《じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出の魔導士、通訳兼相棒の新米回復士と一緒ずてツートな無詠唱魔で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】》シャベネア(無詠唱)

目の前の景に驚愕したのは、ヴァロンも同じだったらしい。

「な――!?」

突然現れた防障壁は一誰のものなのか――。

ヴァロンが流石はSランク冒険者の勘で辺りに素早く視線を走らせた、その時だった。

「おい、そごのとうもろこしのカス(きみがら)頭」

低く、ドスの利いた聲――その聲が一どこから発せられたものか、一瞬レジーナは測りかねた。

その聲に気圧されたように、拳から鮮を滴らせながら、ヴァロンはよたよたと後ずさった。

(おなご)さ手ば上げるよんたクズ(たぐらんけ)、アオモリだばどご探してもいねど。お前(な)、自分がなにやってらがわかっているのか(おべでらんだが)?」

「な、何を――!?」

言っていることはわからないが、とにかく馬鹿にされていることはわかったらしい。

ますます赤黒く変した顔でヴァロンが喚いた。

「んだよコラァ! 障壁なんていつ出した!? お前か! お前が――やったのか!!」

「だったら何だ(んだてばなんどする)」

「ふざけやがってェ! いっ、一何の手品だァ――!?」

今度はオーリンに矛先を向けたヴァロンが思い切り拳を振りかぶった。

うわ! とレジーナが悲鳴を上げる直前、再び雷鳴のような聲が響き渡った。

「【連唱防(ヘズネ)】」

その瞬間、オーリンの目の前に再びり輝く防障壁が現れ、ヴァロンの拳を真正面からけ止めた。

ゴリ……! ともよだつ音がヴァロンの拳から発し、うぎゃあっとヴァロンが耳障りな悲鳴を上げた。

「な――なんだお前は!? いっ、いつ詠唱した!? この防障壁はどっから出してるんだよ!?」

砕けた右手をかばいながら、相変えてヴァロンが喚く。

それを見ながら、レジーナはぽかんとオーリンの背中を見ていた。

この人は今何をしたの、何を――!?

通常、ある魔法を発するにはある程度の長い詠唱が必要で、即時展開は不可能だ。

それ故、その詠唱をする時間を稼ぐのがパーティの他のメンバー――戦士や剣士の役割である。

だからこそ、魔導士は戦闘中でも攻撃の屆かない後方に控えているのが一般的なのである。

だが、今の障壁は間違いなくオーリンの出したもの――。

それは間違いないのに、オーリンは詠唱をした形跡がない。

なにか一言――わけのわからない言葉を呟いているだけだ。

「ふざけやがってふざけやがってふざけやがってェ! 俺をキレさせたらどういうことになるか教えてやらァッ!」

もはや冒険者でもなんでもない、ヤクザそのものの聲を張り上げて、ヴァロンは腰に帯びた剣を抜き放つ。

途端に、その剣がぼうっと発したかと思うと、凄まじい高熱を発して燃え始めた。

王都で魔法剣を抜くなんて――! レジーナは正気を疑う聲でヴァロンに向かってんだ。

「ちょ、ちょっとヴァロン! 何考えてるのよ! ギルドメンバー同士の喧嘩は法度で――!」

「やかましいぞ腐れ! 殺す! お前は絶対にブチ殺す、覚悟しろよ田舎者がァ――!」

「うるさい(しゃすね)な――【鎮火(ウルガス)】」

オーリンが呟いた瞬間、ドバッという音とともに、ヴァロンが構えた魔法剣から水が滴り、じゅう、という音を立てて火が鎮火した。

今度こそぎょっと目を見開いたヴァロンは口をあんぐりと開け、オーリンの顔と剣の両方に視線を往復させた。

「な――!?」

「どうした(どすたば)Sランク。俺を(おらごだ)斬る(きたぐる)んでねぇのか」

「あ――う――!」

狼狽したヴァロンは、終始何が起こっているのかわかりかねているようだった。

さっきまでの威勢はどこへやら、まるで怪に出くわしたかのようにをなくした顔でき聲を上げるだけだ。

「こ、このー―! 俺をコケにすんのも大概に――!」

「【強奪(グレリ)】」

その瞬間だった。まるでフィルムのコマ落としのように、ヴァロンの手から魔法剣が消えた。

あっ、と聲を上げたレジーナと違い、ヴァロンは一瞬、そのことに気がつかなかったらしい。

一歩踏み込もうとして手の中にあるべき重さが消えていることに気づいたヴァロンが、聲なき悲鳴を上げた。

「ほほう(わい)、悪ぐねぇな。これなら(こいでば)良(い)ぐ斬れるだろう(ごだ)――」

オーリンは手の中に握られた魔法剣をしげしげと眺めて嘆した。

無論――その景を目の當たりにしたヴァロンは、あ! と短く悲鳴を上げ、細かく震え始めた。

それを見ながら――。

レジーナは今日の朝に聞いたマティルダの言葉を思い出していた。

『オーリンには悪いことをしてしまった。本當なら彼の能力を活かせる場がこのギルドにあればよかったのだけれど――』

あのマティルダの言葉は一、どういう意味だったのか。

あの言葉は、このイーストウィンドでは彼の力を持て余してしまうことになると、そういう意味ではなかったのか。

オーリンにそれだけの実力があるなら。

オーリンが魔法を出す際に一言呟いている、あれが詠唱だとするなら。

導き出される結論は、畢竟、ひとつしかない。

「無詠唱、魔法――?」

こごまで読んでもらって本當に迷ですた。

「おもしぇ」

「続きば気になる」

「まっとまっと読ましぇ」

そう思らさっていただげるんだば、下方の星ッコ(★★★★★)がら評価お願いするでばす。

まんつよろすぐお願いするす。

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