《【書籍化】悪喰の最強賢者 ~兄のせいで『加護なしの無能は出て行け!』と実家を追放されたけど、最強の力が覚醒したので無雙します。危険度SSランクの魔なら、僕が食べ盡くしましたよ?~》疑
勝敗が決まったところで、ホランドさんは暗殺者たちのリーダーであるロンのもとへ向かうと、その倉を摑んで引き起こした。
「答えろ。誰の差し金だ」
「それは教えられねえなあ」
ロンの男はせせら笑いながらそう言って、顔を背けた。
まだ痺れた狀態で、を震わせているというのに、ホランドさんに対する男の態度はかなりふてぶてしい。
仕方ない。
もうちょっと脅そうか。
「……痛い目に合わせるのは好きではないんだけど。だんまりを決め込むって言うならやむを得ないな」
ホランドさんの隣に並んでから、僕はわざともったいぶった態度で、攻撃魔法の構えをとった。
すると――。
「ひっ! や、ややめてくれっ!!!」
途端に顔を変えたロンの男は、ガタガタと震えながら土下座してきた。
仲間の暗殺者たちも、慌てて彼に倣う。
「かかか勘弁してくれッ……!! あんな攻撃だけは、もう二度とくらいたくない……!!」
「だったら誰に依頼をけて僕らを襲ったか答えるんだ」
「こ、答えられねえんだよ……!! そういう契約をかわしてるから……!! その証拠にほら……!!」
男が服をまくり上げ、自分の手首に刻まれた紋様を見せてきた。
「ホランドさん、これって……?」
「魔法契約の証だな。魔法契約で縛られた依頼は、口外することができないんだ。しかも契約は、雙方合意の上で解除の儀を行わない限り、死ぬまで続く」
「となると、答えられないというのは事実ってわけですね」
「ああ。こいつらをこれ以上痛めつけたところで、徒労に終わるだけだな。どうする? ディオ君」
「うーん、でもまあ、この人たちから聞き出せなくても、暗殺を企んだ相手はある程度予想がつきますね」
「……侯爵か」
「あの人とはもう一度會った方がよさそうです」
「ジェイラスと侯爵、二手に別れるか。俺が侯爵に會いに行って探りをれてくる。ディオ君の方はジェイラスを頼む」
「わかりました。ひとまず、僕とアリシアでジェイラスさんの部屋を調べにいきます」
「また、あの宿屋で待ち合わせよう」
僕はキャスパリーグに目を向ける。
「キャスパリーグ。君はホランドさんと一緒に行してくれ」
さすがに、五対一で行するのはバランスが悪すぎる。
ホランドさんの実力は確かなものだし、もちろん信頼しているが、一人で行するのは何かと不便だろう。
『……わかったにゃ。ご主人の頼みならしょうがないにゃ』
キャスパリーグはあまり元気のないじで小さく頷いた。
「どうかした?」
「にゃ!?なんでもないにゃ』
キャスパリーグはチラッとホランドさんを見ると、値踏みするような表で目を細めた。
『たしかにおっさん一人だけにするのも心配にゃね。こっちは任せるにゃよ。このおっさんは私がちゃんと子守りしておくにゃ』
「何を言ってるかわからんが、なんだか失禮なことを言われてる気がするな……」
「ハハハ……。急いで連絡を取らなければいけないような事態になったら、キャスパリーグを向かわせてください。ホランドさんとキャスパリーグでは會話はできませんが、こちらの言ってることはしっかり理解してくれるので、伝言を伝えることは可能です」
「わかった。お互い無理はしないように気をつけて行しよう。また別のチンピラ達がくるかもしれないからね。じゃあ宿屋で會おう!」
◇◇◇
――ホランドさんと別れた後、僕らは研究員に教えてもらった住所を頼りに、ジェイラスさんの部屋へやってきた。
彼の部屋はレイラさんのものとは真逆で、がなく、ものすごく質素だった。
室には何箇所も、雨れ対策のバケツが置かれている。
以前研究員がこの仕事に攜わるものは貧乏人が多いと言っていたけれど、ジェイラスさんも相當貧しかったようだ。
「手がかりが見つかるかもしれないから、さっそく探してみよう」
「ええ。この部屋なら姉の時とは違ってすぐに終わりそうだしね」
「まず、一番可能のありそうなここから――」
僕が書き機の引き出しを開けると――。
「さすがじゃない、ディオ! 手紙だわ!!」
まさかいきなり當たりを引き當てるとは。
「それにしてもすごい量の手紙だね。……差出人は……全部弟さんからのものだ」
「見て、この住所!」
アリシアに促され、住所の最後に書かれた文字を見た僕は、弟さんと連絡が取れなかった理由を理解した。
そこにはとウエズスタンという町にある市立病院の名が記されていたのだ。
「研究所で調べた実家の番號にいくら連絡しても、誰も出ないわけだ」
「弟さん、どこか悪いのかしら……」
次の段を調べてみると、今度は院費の請求書や催促狀が山ほど出てきた。
他の場所も見て回ったが、それ以上の報は得られなかった。
あとは弟さんを訪ねるしかなさそうだ。
今からなら病院へ向かっても、今日中には戻ってこられるだろう。
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