《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》レイラの手紙
「解読しながら読み上げてみるわ」
アリシアを取り囲むように集まった僕らは、息を押し殺して、彼が読み上げる容に意識を集中させた。
『アリシアへ
萬が一、私に何かあったときのために、この手紙を殘しておきます。
そのときにあなたがこの手紙を見つけ出してくれるといいのだけれど……。
私は自分が行っている研究について、一月ほど前から疑いを抱くようになったの。
より良いことのための研究だと信じてきたのに……。
今はもう心の底からそう思うことができないわ。
私たちの研究によって、魔と人間の関係に大きな変化が訪れることや、人々がより安全に冒険できる未來がくることを願ってきたのに……。
まだ確固たる証拠を得られていないけれど、かに調査を続けているの。
それを邪魔しようとしている人がいるような気がするのよ……。
偶然かもしれない。けれど、の危険をじるようなことが何度かあったわ。
それに誰かが私の研究ノートを狙っているようなの。
同僚であり、友人でもある人を疑いたくはないわ。
でも……、もし私に何かあったら、ジェイラスという男のことを調べてみてほしい。
研究所の仲間たちは気づいていないけれど、ジェイラスは最近様子がおかしいの。
私のの回りで奇妙なことが起こるようになったときと、ジェイラスに変化が訪れた時期は殘念ながら一致しているわ。
ジェイラスが私たちの研究を利用して悪事を働こうとしているのなら、何があっても止めなければいけない。
その時はどうか、この手紙を持ってギルドへ駆けこんでちょうだい。
冒険者に依頼を出して、ジェイラスの辺を調査してもらうのよ。
私の心配が現実のものになってしまったら、多くの魔が人間のエゴのせいで傷つけられることになるわ。
アリシア。
あなたがいつか冒険者に戻りたいと思ってることは知っていたわ。
だから、私は研究者として、あなたのような冒険者の助けになりたいって考えたの。
でも、ごめんなさい。
判斷を過ってしまったみたい……。
自分のに迫っている危険より、アリシアを一人にしてしまうかもしれないことが怖くて仕方ない。
たとえ私のに何があっても、あなたのことをしています。
レイラより』
震える聲で手紙を読み上げたアリシアは、最後の言葉を読み終えるとその場に頽れてしまった。
「アリシア……!」
ほうっておけなくて、アリシアの隣に膝を付く。
アリシアは縋るものを探すように僕の手を摑むと、涙目で訴えかけてきた。
「姉さんは自分のに危険が迫っていることをじていたんだわ……! ……ただの事故や自らの意思で姿を消したんじゃない。姉さんはきっともう……っ……!」
「そんなふうに考えたらだめだ……」
「私だって無事でいてくれるって信じたいよ! だけど……!!」
ホランドさんが僕の肩を摑み、小聲で伝えてくる。
「……ディオ君、殘念ながらレイラさんが危険な目に遭ったのはほぼ間違いない。拠のない勵ましは、卻って逆効果になるんじゃないか……」
僕は意気消沈しているホランドさんとアリシアに向かい、きっぱりとした口調で伝えた。
「結果を決めつけ、希を失ってはいけないと思うんです。レイラさんを見つけ出せるのは僕たちしかいません。その僕らが諦めてしまったら……。たとえわずかでも可能が殘っているうちは、希を信じて探し続けるべきです」
「……ディオ……」
アリシアは僕の言葉を聞き、ゆっくりと顔を上げた。
「ディオの言うとおりね……。もしかしたら姉さんがどこかで助けを待っているかもしれない。私が絶してしまったら、姉さんはすべてに見捨てられてしまうことになるわ……」
「……そうだな、ディオ君の言う通りかもしれない。つまらない事を言ってしまったね、すまない」
「私も……冷靜な判斷が全然できなくてけないわ……。ディオ、ありがとう。あなたのおかげで目が覚めた……」
僕は頭を振って、勵ますようにアリシアの肩をぽんぽんと叩いた。
「とにかく、今はジェイラスさんを探し出そう。ジェイラスさんの部屋を捜索すれば、今回と同じように何らかの手掛かりを見つけられるかもしれない」
アリシアとホランドさんは僕の言葉に頷き、を起こした。
◇◇◇
レイラさんの下宿を出た直後――。
その気配は、薄暗い路地裏のほうから漂ってきた。
骨に向けられた殺気だ。
「……ホランドさん」
「ああ、わかりやすいな」
ホランドさんが片眉をあげて、苦笑いを浮かべる。
僕とホランドさんは、二人同時に建の脇にある路地の奧を見つめた。
僕の両隣にいるフェンとキャスパリーグも低い唸り聲をあげている。
『悪い奴の気配がするよお……』
スライムが僕の頭の上で呟く。
「アリシア、僕の後ろに下がって」
僕がアリシアを庇うように右手を広げたとき、路地裏から殺気の主たちがぞろぞろと姿を現した。
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