な貓はなあに?」
「ほんとだ、フェンリルは有名だけど、あんな巨大な化け貓は見たことがないな……」
『変な化け貓って、もしかして私のことかにゃ! 失禮な人間どもを懲らしめてやってもいいかにゃ!?』
「だめだめ! 落ち著いて!」
フェンがここぞとばかりにニヤつく。
かたやキャスパリーグは今にも飛びかからんばかりの勢いで、姿勢を低くしている。
フェンリルに比べてキャスパリーグの知名度が低いという事実が、キャスパリーグの機嫌を思いっきり損ねてしまったようだ。
僕は必死にキャスパリーグの頭をでて、落ち著かせようと試みた。
その間にも職員たちから次々質問を投げかけられ、慌てふためく。
「ホランドさん、見てないで助けてください……!」
「ははっ、君は相変わらずこういう狀況が苦手なようだ。――みんなちょっと落ち著け」
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